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糖原病

執筆者:Matt Demczko, MD, Mitochondrial Medicine, Children's Hospital of Philadelphia
レビュー/改訂 2024年 3月
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糖原病は糖代謝異常症であり、グリコーゲンの代謝に関与する酵素が欠如しているために、しばしば成長障害、筋力低下、肝臓の腫れ、低血糖、錯乱などが起こる病気です。糖原病は、この種の病気を引き起こす遺伝子の異常が親からその子どもに受け継がれることで発生します。

本ページのリソース

  • 糖原病は、グルコース(ブドウ糖)をグリコーゲンに合成したり、グリコーゲンをグルコースに分解したりするのに必要な酵素がないために起こります。

  • 典型的な症状としては、筋力低下、発汗、錯乱、腎結石、肝臓の腫れ、低血糖、発育不良などがあります。

  • 診断は、血液検査、生検(組織の一部を顕微鏡で調べる検査)、MRI検査によって行われます。

  • 治療は糖原病の病型によって異なりますが、通常は炭水化物の摂取の調節が行われます。

遺伝性疾患には様々な種類があります。多くの遺伝性代謝疾患では、患児の両親がともに異常な遺伝子のコピーを1つずつもっています。この病気は基本的に(潜性[劣性])遺伝子の異常なコピーが2つそろわなければ発生しないため、両親は通常、この病気をもっていません。(遺伝性代謝疾患の概要も参照のこと。)

グリコーゲン(炭水化物の一種)は、多くのグルコース分子が結合してできています。グルコースは心筋を含む体の筋肉や脳の主要なエネルギー源です。エネルギーとしてすぐに使われないグルコースは、肝臓、筋肉、腎臓の中にグリコーゲンの形で貯蔵され、体が必要とするときに放出されます。

糖原病の小児には次のような状態がみられます。

  • グルコースをグリコーゲンに変換するのに不可欠な酵素の1つが欠損

  • グリコーゲンをグルコースに分解(代謝)するのに不可欠な酵素の1つが欠損

およそ25,000人に1人の乳児に、いずれかの病型の糖原病がみられます。

糖原病(糖原蓄積症とも呼ばれます)には多くの病型があります。それぞれはローマ数字で表されます。

糖原病の症状

糖原病の中にはほとんど症状が出ないものもあれば、死に至るものもあります。疾患毎に症状、発症年齢、重症度がかなり異なります。

糖原病II、V、VII型の主症状は筋力の低下(ミオパチー)です。

一方、I、III、VI型の症状は、低血糖と腹部の突出(過剰または異常なグリコーゲンによって肝臓が腫大するため)です。低血糖によって筋力低下、発汗、錯乱、ときにけいれん発作や昏睡が起こることもあります。

糖原病の小児では、このほかに発育不良や頻発する感染症、口や腸の中のただれなどもみられます。

また、老廃物である尿酸が関節にたまって痛風が起きたり、腎臓にたまって腎結石が起きたりする傾向があります。I型糖原病では腎不全がよくみられます。

糖原病の診断

  • 血液検査、生検、MRI検査

糖原病の診断は、筋肉や肝臓の一部の組織の顕微鏡検査(生検)を行い、またMRI検査で組織にたまったグリコーゲンを見つけることで行います。DNAの分析を行って診断を確定します。糖原病II型(ポンペ病)は現在、米国の多くの州で新生児スクリーニング検査の対象に組み込まれています。

肝臓、皮膚、筋肉や血液などの他の検査は、糖原病の病型を決定するために行われます。

遺伝性の遺伝子疾患をもつ子どもが生まれるリスクが高いかどうかを判断するための遺伝子検査も利用できます。(遺伝性代謝疾患の診断も参照のこと。)

糖原病の治療

  • 炭水化物の豊富な食事

  • 食事を頻回に、またはほぼ連続的にとることで低血糖を予防する

  • 特定の合併症の治療

糖原病の病型によって治療法は異なります。

多くの場合、炭水化物に富んだ食事を毎日少量ずつ何回にも分けて摂取することで、血糖値が下がるのを防ぐことができます。

低血糖を起こす糖原病患者では、非加熱のコーンスターチを夜間も含め4~6時間毎にとって血糖値を維持します。

炭水化物の溶液を胃チューブで一晩中投与して、低血糖が夜間に起こるのを防ぐこともあります。

筋肉に影響を及ぼす糖原病のある人は、過度の運動を避ける必要があります。

心臓や肝臓の異常など、特定の合併症があれば、必要に応じて治療します。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. 全米希少疾患患者協議会(National Organization for Rare Disorders[NORD]):希少疾患の一覧や支援団体、臨床試験に関する資料などの希少疾患に関する情報が親および家族向けに提供されています。

  2. 遺伝性疾患・希少疾患情報センター(Genetic and Rare Diseases Information Center[GARD]):希少疾患および遺伝性疾患に関する情報が分かりやすく提供されています。

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