テイ-サックス病とサンドホフ病は、スフィンゴリピドーシスと呼ばれるライソゾーム病の一種です。ガングリオシドが脳の組織に蓄積することが原因で発生します。これらの病気の患者は、若年で死亡します。遺伝性疾患は、それらの病気を引き起こす遺伝子の異常が親からその子どもに受け継がれることで発生します。
テイ-サックス病とサンドホフ病は、ガングリオシドを分解するのに必要な酵素が欠損しているために起こります。
症状には、知的能力障害や失明などがあります。
診断は出生前スクリーニング検査によって下されることがあります。
治療法はなく、治癒することもありません。
遺伝性疾患には様々な種類があります。テイ-サックス病とサンドホフ病では、患児の両親がともに異常な遺伝子のコピーを1つずつもっています。この病気は基本的に(潜性[劣性])遺伝子の異常なコピーが2つそろわなければ発生しないため、両親は通常、この病気をもっていません。(遺伝性代謝疾患の概要も参照のこと。)
スフィンゴリピドーシスは、スフィンゴ脂質を分解(代謝)するのに必要な酵素がないときに発生します。スフィンゴ脂質は、細胞表面を保護し、細胞内で特定の機能を果たす化合物です。スフィンゴリピドーシスには、ほかにも数多くの病型があります。
テイ-サックス病とサンドホフ病では、ガングリオシドという脂肪の代謝産物が脳の組織に蓄積します。ガングリオシドが蓄積するのは、ガングリオシドを分解するのに必要なヘキソサミニダーゼAと呼ばれる酵素がうまく機能しないためです。
テイ-サックス病
この病気は東欧(アシュケナージ系)ユダヤ人の家系で最も多くみられます。
この病気の小児は、生後6カ月後には月齢相当の発達段階に到達できなくなり、徐々に知的能力障害が進行し(つまり、知的能力障害が生涯を通じて悪化し)、筋肉の張りがないように見えます。その後筋肉が硬く緊張し、それに続いて麻痺や認知症が起こり、失明します。患児は通常、5歳までに死亡します。
妊娠前に、親は自分がこの病気を引き起こす遺伝子のキャリアかどうかを調べることができます。キャリアとは、ある病気の原因となる異常遺伝子をもっているものの、その病気の症状が現れておらず、その病気を示す証拠が認められない人のことです。この遺伝子のキャリアは、この病気が子どもに遺伝するリスクがあるため、遺伝カウンセリングを受けるべきです。両親ともにキャリアである場合、その子どもの25%にこの病気が発生します。
妊娠中には、絨毛採取または羊水穿刺による出生前スクリーニング検査を行うことで、胎児のテイ-サックス病を特定することができます。
出生後には、血液検査を行って、欠損している酵素であるヘキソサミニダーゼAの濃度を測定したり、DNAを分析したりすることが可能です。
治療法はなく、治癒することもありません。
サンドホフ病
この病気はテイ-サックス病にとてもよく似ています。ただし、テイ-サックス病とは異なり、サンドホフ病は特定の民族とは関係ありません。
生後6カ月から知的障害が進行し、失明します。音が異常に大きく聞こえることもあります(聴覚過敏と呼ばれます)。肝臓の腫れや骨の異常もみられます。
サンドホフ病の診断はテイ-サックス病の診断と同じです。
治療法はなく、治癒することもありません。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
全米テイ-サックス病協会(National Tay-Sachs and Allied Diseases Association [NTSAD]):テイ-サックス病、サンドホフ病、または関連疾患を有する患者のための研究、予防、および支援グループに関する情報が提供されています。
ユダヤ遺伝子疾患コンソーシアム(Jewish Genetic Disease Consortium[JGDC]):特定の遺伝性疾患のキャリアスクリーニングを希望するユダヤ系の人々のための情報が提供されています。
全米希少疾患患者協議会(National Organization for Rare Disorders[NORD]):希少疾患の一覧や支援団体、臨床試験に関する資料などの希少疾患に関する情報が親および家族向けに提供されています。
遺伝性疾患・希少疾患情報センター(Genetic and Rare Diseases Information Center[GARD]):希少疾患および遺伝性疾患に関する情報が分かりやすく提供されています。