異染性白質ジストロフィーは、スフィンゴリピドーシスと呼ばれるライソゾーム病の一種です。この病気は、脳、脊髄、腎臓、脾臓に脂肪(脂質)が蓄積することで起こります。この病気は若年で死に至ります。異染性白質ジストロフィーは、この病気を引き起こす遺伝子の異常が親からその子どもに受け継がれることで発生します。
異染性白質ジストロフィーは、特定の脂質を分解するのに必要な酵素が欠損しているために起こります。
症状は、乳児型か若年型かによって異なりますが、麻痺、認知症、神経の異常などがみられることがあります。
診断は、出生前スクリーニング検査、神経伝導検査、および血液検査の結果に基づいて下されます。
この病気には治療法がなく、その候補が研究されている段階です。
遺伝性疾患には様々な種類があります。異染性白質ジストロフィーでは、患児の両親がともに異常な遺伝子のコピーを1つずつもっています。この病気は基本的に(潜性[劣性])遺伝子の異常なコピーが2つそろわなければ発生しないため、両親は通常、この病気をもっていません。(遺伝性代謝疾患の概要も参照のこと。)
スフィンゴリピドーシスは、スフィンゴ脂質を分解(代謝)するのに必要な酵素がないときに発生します。スフィンゴ脂質は、細胞表面を保護し、細胞内で特定の機能を果たす化合物です。スフィンゴリピドーシスには、異染性白質ジストロフィー以外にも数多くの病型があります。
異染性白質ジストロフィーでは、特定の脂質を分解するのに必要な、アリルスルファターゼAと呼ばれる酵素がうまく機能していません。その結果、このような脂質が脳や脊髄の白質、神経、腎臓、脾臓、その他の器官に蓄積します。こうして脂質が蓄積することで、脱髄が起こります。 脱髄とは、神経を包んでいる髄鞘という組織が破壊される現象です。髄鞘が損傷すると、信号が神経を正常に伝わらなくなります。信号が正常に伝わらないと、体の動きがぎこちなくなります。
異染性白質ジストロフィーの病型
乳児型では、進行性の麻痺と認知症がみられます。つまり、麻痺と認知症は生涯をかけて悪化するということです。この病型の症状は通常、4歳までに始まり、患児は9歳頃までに死亡します。
若年型では、歩行の問題、知的障害のほか、手足の筋力低下、しびれ、痛みがみられます。この病型では、4~16歳の間に症状が始まります。
より軽症の成人型もあります。
異染性白質ジストロフィーの診断
異染性白質ジストロフィーの治療
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
全米希少疾患患者協議会(National Organization for Rare Disorders[NORD]):希少疾患の一覧や支援団体、臨床試験に関する資料などの希少疾患に関する情報が親および家族向けに提供されています。
遺伝性疾患・希少疾患情報センター(Genetic and Rare Diseases Information Center[GARD]):希少疾患および遺伝性疾患に関する情報が分かりやすく提供されています。