細菌の概要

執筆者:Brian J. Werth, PharmD, University of Washington School of Pharmacy
レビュー/改訂 2022年 5月
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    細菌は環状二本鎖DNAと細胞壁(マイコプラズマは除く)を有する微生物である。大半の細菌は細胞外に生息するが,一部の細菌は選択的に細胞内に生息して増殖する。偏性細胞内寄生病原体は,宿主細胞内でのみ増殖でき,疾患を引き起こすことができる。このような病原体の例には,クラミジア,Chlamydophila属細菌,およびリケッチアなどがある。通性細胞内寄生病原体は,宿主細胞の内外のいずれにおいても生存および増殖が可能である。このような病原体の例には,チフス菌(Salmonella typhi),Brucella属,野兎病菌(Francisella tularensis淋菌(Neisseria gonorrhoeae髄膜炎菌(Neisseria meningitidisLegionella属,Listeria属,結核菌(Mycobacterium tuberculosisなどがある。

    ヒトの体内には様々な細菌が常在菌叢として,多くの領域(例,消化管,皮膚)にしばしば大量に存在する。ヒトにとって病原体となるのは少数の種のみである。

    細菌は以下の基準によって分類される(一般的な病原性細菌の分類の表も参照):

    • 形態

    • 染色

    • 莢膜形成

    • 酸素要求性

    形態

    細菌は以下に分類できる:

    • 円柱形(桿菌)

    • 球形(球菌)

    • らせん形(スピロヘータ)

    数種類の球菌,多くの桿菌,および大半のスピロヘータは運動性を有する。

    染色

    グラム染色は,一般的な細菌同定に最も頻用される染色法である。ヨウ素固定,アルコール脱色,およびサフラニンでの対比染色を行ったとき,グラム陽性細菌は菌体内にクリスタルバイオレット(暗青色を呈する)を保持する一方,グラム陰性細菌はクリスタルバイオレットを保持せず,赤く染色される。グラム陰性細菌はさらに,リポ多糖体(内毒素)を含有する外膜を有するが,これがグラム陰性菌の病原性を高めている。(細菌の病原性を高めるその他の因子については,微生物の侵入を助長する因子を参照のこと。)

    Ziehl-Neelsen染色Kinyoun染色は抗酸菌染色であり,主に抗酸菌(特に結核菌[M. tuberculosis])の同定に用いられる。また,グラム陽性桿菌であるノカルジアと原虫のクリプトスポリジウムサイクロスポーラシストイソスポーラも同定できる。石炭酸フクシンで処理した後,塩酸およびエタノールで脱色してから,メチレンブルーで対比染色する。

    蛍光染色(例,オーラミン-ローダミン染色)でも抗酸菌の同定は可能であるが,特別な蛍光顕微鏡が必要である。

    莢膜形成

    一部の細菌は菌体を莢膜に包まれており,莢膜を有する細菌の一部(例,肺炎球菌[Streptococcus pneumoniaeインフルエンザ菌[Haemophilus influenzae)では,莢膜が食細胞による食作用に対する防御に役立っている。莢膜形成は細菌の病原性を増強する。

    酸素要求性

    好気性細菌(偏性好気性菌)は,エネルギーの産生と培地中での増殖に酸素を必要とする。この種の細菌は有酸素呼吸によってエネルギーを産生する。

    嫌気性細菌偏性嫌気性菌)は酸素を要求せず,空気の存在下では培地中で増殖しない。この種の細菌は発酵または嫌気的呼吸によってエネルギーを産生する。嫌気性細菌は,消化管,腟,歯間部,および血液供給が障害された慢性創傷でよく認められる。

    通性嫌気性細菌は,酸素の有無にかかわらず増殖することができる。この種の細菌は,酸素がない環境では発酵または嫌気的呼吸によって,酸素がある環境では有酸素呼吸によってエネルギーを産生する。微好気性細菌は酸素分圧が低い環境(例,2~10%)を好む。

    クラミジアは偏性細胞内寄生体であり,宿主細胞からエネルギーを獲得するが,自身ではエネルギーを産生しない。

    表&コラム
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