Moraxella catarrhalisは,耳および上下気道に感染症を引き起こすグラム陰性双球菌である。
M. catarrhalis(以前はBranhamella catarrhalisとして知られていた)は以下の病態のよくみられる原因菌である:
COPD増悪の起因菌としては,無莢膜型インフルエンザ菌(nontypeable Haemophilus influenzae)に次いで2番目に頻度が高い。
M. catarrhalis による肺炎は肺炎球菌性肺炎に類似する。
菌血症はまれであるが,半数の患者が併発疾患のために3カ月以内に死亡する。
M. catarrhalisの定着率は年齢に依存する。健康成人の約1~5%で上気道への定着が認められる。上咽頭へのM. catarrhalisの定着は,乳児期を通してよくみられ,冬期に増加することがあり,急性中耳炎の危険因子である;早期の定着は反復性中耳炎の危険因子である。定着率にはかなりの地域差がある。これらの地域差には,生活条件,衛生状態,環境因子(例,家庭内での喫煙),集団の遺伝学的特性,宿主因子,その他の因子が寄与している可能性がある。
この細菌は,気道内の定着部位から感染部位へと連続的に広がるようである。
M. catarrhalisによる中耳炎,急性もしくは慢性副鼻腔炎,または肺炎に特有の病理学的特徴は認められない。下気道疾患の患者では,咳嗽の増加,膿性痰の分泌,および呼吸困難の増悪がみられる。
このグラム陰性双球菌はNeisseria属細菌に類似するが,感染した体液または組織での培養により菌を分離できれば,ルーチンの生化学検査で容易に鑑別可能である。
現在では全ての菌株がβ-ラクタマーゼを産生する。一般にβ-ラクタム系/β-ラクタマーゼ阻害薬,スルファメトキサゾール,テトラサイクリン系,広域スペクトル経口セファロスポリン系,アミノグリコシド系,マクロライド系,およびフルオロキノロン系に感性である。