ニトロフラントインは殺菌的に作用する抗菌薬であるが,正確な機序は不明である。
ニトロフラントインは経口でのみ使用できる。
薬物動態
ニトロフラントインを単回投与としたとき,血清中薬物濃度は非常に低いが,尿中では治療域の濃度に達する。
ニトロフラントインの適応
ニトロフラントインは以下のような一般的な尿路病原体に対して活性を示す:
Staphylococcus saprophyticus
バンコマイシン耐性株を含む他の腸球菌,ならびにKlebsiella属およびEnterobacter属細菌は,多くの場合,より感受性が低いが,これらの病原体に起因する単純性膀胱炎の治療にニトロフラントインは依然として有効な可能性がある。Proteus属,Providencia属,Morganella属,Serratia属,Acinetobacter属,およびPseudomonas属の大半の菌株は耐性である。他のクラスの抗菌薬との交差耐性はみられない。
ニトロフラントインは以下に対してのみ使用される:
単純性の下部尿路感染症(膀胱炎)の治療または予防
再発性尿路感染症の女性患者では,再発回数を減らせる可能性がある。
ニトロフラントインの禁忌
ニトロフラントインの禁忌としては以下のものがある:
この薬剤に対するアレルギー反応の既往
腎機能不全(クレアチニンクリアランス60mL/min未満)
生後1カ月未満
臨月(妊娠38~42週),陣痛および分娩中,または陣痛開始が切迫しているとき
妊娠中および授乳中の使用
ニトロフラントインの動物生殖試験では,胎児に対するリスクは示されていない。適切な対照を置いた十分な研究で妊婦を対象に実施されたものはないが,ニトロフラントインは妊娠の全てのトリメスターを通じて安全であると一般に考えられている。しかしながら,ニトロフラントインは新生児の赤血球内で未成熟な酵素系を阻害することにより,細胞損傷から溶血性貧血を引き起こすことがあるため,満期および陣痛・分娩時の使用は禁忌である。
ニトロフラントインは母乳に移行するため,溶血性貧血のリスクを減らす上で,最初の1カ月はできるだけ授乳を避けるべきであり,高ビリルビン血症の乳児では特に注意すべきである。
ニトロフラントインの有害作用
ニトロフラントインの有害作用としては以下のものがある:
消化管障害
肺毒性
末梢神経障害
溶血性貧血
肝毒性
頻度の高い有害作用は悪心および嘔吐であるが,これらは巨大結晶型では起こりにくい。発熱,発疹,急性過敏性肺炎(発熱および好酸球増多を伴う),および慢性進行性間質性肺線維症が発生することがある。錯感覚を来すことがあり,投与を続けた場合には,重度で上行性の運動性および感覚性多発神経障害が発生することがある(特に腎不全患者)。
白血球減少および肝毒性(急性胆汁うっ滞性肝炎または慢性活動性肝炎)が報告されており,G6PD欠損症患者および生後1カ月未満の乳児では溶血性貧血が発生することがある。
6カ月以上使用すると,肺および肝臓に慢性副作用が生じる。