リネゾリドおよびテジゾリドはオキサゾリジノン系抗菌薬である。
リネゾリド
リネゾリドはオキサゾリジノン系抗菌薬で,以下に対して活性を示す:
腸球菌,バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)を含む
ブドウ球菌,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus,MRSA)と他のクラスの抗菌薬に対する耐性株を含む
抗酸菌(結核菌[Mycobacterium tuberculosis]を含む)
嫌気性菌,例えばFusobacterium属,Prevotella属,Porphyromonas属,Bacteroides属,およびPeptostreptococcus属
リネゾリドの禁忌
リネゾリドは,同薬剤に対するアレルギー反応の既往がある患者では禁忌である。
リネゾリドは,モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)を使用している患者では禁忌である。
セロトニン症候群
リネゾリドは可逆的で非選択的なMAOIであり,MAOが阻害されると,神経伝達物質であるセロトニンの濃度が上昇する。したがって,以下のいずれかがある患者に使用すると,リネゾリドはセロトニン症候群(セロトニンが過剰になった状態で,精神状態の変化,神経学的異常,および自律神経不安定状態を特徴とする)を引き起こす可能性がある:
ホルモン産生性のカルチノイド腫瘍
セロトニン活性を有する薬剤の使用
具体的な薬剤としては,選択的セロトニン再取り込み阻害薬,MAOI(例,フェネルジン[phenelzine],イソカルボキサジド[isocarboxazid]),三環系抗うつ薬,セロトニン1B,1D受容体作動薬(トリプタン系),ペチジン,ブプロピオン,ブスピロンなどがある。このような薬剤を使用しているが,緊急にリネゾリドの投与が必要になった患者では,そのベネフィットがリスクを上回ると考えられ,かつ以下の条件を満たす場合には,リネゾリドを投与することができる:
セロトニン活性を有する薬剤を速やかに中止する
中止後2週間(フルオキセチンは5週間)またはリネゾリドの最終投与後24時間にわたって,セロトニン症候群の症状について綿密なモニタリングを行う
リネゾリドは,カルチノイド症候群患者では検討されておらず,セロトニン症候群の症候に対して綿密なモニタリングを行う場合に限定して使用するべきである。
高血圧
以下の患者には,潜在的な血圧上昇についてモニタリングを行わない限り,リネゾリドを使用してはならない:
交感神経刺激薬(例,プソイドエフェドリン),昇圧薬(例,アドレナリン,ノルアドレナリン),またはドパミン作動薬(例,ドパミン,ドブタミン)を使用している患者
コントロール不良の高血圧がある患者
甲状腺中毒症の患者
褐色細胞腫の患者
妊娠中および授乳中の使用
リネゾリドの動物生殖試験では,胎児に対するいくらかのリスクが示されているが,妊婦を対象として適切な対照を置いた十分な研究は実施されていない。リネゾリドを妊婦に使用するのは,潜在的なベネフィットが胎児に対する潜在的なリスクを上回る場合に限定すべきである。
リネゾリドが母乳中に分泌されるか否か,および授乳期間中の使用が安全か否かについては不明である。
リネゾリドの有害作用
リネゾリドの有害作用としては以下のものがある:
可逆的な骨髄抑制
不可逆的な末梢神経障害
可逆的な視神経症
血小板減少,白血球減少,貧血などの可逆的な骨髄抑制が約3%の患者で発生し,通常は治療期間が2週間を超えた場合にみられる。そのため,血算値を毎週モニタリングする(特に治療期間が2週間を超える場合)。
リネゾリドを長期使用すると,末梢神経障害や視神経症が発生することがあるため,リネゾリドを長期服用する患者には,これらの病態に対する綿密なモニタリングを行うべきである。
テジゾリド
テジゾリドは,リネゾリドに類似した抗菌スペクトルを有するオキサゾリジノン系抗菌薬であるが,リネゾリド耐性グラム陽性球菌の一部にも活性を示す。
臨床試験では,セロトニン症候群および血小板減少のリスクはリネゾリドよりテジゾリドの方が低かった。テジゾリドは,リネゾリドと同様,有意な好中球減少を引き起こす可能性があり,好中球数が1000/μL(1 × 109/L)未満の患者では,許容可能な代替薬が存在する場合,これらのオキサゾリジノン系抗菌薬の使用は推奨されない。
妊娠中および授乳中の使用
テジゾリドの動物生殖試験では,胎児に対するいくらかのリスクが示されているが,妊婦を対象として適切な対照を置いた十分な研究は実施されていない。テジゾリドを妊婦に使用するのは,潜在的なベネフィットが胎児に対する潜在的なリスクを上回る場合に限定すべきである。
リネゾリドが母乳中に分泌されるか否か,および授乳期間中の使用が安全か否かについては不明である。