マリアアザミ(ミルクシスル)

(シリマリン)

執筆者:Laura Shane-McWhorter, PharmD, University of Utah College of Pharmacy
レビュー/改訂 2023年 1月
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マリアアザミ(Silybum marianum)は,紫色の花をつける植物である。その液汁および種子は有効成分である強力な抗酸化物質のシリマリン(ミルクシスルとしばしば同義で用いられる)を含有している。シリマリンは,さらに3つの基本フラボノイド(シリビン,シリジアニン,シリクリスチン)に分けることができる。ミルクシスルエキスはシリマリン80%に規格化されるべきである。

栄養補助食品の概要National Institutes of Health (NIH): Milk thistleも参照のこと。)

効能

マリアアザミは肝硬変を治療でき,ウイルス性肝炎,アルコールの有害作用,および肝毒性のある薬物から肝臓を保護すると言われている(1)。マリアアザミは2型糖尿病の血糖コントロールを改善することもあり(2),また個別の症例報告ではキノコ中毒による死亡率を低下させると言われている(3)。

エビデンス

13のランダム化臨床試験をまとめた2007年のコクランレビュー(Cochrane Review)では,アルコール性肝疾患および/またはB型もしくはC型肝炎ウイルスによる肝疾患を有する患者915例においてマリアアザミが評価された(4)。この解析で得られたデータから,介入によって全死亡率,肝疾患の合併症発生率,肝臓の組織像のいずれにも有意な影響は生じなかったと判定された。全ての試験を含めて行われた解析では,肝臓に関連した死亡率は有意に低下したものの,質の高い研究に限定した解析では,低下の程度は有意ではなかった。マリアアザミの使用は,有害作用の有意な増加を伴わなかった。これらの臨床試験のデザインは問題にされておらず,著者らはマリアアザミの有益性を疑問視し,さらに綿密にデザインされたプラセボ対照試験を実施する必要があると提案している。

C型肝炎に対するマリアアザミのランダム化比較試験を対象としたメタアナリシスでは,忍容性は良好であるものの全体的な有益性は得られないと報告されている(5)。in vitroでは,シリマリンは解毒に重要な抗酸化物質である肝臓内のグルタチオン値を上昇させる(6)。

7つの研究(370例)を対象とした2018年のシステマティックレビューとメタアナリシスでは,マリアアザミにより,空腹時血糖値が37.9mg/dL(2.1mmol/L),ヘモグロビンA1C値が1.4%有意に減少したことが示された(2)。16の研究(1358例)を対象とした2020年のメタアナリシスでは,マリアアザミが空腹時血糖値,ヘモグロビンA1C,総コレステロール,および低比重リポタンパク質コレステロールを低下させたことが報告された(7)。

症例報告では,2例のテングダケ中毒においてシリビンを使用した治療後に望ましい結果が得られた(3)。

有害作用

重篤な有害作用は報告されていない。

ホルモン感受性疾患(例,乳癌,子宮体がん,卵巣がん,子宮内膜症,子宮筋腫)がある女性は,マリアアザミの地上部分を避けるべきである。

薬物相互作用

マリアアザミは血糖降下薬の作用を増強し(8),プロテアーゼ阻害薬(例,インジナビル,サキナビル)を阻害することもある(9)。マリアアザミは,ワルファリンを服用している患者で国際標準化比(INR)を上昇させる可能性がある。

マリアアザミはまた,肝障害のある腎移植患者においてシロリムスのクリアランスを低下させることがある。

栄養補助食品と薬物の間で起こりうる相互作用の表も参照のこと。)

参考文献

  1. 1.Abenavoli L, Izzo AA, Milic N, et al: Milk thistle (Silybum marianum): a concise overview on its chemistry, pharmacological, and nutraceutical uses in liver diseases.Phytother Res 32(11):2202-2213, 2018.doi: 10.1002/ptr.6171

  2. 2.Hadi A, Pourmasoumi M, Mohammadi H, et al: The effects of silymarin supplementation on metabolic status and oxidative stress in patients with type 2 diabetes mellitus: a systematic review and meta-analysis of clinical trials.Complement Ther Med 41:311-319, 2018.doi: 10.1016/j.ctim.2018.08.010

  3. 3.Ward J, Kapadia K, Brush E, et al: Amatoxin poisoning: case reports and review of current therapies.J Emerg Med 44(1):116-121, 2013. doi: 10.1016/j.jemermed.2012.02.020

  4. 4.Rambaldi A, Jacobs BP, Gluud C: Milk thistle for alcoholic and/or hepatitis B or C virus liver diseases.Cochrane Database Syst Rev (4)CD003620, 2007.doi: 10.1002/14651858.CD003620.pub3

  5. 5.Yang Z, Zhuang L, Lu Y, et al: Effects and tolerance of silymarin (milk thistle) in chronic hepatitis C virus infection patients: a meta-analysis of randomized controlled trials.Biomed Res Int 941085, 2014.doi: 10.1155/2014/941085

  6. 6.Valenzuela A, Aspillaga M, Vial S, et al: Selectivity of silymarin on the increase of the glutathione content in different tissues of the rat.Planta Med 55(5):420-422, 1989.doi: 10.1055/s-2006-962056

  7. 7.Xiao F, Gao F, Zhou S, et al: The therapeutic effects of silymarin for patients with glucose/lipid metabolic dysfunction: a meta-analysis. Medicine (Baltimore) 99(40):e22249, 2020.doi:10.1097/MD.0000000000022249

  8. 8.Wu JW, Lin LC, Tsai TH: Drug-drug interactions of silymarin on the perspective of pharmacokinetics.J Ethnopharmacol 121(2):185-193, 2009.doi: 10.1016/j.jep.2008.10.036

  9. 9.Jalloh MA, Gregory PJ, Hein D, et al: Dietary supplement interactions with antiretrovirals: a systematic review.Int J STD AIDS 28(1):4-15, 2017.doi: 10.1177/0956462416671087

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. National Institutes of Health (NIH), National Center for Complementary and Integrative Health: General information on the use of milk thistle as a dietary supplement

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