カヴァ

執筆者:Laura Shane-McWhorter, PharmD, University of Utah College of Pharmacy
レビュー/改訂 2023年 1月
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カヴァは南太平洋地域に生息する灌木(Piper methysticum)の根に由来する。茶かカプセルで摂取する。有効成分はカヴァラクトンであると考えられている。

栄養補助食品の概要National Institutes of Health (NIH): Kavaも参照のこと。)

効能

カヴァは抗不安薬および睡眠補助薬として使用される。機序は不明であるが,カヴァがγ-アミノ酪酸(GABA)経路を調節することを示唆するエビデンスもある。喘息,更年期症状,尿路感染症に対してカヴァを使用する場合もある。用量は規格化されたエキスを100mg,1日3回摂取する。

エビデンス

2003年のコクランレビュー(Cochrane Review)では,不安の治療におけるカヴァエキスの有効性および安全性を評価した11の臨床試験(計645例)が評価された。このメタアナリシスは,カヴァエキスはプラセボと比較して不安の緩和に効果的な選択肢であると思われると結論付けた(1)。この研究ではまた,1~24週間にわたるカヴァのサプリメント摂取は安全と思われるが,長期的な安全性については研究が必要であることが示唆された。このメタアナリシスで使用されたサプリメントが規格化されていたかは明らかでない。より最近のレビューでは,不安症状についてカヴァとプラセボを比較した7件の試験,抗不安薬の処方薬と比較した2件の試験,その他の有害事象を評価した2件の試験が評価された(2)。プラセボと比較して,カヴァは7試験中3試験で反応の可能性がより高く,処方抗不安薬に対する反応と同程度であった。有害事象は肝毒性を含め,両群間に差はみられなかった。

2013年のランダム化比較試験では,全般不安症に対して,カヴァの水性抽出物とプラセボが比較された。8週間後,カヴァ使用者の26%で寛解がみられたのに対し,プラセボ使用者では6%であった。カヴァ群では,特定の遺伝形質(GABAトランスポーターの遺伝子多型)が不安の軽減に関連していた(3)。しかしながら,2020年に実施された16週間のランダム化比較試験(171例)では,全般不安症に対するカヴァの効果が評価された(4)。この研究では,不安の軽減に群間差は認められず,研究終了時のプラセボ群では不安寛解の割合が高く,遺伝子多型と不安の軽減との関連を示すエビデンスは認められなかった。注目すべきことに,カヴァ群では肝酵素上昇の頻度がより高かったが,これらの被験者はカヴァによる肝損傷の基準は満たさなかった。したがって,このことは全般不安症に対するカヴァの使用に疑問を投げかけている。

有害作用

欧州と米国の両方でカヴァの摂取後に肝毒性(肝不全を含む)がみられた症例が数例報告されたことを受けて(5),米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)は,カヴァ製品に対する警告表示を義務づけた。肝毒性は調製方法や,肝毒性物質を含有するカビで汚染された低品質の原料に関係している可能性がある(6)。現在安全性のサーベイランスが行われている。

カヴァを従来の摂取方法(茶)で高用量(乾燥根を1日6~12g以上)摂取した場合,または長期にわたって(最長6週間)摂取した場合,鱗屑様の皮疹(カヴァ皮膚障害),血液の変化(例,大赤血球症,白血球減少症),および神経学的な変化(例,斜頸,注視発作,パーキンソン病の悪化,運動障害)が起きたという報告がある。

薬物相互作用

カヴァは他の鎮静薬(例,バルビツール酸系,ベンゾジアゼピン系)の作用を長引かせ,車の運転など覚醒が必要な活動に影響を与える可能性がある。

カヴァはドパミンの作用に干渉することがある。結果として,レボドパの有益な効果を減弱させることがある。カヴァはまた,パーキンソン病薬であるロピニロールの代謝を阻害するため,ドパミン作動性の毒性が生じる。したがって,パーキンソン病患者はカヴァの使用を避けるべきである。

カヴァは麻酔薬の作用を増強させることがある。

カヴァは,肝毒性物質とともに摂取すると肝傷害を引き起こすことがある。

栄養補助食品と薬物の間で起こりうる相互作用の表も参照のこと。)

参考文献

  1. 1.Pittler MH, Ernst E: Kava extract for treating anxiety.Cochrane Database Syst Rev (1):CD003383, 2003.doi: 10.1002/14651858.CD003383

  2. 2.Smith K, Leiras C: The effectiveness and safety of kava kava for treating anxiety symptoms: a systematic review and analysis of randomized clinical trials.Complement Ther Clin Pract 33:107-117, 2018.doi: 10.1016/j.ctcp.2018.09.003 

  3. 3.Sarris J, Stough C, Bousman CA, et al: Kava in the treatment of generalized anxiety disorder: a double-blind, randomized placebo-controlled study.J Clin Psychopharmacol 33(5):643-648, 2013.doi: 10.1097/JCP.0b013e318291be67

  4. 4.Sarris J, Byrne GJ, Bousman CA, et al: Kava for generalised anxiety disorder: a 16-week double-blind, randomised, placebo-controlled study.Aust N Z J Psychiatry 54(3):288-297, 2020.doi: 10.1177/0004867419891246

  5. 5.LiverTox: Clinical and Research Information on Drug-Induced Liver Injury [Internet]: Bethesda (MD): National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases; 2012.Kava Kava.[Updated 2018 Apr 10]. Accessed August 31, 2022

  6. 6.Teschke R, Sarris J, Schweitzer I: Kava hepatotoxicity in traditional and modern use: the presumed Pacific kava paradox hypothesis revisited.Br J Clin Pharmacol 73(2):170-174, 2012.doi: 10.1111/j.1365-2125.2011.04070.x

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. National Institutes of Health (NIH), National Center for Complementary and Integrative Health: General information on the use of kava as a dietary supplement

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