カンナビジオール(CBD)

執筆者:Laura Shane-McWhorter, PharmD, University of Utah College of Pharmacy
レビュー/改訂 2023年 1月
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カンナビジオール(CBD)は,アサ(Cannabis sativa)という植物に含まれる化学物質である。この植物は,カンナビノイドとして知られる80種を超える化学物質を含有しており,マリファナや大麻とも呼ばれる。2つある大麻の重要な成分は,CBDとテトラヒドロカンナビノール(THC)である。THCは大麻の中毒作用の原因となる物質であるが,この植物の健康効果に寄与している可能性がある。THCとは異なり,CBDは中毒を引き起こさない。

CBDは,米国ではソフトゲル,錠剤,カプセル,オイル,ガム,液剤,ベイプリキッド(充填式の電子タバコ用)として入手できる。これらの製品にはCBDのみを含有するものもあれば,他の成分とともにCBDを含有するものもある。

2017年の調査では,CBDを含有する多くの製品で製品中のCBDの含量に関する表示が不正確であり,ときに同じ製品でもCBDの濃度にばらつきがあると結論づけられた。さらに,これらの製品の21%でTHC(またはマリファナ)が検出された(1)。

栄養補助食品の概要も参照のこと。)

効能

米国ではCBDの処方薬が特定の痙攣性疾患の治療に用いられている。

以下のような他の多くの病態の治療にCBDを使用している人々もいる:

  • 双極症

  • 疼痛

  • 不安

  • クローン病

  • 糖尿病

  • 睡眠障害

  • 多発性硬化症

  • ヘロイン,モルヒネ,その他のオピオイド薬からの離脱症状

エビデンス

CBDの経口投与は,レノックス-ガストー症候群とドラベ症候群の2つのてんかん性脳症に伴う発作の治療薬として,米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)の承認を受けている。これらのてんかん性脳症は小児期に始まり,重度の認知発達障害に加えて頻回の発作がみられる。それらの患者とその他の治療抵抗性てんかん患者におけるCBDの有効性については,2つの臨床研究で報告されている(2,3)。しかしながら,他のより一般的な病型のてんかんに対してカンナビノイドが役立つかどうかを判断するには,それらの病態に対する研究は十分ではない。

成人の慢性神経障害性疼痛に対する大麻ベースの薬剤に関する2018年のコクランレビュー(Cochrane Review)では,計1750人の参加者を対象とした16研究が対象とされた(4)。解析の結果,大麻ベースの薬剤は50%以上の疼痛緩和を達成する人の割合をプラセボと比較して増加させる可能性があることが示された(21% vs 17%)。また大麻ベースの薬剤は,おそらく30%以上の疼痛緩和を達成する人の割合をプラセボと比較して増加させる(39% vs 33%)。著者らは,神経障害性疼痛におけるこのわずかな改善よりも潜在的な害の方が上回る可能性があると結論付けた。

様々な症状および疾患に対するCBDの使用に関しては,数多くの臨床研究があり,National Institutes of Health(NIH)のウェブサイトに要約されている。

有害作用

CBDには,口腔乾燥,低血圧,下痢,食欲減退,気分変化,ふらつき,疲労,発疹,不眠症および質の悪い睡眠,眠気などの有害作用がみられることがある。

CBDはトランスアミナーゼの上昇および肝損傷を引き起こす可能性がある。

薬物相互作用

CBDは,チトクロムP450(CYP)酵素であるCYP3A4およびCYP2C19によって代謝される。CYP3A4もしくはCYP2C19により代謝される薬剤またはCYP3A4もしくはCYP2C19を阻害する薬剤と併用すると,それらの薬剤またはCBDの血漿中濃度が上昇する可能性があり,その結果,それら薬剤の作用が増強し,有害反応のリスクが増大する可能性がある(5)。

CBDは以下のようないくつかの薬物の血清中濃度を上昇させ,その作用を増強させることがある:

  • 抗てんかん薬(例,ブリーバラセタム,カルバマゼピン,クロバザム,トピラマート)

  • 臓器移植後の拒絶反応を抑える免疫抑制薬(例,シクロスポリン,タクロリムス)

  • 抗凝固薬(例,ワルファリン)

  • 三環系抗うつ薬

  • プロトンポンプ阻害薬(例,オメプラゾール);下痢が起こることがある

  • ニコチン(ニコチンの作用持続時間を延長させる)

  • リチウム(リチウム中毒を引き起こすまたはリチウムの毒性を増強する)

  • ケタミン(抗うつ作用を増強する可能性あり)

  • メサドン

  • レボチロキシン

CBDは眠気を引き起こす可能性があるため,CBDと鎮静薬(例,ベンゾジアゼピン系薬剤,フェノバルビタール,モルヒネ,アルコール)の両方を服用すると,過度の眠気が生じることがある。

相互作用に関する情報が明らかになりつつある。治療係数の低い薬物(例,アミオダロン)では,薬物相互作用の可能性があるため,CBDの使用には注意と綿密なモニタリングが必要である。

アセトアミノフェン,バルプロ酸,およびCBDは肝損傷を引き起こす可能性があるため,CBDとアセトアミノフェンまたはバルプロ酸の併用は肝損傷の可能性を増大させることがある。

抗てんかん薬やリファンピシンなど,いくつかの薬剤がCBDの血清中濃度を低下させる可能性がある。

三環系抗うつ薬はCBDの血清中濃度を上昇させる可能性があるため,CBDの有害作用を増強することがある。

栄養補助食品と薬物の間で起こりうる相互作用の表も参照のこと。)

参考文献

  1. 1.Bonn-Miller MO, Loflin MJE, Thomas BF, et al: Labeling accuracy of cannabidiol extracts sold online. JAMA 318(17):1708-1709, 2017.doi:10.1001/jama.2017.11909

  2. 2.Szaflarski JP, Bebin EM, Comi AM, et al: Long-term safety and treatment effects of cannabidiol in children and adults with treatment-resistant epilepsies: Expanded access program results. Epilepsia 59(8):1540-1548, 2018.doi:10.1111/epi.14477

  3. 3.Szaflarski JP, Bebin EM, Cutter G, et al: Cannabidiol improves frequency and severity of seizures and reduces adverse events in an open-label add-on prospective study. Epilepsy Behav 87:131-136, 2018.doi:10.1016/j.yebeh.2018.07.020

  4. 4.Mucke M, Phillips T, Radbruch L, Petzke F, Hauser W: Cannabis-based medicines for chronic neuropathic pain in adults. Cochrane Database Syst Rev 3(3):CD012182, 2018.Published 2018 Mar 7.doi:10.1002/14651858.CD012182.pub2

  5. 5.Balachandran P, Elsohly M, Hill KP: Cannabidiol interactions with medications, illicit substances, and alcohol: a comprehensive review. J Gen Intern Med 36(7):2074-2084, 2021.doi:10.1007/s11606-020-06504-8

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. National Institutes of Health (NIH), National Center for Complementary and Integrative Health: Cannabis (Marijuana) and Cannabinoids: What You Need To Know

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