新生児に対するスクリーニング検査

執筆者:Deborah M. Consolini, MD, Thomas Jefferson University Hospital
レビュー/改訂 2021年 9月
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    新生児に対するスクリーニングの推奨については,臨床状況や各州の要件により異なる。

    母親の血液型がO型かRh陰性の場合,またはまれな血液抗原がある場合は,新生児溶血性疾患のリスクがあるため血液型の検査が適応となる。

    全ての新生児に対して,入院期間全体と退院前に黄疸の評価を行う。高ビリルビン血症のリスクについて,リスクに関する基準を用いるか,ビリルビン値を測定するか,またはその両方により評価する。ビリルビン値は経皮的または血清により測定できる。多くの病院が全ての新生児にスクリーニングを行い,予測ノモグラムを使用して極度の高ビリルビン血症が生じるリスクを判定している。フォローアップは退院時の生後日齢,退院前のビリルビン値および/または前回の測定から今回の測定までのビリルビンの上昇率,および黄疸の発生リスクに基づいて行う。

    大半の州では,フェニルケトン尿症チロシン血症,ビオチニダーゼ欠損症,ホモシスチン尿症メープルシロップ尿症ガラクトース血症先天性副腎過形成症鎌状赤血球症甲状腺機能低下症など,特定の遺伝性疾患の有無を検査する。一部の州では,嚢胞性線維症脂肪酸酸化異常症,その他の有機酸血症,および重症複合免疫不全症も検査項目に含められている。

    州によってはHIVスクリーニングが必要とされ,HIV陽性が判明しているか,HIV感染の高リスク行動がみられる母親から出生した児が適応とされている。

    母親に薬物使用歴があるか,原因不明の常位胎盤早期剥離もしくは原因不明の切迫早産があった場合,出生前の診察を十分に受けていなかった場合,または新生児に薬物離脱の所見がみられる場合には薬物中毒のスクリーニングの適応となる。

    パルスオキシメトリーによる重症先天性心疾患(critical congenital heart disease)のスクリーニングは,ルーチンの新生児評価の一部となっている。以前,CCHDのスクリーニングは出生前超音波検査および身体診察により行われていたが,このアプローチではCCHD例の多くが同定されず,罹病率および死亡率の上昇につながった。このスクリーニングは生後24時間以上経過してから行い,以下の場合に陽性と判定する:

    • 部位を問わず酸素飽和度が90%未満である。

    • 右手と右足での酸素飽和度が,1時間間隔で実施した3回の測定においてともに95%未満である。

    • 右手(動脈管前)と右足(動脈管後)での酸素飽和度の絶対差が,1時間間隔で行った3回の測定で3%を超える。

    スクリーニング陽性の乳児は全員,胸部X線,心電図,および心エコー検査などの追加検査を受けるべきである。該当乳児の担当小児科医に報告すべきであり,児は心臓専門医による評価が必要になる場合がある。

    聴覚スクリーニングは,州によって異なる。難聴は最も頻度の高い先天異常の1つである。乳児1000例につき約3例が,中等度,重度,または高度の難聴を伴い出生する。難聴は,出生時に集中治療室に入院した乳児でさらによくみられる。現在は,高リスクの新生児( see table 新生児における聴覚障害の高リスク因子)のみを対象にスクリーニングを実施している州もあれば,全ての新生児をスクリーニングの対象にしている州もある。最初のスクリーニングでは,手持ち式の機器を用いて,健康な耳で微弱なクリック音に反応して生じるエコーを調べることが多いが(耳音響放射),この検査で異常を認めた場合は聴性脳幹反応(ABR)検査を行う。最初のスクリーニング検査としてABR検査を行う施設もある。言語聴覚士による,さらなる検査が必要な場合もある。

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