頭蓋顔面部および筋骨格系の異常は小児ではよくみられる。特定の部位のみに異常がある場合(例,口唇裂,口蓋裂,内反足)と,複数の先天異常を合併する症候群(例,軟口蓋心臓顔貌症候群,トリーチャー・コリンズ症候群)の一部である場合がある。孤発性の異常を非定型の症候群や発現が軽度の症候群と鑑別するために,慎重な臨床的評価が必要になることがある。
先天異常は以下に分類することができる。
変形
形成異常
変形は,異常な圧迫および/または胎位(例,一部の内反足)もしくは出生後の体位(例,体位性斜頭症—同じ体位で長時間横になっていることに起因する頭部の平坦化)に起因する形状変化である。変形は出生の約2%にみられ,数日以内に自然に消失するものもあれば,消失せず治療を要するものもある。
形成異常は,正常な臓器または組織の発生過程でエラーが生じたことによる異常である。その原因としては,染色体異常,単一遺伝子の異常,催奇形性物質,遺伝因子と環境因子の複合などが挙げられ,特発性とみなされる症例数は減少してきている。先天性形成異常は出生の約3~5%にみられる。臨床遺伝専門医が患児の評価と確定診断を行うべきであり,至適な治療計画の設定,予測を含めた育児指導と遺伝カウンセリングの提供,同様の異常のリスクを有する近親者の同定に不可欠である。
先天性多発性関節拘縮症(arthrogryposis multiplex congenita:AMC)とは,出生時に多発性の関節拘縮がみられることを特徴とする一群のまれな先天性疾患を指す。これらの疾患は,子宮内で関節運動が制限されることにより生じる。胎生期の関節形成過程またはその直後に胎児の四肢が固定される多くの病的過程がAMCの原因になる可能性がある。AMCは,胎児の神経・筋の機能および発達が障害された場合に発生する。
先天性頭蓋顔面異常は,頭部と顔面の軟部組織構造や骨の異常な発育および/または発生によって生じる。最も一般的な顔面の異常は口唇裂および口蓋裂である。その他の異常が耳,眼,および顎に生じることがある。頭蓋骨を侵す頭蓋顔面異常としては,大頭症,小頭症,頭蓋披裂または関連する骨化の異常,頭蓋縫合早期癒合症などがある。
股関節および関節の先天異常としては発育性股関節形成不全および膝関節脱臼などがある。
先天性四肢障害は多数存在する。ときに肢が欠如しているか不完全である。手または足の一部または全部が欠如していることがある。例えば,多指症または合指症がみられることがある。内反尖足(内反足)は,足および足関節の形状または位置がねじれる異常である。その他の足の異常としては,内転中足,内反中足,外反踵足,扁平足などがある。
内反膝(O脚)では,膝関節が外側を向いているように見える。外反膝(X脚)では,膝関節が内側を向いているように見える。下肢を侵すその他の異常としては,大腿骨捻転および脛骨捻転などがある。
筋肉の異常は先天性である場合がある。乳児の出生時点で単一または一群の筋に欠損がみられる場合や,筋肉の発育が不完全であることがある。筋肉の異常は単独または症候群の一部として生じる。
頸部および背部の先天異常は,軟部組織または骨の損傷によって生じる場合がある。最も一般的な異常には以下の2つがある:
脊椎の異常としては,出生時から明らかなことはまれな脊柱側弯症と,出生時に同定される可能性が高い特定の椎骨の異常が挙げられる。いくつかの遺伝性症候群に,その異常の1つとして脊柱側弯症が含まれている。患児が成長するにつれて,弯曲が急速に進行することがある。中等度の弯曲(20~40°)では,保存的治療を行って(例,理学療法および装具)さらなる変形を防ぐ。重度の弯曲(40°超)は,手術により改善することがある(例,ロッドの設置による脊椎固定術)。
先天異常があると思われる患者は臨床遺伝学的評価のために専門医に紹介すべきである。頭蓋顔面部および筋骨格系に先天異常を有する患者の評価では,染色体マイクロアレイ,特異的遺伝子検査,またはより広範な遺伝子パネル検査を考慮すべきである。これらの検査で診断に至らない場合には,全エクソーム配列決定が推奨される。