頸部および背部の異常は,軟部組織または骨の損傷によって生じる場合と,脊椎形成異常によって生じる場合がある。
(頭蓋顔面部および筋骨格系の先天異常に関する序論も参照のこと。)
脊椎形成異常は単独で生じる場合もあれば,症候群の部分症として生じる場合もある。
典型的には画像検査が行われる:染色体マイクロアレイ解析,特異的遺伝子検査,または広範な遺伝子パネル検査を考慮すべきである。これらの検査で診断に至らない場合には,全エクソーム配列決定が推奨される。
先天性斜頸
頭部が出生時または出生直後から傾いている状態である。
最も一般的な原因は以下のものである:
分娩時の頸部損傷
生後数日から数週に発生する斜頸は,血腫を生じる損傷と,その後に生じる胸鎖乳突筋(SCM)の線維化および拘縮が原因であることがある。SCMに圧痛を伴わない腫瘤が認められ,通常は中部にある。斜頸は斜頭症(頭部の一側の平坦化)および非対称性顔貌の高頻度の原因である(痙性斜頸を参照)。
先天性斜頸のその他の原因としては,Klippel-Feil症候群(頸椎の癒合,短頸,および毛髪線低位がみられ,しばしば尿路形成異常を伴う)などの脊椎異常や環椎後頭骨癒合などがある。特定の遺伝子異常(例,GDF6,GDF3,およびMEOX1の変異)が関与していることがある。神経系の原因として頻度が高いのは,中枢神経系腫瘍,球麻痺,および眼球の機能障害であるが,これらが出生時から認められるのはまれである。頸椎(特にC1およびC2)の骨折,脱臼,または亜脱臼と歯突起の異常は,まれではあるが重篤な原因であり,脊髄損傷から永続的な神経損傷が起きる場合もある。
骨格系の原因(固定を要する場合がある)を除外するため,頸部の画像検査を施行すべきである。
分娩外傷による斜頸の場合は,頻回なSCMの受動的ストレッチ(頭部を回旋させ,頸部を対側に伸展させる)の適応となる。難治例ではSCMへのボツリヌス毒素の注射が助けとなることがある。
脊椎の先天異常
出生時から明らかなことはまれな特発性脊柱側弯症と,出生時に診断される可能性がより高い単独の脊椎異常(例,半椎,楔状椎,蝶形椎)が挙げられる。背側正中部の皮膚もしくは腎臓の異常または下肢の先天性異常がみられる場合は,脊椎異常を疑うべきである。VACTERL連合(vertebral anomalies[脊椎形成異常],anal atresia[鎖肛],cardiac malformations[心形成異常],trachesophageal fistula[気管食道瘻],renal anomalies[腎形成異常],radial aplasia[橈骨無形成],limb anomalies[四肢形成異常])など,症候群や形成異常連合の一部に脊椎異常が含まれる場合もある。アラジール症候群は,蝶形椎,胆管形成不全による黄疸,および心形成異常を呈する。卵形椎体はムコ多糖症や他のいくつかの蓄積症でみられる。
成長につれて,単一または複数の脊椎異常による脊椎の弯曲が急速に進行していくため,脊椎を注意深くモニタリングしていく必要がある。しばしば装具またはボディジャケット(1日18時間の装着を要することもある)が治療初期から必要となる。弯曲の進行によっては手術が必要になることもある。腎形成異常を合併することが多いため,最初のスクリーニングとして腎超音波検査が適応となる。