ホスホマイシンは新しいクラスの抗菌薬で,その化学構造は既知の他の抗菌薬と関連しない。殺菌効果を示す薬剤で,ホスホエノールピルビン酸合成酵素を阻害してペプチドグリカンの産生を妨げることにより,結果として細胞壁合成を阻害する。
米国では,ホスホマイシンは液体に溶かして服用可能なホスホマイシントロメタミンの粉末製剤としてのみ使用できる。米国外では,静注製剤が使用できる。
ホスホマイシンの薬物動態
ホスホマイシントロメタミン塩の経口生物学的利用能は低く(約40%),そのため血清中濃度は最小発育阻止濃度(MIC)と比べて低くなる。この理由から,ホスホマイシンは単純性下部尿路感染症の治療に使用され,腎盂腎炎には使用されない。
ホスホマイシンは血漿中タンパク質に結合せず,組織に広く分布する。ホスホマイシンは,生体内変換を受けることなく,主に糸球体濾過によって尿中に排泄される。経口投与すると,感受性病原体に対するMICを超える尿中濃度が24時間にわたり持続する。
ホスホマイシンの静注製剤が米国外の一部の国で利用可能となっており,中枢神経系感染症,骨髄炎,肺炎などのより重篤な感染症に有用となる可能性があり,これらの感染症の治療に使用される場合は,しばしばβ-ラクタム系など他の抗菌薬と併用される。
ホスホマイシンの適応
ホスホマイシンはグラム陽性菌およびグラム陰性菌の両方に対して活性を示し,その中には以下のような一部の抗菌薬耐性菌も含まれる:
黄色ブドウ球菌,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)(MRSA)を含む
腸球菌属,バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)を含む
大腸菌(Escherichia coli),基質拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生株とフルオロキノロン耐性大腸菌(E. coli)を含む
経口ホスホマイシンは主に,大腸菌(E. coli)または腸球菌によって引き起こされた単純性(すなわち下部)尿路感染症に限って使用すべきである。ただし,ホスホマイシンの静注剤が利用できる場合は,これが他部位の多剤耐性菌感染症の治療にも使用されることがある。
ホスホマイシンの経口剤は,たとえ単純性下部尿路感染症の状況であっても,大腸菌(E. coli)以外の大半の腸内細菌とPseudomonas属細菌に対する治療には推奨されない(1)。さらに,European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing(EUCAST)は,ホスホマイシンの静注剤について緑膿菌(P. aeruginosa)に対する感受性ブレイクポイントの使用を推奨していない(2)。
適応に関する参考文献
1.Tamma PD, Aitken SL, Bonomo RA, Mathers AJ, van Duin D, Clancy CJ.Infectious Diseases Society of America 2023 Guidance on the Treatment of Antimicrobial Resistant Gram-Negative Infections. Clin Infect Dis.Published online July 18, 2023.doi:10.1093/cid/ciad428
2.European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing (EUCAST): Clinical breakpoints - breakpoints and guidance.Accessed April 15, 2024.
ホスホマイシンの禁忌
ホスホマイシンまたはいずれかの製剤成分に対する過敏症の既往を除けば,重大な禁忌はない。
妊娠中および授乳中のホスホマイシンの使用
ホスホマイシンは胎盤を通過するが,妊婦の膀胱炎の治療には総じて安全とみなされている。
ホスホマイシンがどのくらい母乳に移行するかは不明であり,授乳中の女性にホスホマイシンによる治療が必要な場合は注意を要する。
ホスホマイシンの有害作用
ホスホマイシンは一般に忍容性が高く,有害作用の発生率は低いが,主に消化管症状(例,悪心,下痢)などがみられる。
ホスホマイシンの投与に関する留意事項
女性の単純性尿路感染症には,液体に溶解したホスホマイシントロメタミン5.61g(ホスホマイシン3gに相当)を単回経口投与する。その他の部位の感染症には,おそらくより長期の治療が必要になる。



