急性の感染性関節炎

執筆者:Steven Schmitt, MD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University
レビュー/改訂 2022年 7月
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急性の感染性(化膿性)関節炎は,数時間または数日にわたって進行する関節の感染症である。感染が滑膜組織または関節周囲組織に存在し,通常は細菌性(若年成人では高い頻度で淋菌[Neisseria gonorrhoeae])である。しかし,非淋菌性の細菌感染も起こることがあり,関節構造を急速に破壊することがある。症状としては,急激な疼痛,関節液貯留,自動可動域と他動可動域両方の制限などがある(通常は単一の関節内)。診断には関節液検査および関節液培養を必要とする。治療は抗菌薬の静注および関節からの排膿である。

急性の感染性関節炎は,高齢者に最もよくみられるが,小児に起こることもある。関節の感染症の患児の約50%は3歳未満である。しかしながら,インフルエンザ菌および肺炎球菌に対するルーチンの小児予防接種により,この年齢群における関節の感染症の発生率は低下している。

危険因子

関節の急性感染症には数多くの危険因子がある(感染性関節炎の危険因子の表を参照)。

関節リウマチ患者,慢性の関節損傷を引き起こすその他の疾患の患者,関節感染症の既往がある患者,注射薬物使用がみられる患者,および人工関節を有する患者では,感染性関節炎のリスクが大きく増加する(人工関節の感染性関節炎も参照)。関節リウマチ患者では特に細菌性関節炎のリスクが高い(有病率0.3~3.0%;年間発生率0.5%)。感染性関節炎を発症する小児の大半には同定された危険因子がない。

表&コラム
表&コラム

急性の感染性関節炎の病因

感染性微生物は以下の経路で関節に到達する:

  • 直接の侵入(例,外傷,手術,関節穿刺咬傷

  • 隣接する感染巣からの進展(例,骨髄炎,軟部組織膿瘍,感染創)

  • 離れた感染巣からの血行性の拡大

急性の感染性関節炎の原因となる一般的な微生物の表に一般的な微生物を挙げる。

表&コラム
表&コラム

成人では,関節の急性感染症の大半が細菌に起因し,淋菌性または非淋菌性に分類される。淋菌感染症の方が関節に対する破壊性がはるかに小さいため,この鑑別は重要である。成人全体では,黄色ブドウ球菌が感染性関節炎の最も頻度の高い原因である傾向がある。市中型黄色ブドウ球菌(S. aureus)の分離株でメチシリン耐性がみられることが増えている。

化膿性関節炎の原因としての淋菌の頻度は低下したが(現在では全症例の1%をやや上回るのみ),性的に活動的な若年成人では考慮すべきである(1)。これは淋菌(N. gonorrhoeae)が当初の感染部位から拡大することで生じるが,ときに粘膜表面(子宮頸部,尿道,直腸,咽頭)から血流を介して無症候性に感染が広がることもある。罹患した患者は同時にChlamydia trachomatisによる性器感染症を有することが多い。レンサ球菌属も頻度が高い原因であり,特に多関節の感染を伴う患者で多い。免疫抑制療法(例,腫瘍壊死因子阻害薬またはコルチコステロイドによる)を受けている患者は,あまり一般的ではない病原体(例,抗酸菌,真菌)による化膿性関節炎に罹患することがある。

Kingella kingaeは,幼児における化膿性関節炎の主要な原因として新たに注目を集めている。

病因論に関する参考文献

  1. 1.Ross JJ: Septic arthritis of native joints.Infect Dis Clin North Am 31(2): 203−218, 2017.Epub 2017 Mar 30.doi: 10.1016/j.idc.2017.01.001

急性の感染性関節炎の病態生理

感染微生物が滑液中および滑膜表層で増殖する。一部の細菌(例,黄色ブドウ球菌[S. aureus])は病原因子(アドヘシン)を産生し,それが関節組織への細菌の侵入,残留,および感染を可能にする。その他の細菌の産生物(例,グラム陰性菌の内毒素,細胞壁の断片,グラム陽性菌の外毒素,細菌抗原と宿主の抗体によって形成される免疫複合体)が炎症反応を増強する。

好中球が関節内に遊走して,感染微生物を貪食する。細菌の貪食はまた,関節内へのライソゾーム酵素放出(滑膜,靱帯,および軟骨を損傷する)を伴う好中球の自己融解を招く。したがって,好中球は主要な宿主防御システムでもあり,関節損傷の原因でもある。関節軟骨が数時間以内または数日以内に破壊されることがある。

ときに,感染が抗菌薬によって除菌された後も炎症性の滑膜炎が存続することがある。特に淋菌性の症例では,細菌または感染症由来の残留する抗原の残屑が軟骨を変化させて抗原性にすることがあり,細菌成分および免疫複合体のアジュバント効果と相まって,免疫を介した「無菌」の慢性炎症性の滑膜炎が発生することがある。

急性の感染性関節炎の症状と徴候

関節の急性感染症患者は数時間から数日にわたり,中等度から重度の関節痛,熱感,圧痛,関節液貯留,自動運動および他動運動の制限,ならびにときに発赤を来す。全身症状はごく軽微か全くみられない場合もあるが,菌血症を来した患者では敗血症の徴候がみられることがあり,特に黄色ブドウ球菌[S. aureus],β溶血性レンサ球菌,グラム陰性桿菌など毒性の強い病原体の場合はその頻度が高くなる。

乳児および小児では,四肢の自発運動の制限(仮性麻痺),易刺激性,摂食障害が生じることがあり,また高熱もしくは微熱があるか,または発熱がないこともある。

淋菌性関節炎

淋菌性関節炎は,特徴的な皮膚炎-多関節炎-腱鞘炎症候群(dermatitis-polyarthritis-tenosynovitis syndrome)を引き起こすことがある。

古典的な臨床像は以下の通りである:

  • 発熱(5~7日間)

  • 粘膜表面と体幹,手,または下肢の皮膚に生じる複数の皮膚病変(点状出血,丘疹,膿疱,出血性の小水疱または水疱,壊死性病変)

  • 移動性の関節痛,関節炎,および腱鞘炎(しばしば複数の腱が侵される),最も多くは手の小関節,手関節,肘関節,膝関節,および足関節にみられ,まれに体幹骨の関節にみられる

最初の粘膜感染症(例,尿道炎,子宮頸管炎)の症状がみられないことがある。

非淋菌性の細菌性関節炎

非淋菌性の細菌性関節炎は,動作または触診によって顕著に悪化する進行性の中等度から重度の関節痛を引き起こす。感染が起きた関節の大半に腫脹,発赤,および熱感がある。最大50%の患者で発熱がないかまたは微熱がある;患者の20%だけが悪寒戦慄を訴える。毒性の強い微生物(例,黄色ブドウ球菌[S. aureus],緑膿菌[Pseudomonas aeruginosa])は一般により劇症性の関節炎を引き起こす一方,毒性の弱い微生物(例,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌,Propionibacterium acnes)は劇症化の程度が弱い関節炎を引き起こす。

非淋菌性の細菌性関節炎は成人患者の80%において単関節性であり,通常は末梢関節(膝関節,股関節,肩関節,手関節,足関節,または肘関節)に生じる。小児では,90%以上が単関節性である(膝関節[39%],股関節[26%],および足関節[13%])。

多関節性に侵されることが,免疫抑制患者,基礎疾患に慢性関節炎(例,関節リウマチ,変形性関節症)を有する患者,またはレンサ球菌またはブドウ球菌(特にβ溶血性レンサ球菌または黄色ブドウ球菌[S. aureus])に感染している患者でいくぶん多い。注射薬物使用者および血管留置カテーテルを使用している患者では,体軸関節(例,胸鎖関節,肋骨肋軟骨移行部,股関節,肩関節,脊椎,恥骨結合,仙腸関節)が侵されることが多い。インフルエンザ菌(H. influenza)は,淋菌感染症と同様の皮膚炎-関節炎症候群(dermatitis-arthritis syndrome)を起こすことがある。

咬傷に続発する感染性関節炎

ヒト,イヌ,またはネコの咬傷による感染症(ヒトおよび哺乳類による咬傷を参照)は,通常48時間以内に発症する。

ネズミによる咬傷は,発熱,発疹,および関節痛または所属リンパ節腫脹を伴う真の関節炎などの全身症状を約2~10日以内に引き起こす。

ウイルス性の感染性関節炎

ウイルス性の感染性関節炎は,ときに非淋菌性の急性細菌性関節炎と同様の症状を引き起こし,細菌性関節炎よりも多関節性である可能性が高い。

ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)関節炎

B. burgdorferi関節炎の患者には,ライム病の症状がほかにある場合もあれば,急性の単関節炎または少関節炎だけがみられる場合も,関節炎は無治療では再発することがある。適切な治療後も残る慢性疼痛は,感染以外が病因である可能性が高い。

多関節罹患の関節リウマチ様症候群は明らかにまれであり,他の診断によって生じている可能性が高い。

急性の感染性関節炎の診断

  • 滑液の検査および培養を伴う関節穿刺

  • 血液培養

  • 通常は血算および赤血球沈降速度(またはC反応性タンパク[CRP])

  • 分子生物学的検査(例,PCR法)

  • ときに画像検査

単関節性または少関節性の急性関節炎がみられる患者,および特定の感染性関節炎症候群の特徴的症状(例,移動性の多関節炎,腱鞘炎,および播種性淋菌感染症で典型的な皮膚病変;遊走性紅斑またはライム病のその他の症状および徴候)が別の組合せでみられる患者では,感染性関節炎が疑われる。

単関節または少関節の軽度の関節症状であっても,免疫抑制療法(例,コルチコステロイド,腫瘍壊死因子阻害薬またはインターロイキン6阻害薬)を受けていて,危険因子(例,関節リウマチ),人工関節,または関節に拡がる可能性のある関節外感染症(例,性器の淋菌感染症,肺炎,菌血症,何らかの嫌気性菌感染症)を有する患者では,疑いをもつべきである。

パール&ピットフォール

  • 急性の単関節または少関節の関節液貯留に加えて,細菌性の感染性関節炎に一致する所見を認める患者では,たとえ既知の関節疾患(例,関節リウマチ)が原因である可能性が高いと思われても,関節感染症を除外するために,関節穿刺を施行して滑液培養を行うべきである。

一般的な関節炎

滑液の検査が関節の急性感染症の診断では決め手になる。滑液は肉眼的に検査し,細胞数および白血球分画,グラム染色,好気培養および嫌気培養,ならびに結晶の検査に供する。悪臭を伴う滑液は,嫌気性菌感染症を示唆する。急性感染が起きた関節の滑液は通常,白血球数が20,000/μLを超え(ときに100,000/μLを超える),その95%以上が多形核白血球である。白血球数は,淋菌性の感染性関節炎よりも,淋菌以外の細菌性関節炎において多くなる傾向がある。白血球数はまた,初期にまたは部分的に治療した感染症においても少ないことがある。

グラム染色で微生物が明らかになるのは,急性の細菌性関節炎がある関節のうち50~75%に過ぎない(ブドウ球菌によることが最も多い)。陽性の場合,グラム染色は診断を示唆するが,培養が確定的である。

結晶の存在は,併存する感染性関節炎を除外しない。初回の関節液検査では,感染による滑液とその他の炎症による滑液を鑑別できない場合が多い。痛風患者と感染症の患者では,滑液中の滑膜細胞数の値に有意な重複がみられる。臨床的手段または滑液の検査によって鑑別が不可能な場合,培養結果が出るまで感染性関節炎を想定する。血液培養の好気ボトルに滑液を接種することにより,Kingella kingaeの検出率を改善できる。

通常は血液培養,血算,赤血球沈降速度(またはC反応性タンパク[CRP])などの血液検査を行う。しかし,結果が正常でも感染症は除外されない。同様に,感染性関節炎だけでなく非感染性の関節炎(痛風など)でも,白血球数,赤血球沈降速度,またはC反応性タンパク(CRP)が高値となることがある。血清尿酸値は,痛風では正常のことや低値となることさえあり,痛風とは無関係ではあるが,急性細菌感染症があると高値となることがあるため,関節炎の原因として痛風を診断ないし除外するために用いるべきではない。

分子生物学的検査(例,PCR法)を用いて,臨床検体中の微生物を直接検出してもよい。子宮頸部,尿道,中咽頭,または直腸から採取した検体の核酸増幅検査(NAAT)で淋菌が検出されることがある。結核菌(Mycobacterium tuberculosis)やTropheryma whippleiなどの培養困難な一部の微生物は,NAATにより滑液内に直接検出されることがある。

罹患した関節の単純X線は,急性感染症の診断には有用ではないが,ときに考慮されるその他の病態(例,骨折)を除外できる。早期の急性の細菌性関節炎でみられる異常は,軟部組織の腫脹および関節液貯留の徴候に限られる。細菌感染症を治療せずに10~14日を経ると,破壊的な変化(関節裂隙の狭小化[軟骨破壊を反映]およびびらん)または軟骨下の骨髄炎の病巣が現れることがある。関節内にみられるガスは,大腸菌(Escherichia coli)または嫌気性菌による感染症を示唆する。

診察や穿刺吸引を行おうとしても容易に到達できない関節の場合(例,体軸関節),MRIを考慮する。MRIまたは超音波検査によって,関節液貯留または膿瘍がある部位を同定でき,診断および治療の両方を目的とした吸引または排出が可能となる。MRIは,関連する骨髄炎を早い時期に示唆することがある。テクネチウム99mを用いる骨シンチグラフィーは,感染性関節炎では偽陰性を示すことがある。さらに,炎症を起こした滑膜および代謝活性の高い骨で,増大した血流に伴う取り込みの増加を示すので,痛風のような非感染性の炎症性関節炎で偽陽性を示すことがある。核医学検査およびMRIでは,感染症と結晶誘発性関節炎は鑑別されない。

淋菌性関節炎

淋菌性関節炎が疑われる場合,血液および滑液のサンプルを直ちに非選択的であるチョコレート寒天培地に平板培養すべきであり,また尿道,子宮頸内膜,直腸,および咽頭から採取した検体を選択的であるThayer-Martin培地に平板培養すべきである。性器の淋菌感染症を診断するために用いることが多い核酸検査を,専門の検査機関でのみ滑液について行う。性器からの培養またはDNA検査を行う。血液培養は,最初の1週間は陽性のことがあり,微生物学的診断を補助しうる。

化膿性関節炎であることが明らかな関節の滑液の培養は通常陽性であり,皮膚病変の体液も陽性のことがある。臨床基準に基づいて播種性淋菌感染症が疑われる場合,淋菌培養が全て陰性でも播種性淋菌感染症が存在すると想定される。抗菌薬に対する臨床反応(5~7日以内と予想される)が淋菌感染症の診断を確定するのに役立つことがある。

急性の感染性関節炎の予後

非淋菌性の急性細菌性関節炎は関節軟骨を破壊することがあり,数時間または数日以内に関節に永続的な損傷を与えることがある。

淋菌性関節炎は通常,関節に永続的な損傷を与えることはない。感染性関節炎の感受性を増大させる因子は,疾患の重症度をも増すことがある。

関節リウマチ患者では,機能予後が特に不良であり,死亡率が高い。

急性の感染性関節炎の治療

  • 抗菌薬の静脈内投与

  • 感染が起きた関節からの排膿(持続的な関節液貯留を伴う非淋菌性の急性細菌性関節炎または化膿性関節炎に対し)

抗菌薬療法

最初の抗菌薬の選択は,最も可能性の高い病原菌に照準を合わせる。レジメンは培養および感受性試験の結果に基づいて調節する。

淋菌性関節炎は以下により治療する:

  • アジスロマイシン1g,経口,単回 + セフトリアキソン1g,静注,1日1回

セフトリアキソンの静注は症状・徴候の消失後少なくとも24時間経過するまで継続し,起因菌が感受性であることが証明された場合は,続いてセフィキシム400mg,経口,1日2回の投与を7日間行う。このレジメンで改善がみられない場合や患者がセファロスポリン系薬剤に耐えられない場合は,感染症専門医へのコンサルテーションを行う。そのような場合は,代替レジメンとしてアジスロマイシンとゲミフロキサシン(gemifloxacin)またはゲンタマイシンの併用などがある。微生物が分離され,感受性であることが証明された場合に限り,シプロフロキサシン750mg,経口,1日2回を使用してもよい。C. trachomatisによる性器感染症を合併している場合は,アジスロマイシンの初回投与で十分に治療できる。

成人においてグラム染色の結果から淋菌以外のグラム陽性菌による感染症が疑われる場合,または何の微生物も認められない場合,治療は以下による:

  • 半合成ペニシリン(例,ナフシリン[nafcillin]2gを4時間毎に静注)

  • セファロスポリン系薬剤(例,セファゾリン2gを8時間毎に静注)

  • バンコマイシン1gを12時間毎に静注

しかしながら,現在では黄色ブドウ球菌(S. aureus)の市中株でメチシリン耐性がよくみられるため,グラム染色でグラム陽性球菌の集簇が認められる患者とグラム染色陰性であるが黄色ブドウ球菌(S. aureus)が疑われる患者には,バンコマイシンが経験的治療の選択肢となる。

グラム陰性菌による感染症が疑われる場合(例,免疫抑制状態もしくは重篤な併存症,注射薬物の使用,抗菌薬を使用した最近の感染,または血管留置カテーテルの使用がある患者),経験的な治療法は,抗緑膿菌活性を有する第3世代セファロスポリン系薬剤の注射剤による投与(例,セフタジジム2gを8時間毎に静注)やアミノグリコシド系薬剤(感染症が重度の場合)などとなる。

新生児は,最初はグラム陽性菌感染症をカバーする抗菌薬(例,ナフシリン[nafcillin],バンコマイシン)に加えて,グラム陰性菌感染症をカバーする抗菌薬(例,ゲンタマイシン,セフォタキシムなどの第3世代セファロスポリン系薬剤)により治療すべきである。

生後3カ月以上の小児は,最初は成人と同様に治療すべきである。

注射剤による抗菌薬投与を臨床的改善が明白となるまで(通常2~4週)継続し,経口抗菌薬を高用量でさらに2~6週間,臨床反応に応じて投与すべきである。

レンサ球菌およびHaemophilus属細菌による感染症は通常,静注療法の後に2週間の経口抗菌薬投与で除菌される。

ブドウ球菌感染症は,少なくとも3週間,しばしば6週間以上の抗菌薬により治療する(特に罹患関節に関節炎の既往がある患者,免疫抑制患者,または診断が遅れた患者において)。

その他の治療法

非淋菌性の急性細菌性関節炎には,抗菌薬に加えて,径の太い針を用いた関節内の膿の穿刺吸引(少なくとも1日1回),またはデブリドマンのための還流灌注洗浄(tidal irrigation lavage),関節鏡視下洗浄,もしくは関節切開が必要となる。一般に,すでに関節リウマチに侵された関節の罹患では,積極的な外科的デブリドマンおよびドレナージを早期に行うべきである。

持続的な関節液貯留を伴う淋菌性関節炎に対しては,膿を吸引しドレナージを必要に応じて繰り返さなければならないことがある。

急性の細菌性関節炎では,最初の数日は痛みを軽減するために関節の副子固定が必要であり,その後耐えられるようになればすぐに筋力強化とともに他動的および自動的関節可動域訓練を行い拘縮を抑える。診断が確定すれば,NSAID(非ステロイド系抗炎症薬)が疼痛および炎症の軽減に役立つ可能性がある。急性感染症の間はコルチコステロイドの関節内注入は避けるべきである。細菌学的検査は偽陰性となることがあるため,細菌の感染源の存在を明確に否定できるまでは,一般に強力な抗炎症療法は控えるべきである。オピオイドは疼痛コントロールに使用できる。

ウイルス性の関節炎および咬傷に続発する関節炎

ウイルス性関節炎は支持療法で治療する。

咬傷は,必要に応じて抗菌薬および外科的ドレナージで治療する(ヒトおよび哺乳類による咬傷の治療を参照)。

要点

  • 淋菌性関節炎は,非淋菌性の急性細菌性関節炎の発症よりも軽度の炎症を伴って発症する。

  • 急性の単関節炎または少関節炎がみられる場合(特にリスクが高い患者),または他の特定の感染性関節炎症候群を示唆する所見を認める場合は,感染性関節炎を疑うこと。

  • 診断を確定または除外するために滑液の検査および培養を行う;X線およびルーチンの臨床検査は通常ほとんど役に立たない。

  • 感染性関節炎(特に非淋菌性の細菌性関節炎)は,可及的速やかに診断して治療すること。

  • 最初の抗菌薬療法は,臨床所見およびグラム染色の所見から疑われる病原体に向けて行う。

  • 非淋菌性の関節感染症には排膿を行うべきであり,淋菌性の関節感染症には,持続的な関節液貯留を引き起こしている場合に排膿を行うべきである。

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