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小児の脳および脊髄の腫瘍の概要

執筆者:Kee Kiat Yeo, MD, Harvard Medical School
レビュー/改訂 2024年 6月
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やさしくわかる病気事典

脳と脊髄は中枢神経系を構成しています。中枢神経系の腫瘍は、15歳未満の小児のがんの中で(白血病に次いで)2番目に多くみられるがんであり、小児でのがんによる死亡原因の第1位です。

  • 小児で最も多くみられる中枢神経系腫瘍は(順に)、星細胞腫髄芽腫上衣腫です。

  • 脳腫瘍により、頭痛、吐き気、嘔吐、視覚障害、ぼんやりする、協調運動障害、平衡障害などの様々な症状が生じます。

  • 診断は通常、MRI検査と生検の結果に基づいて下されます。

  • 治療としては、手術、放射線療法、化学療法、分子標的療法、またはこれらが組み合わせて行われます。

通常、中枢神経系腫瘍の原因は不明です。しかし、脳および脊髄への高い線量の放射線や特定の遺伝性疾患(例えば、神経線維腫症)は中枢神経系腫瘍の原因となることが分かっています。

成人の脳腫瘍も参照のこと。)

小児の脳および脊髄の腫瘍の症状

頭蓋内部の圧力(頭蓋内圧)の上昇により、脳腫瘍の最初の症状が生じることがあります。腫瘍が脳内の髄液の流れを遮っている場合(水頭症といわれる状態)、または腫瘍が占める領域が大きい場合、頭蓋内圧が上昇することがあります。頭蓋内圧が上昇すると、次のような症状が起こります。

  • 乳児や非常に年少の小児の場合、頭部の拡大(大頭症

  • 頭痛

  • 吐き気や嘔吐(しばしば小児が目覚めた直後に生じます)

  • 複視や視力障害などの視覚障害

  • 眼球を上へ向けることができない

  • 行動や意識レベルの変化(怒りっぽくなったり、元気がなくなったり、混乱したり、眠そうになったりします)

  • けいれん発作

腫瘍が脊髄に発生すると次のような症状が現れる可能性があります。

  • 背部痛

  • 腕または脚の筋力低下

  • 腕または脚の感覚消失

  • 尿失禁または便失禁

  • 歩行困難

そのほかの症状は、腫瘍が脳または脊髄のどこにあるかによって異なります。

小児の脳および脊髄の腫瘍の診断

  • 画像検査

  • 通常は生検、ときに腫瘍全体を切除する手術

  • ときに腰椎穿刺

医師は症状に基づいて脳または脊髄の腫瘍を疑います。

通常、医師は脳のMRIなどの画像検査を行い、これにより通常は腫瘍を検出することができます。CT検査が行われることもあります。MRIまたはCT検査の前に、通常は造影剤が静脈に注射されます。造影剤は、画像検査で臓器やその他の構造をより鮮明にする物質です。

脳または脊髄の腫瘍が疑われる場合、医師は通常、診断を確定するために組織の小片を採取します(生検)。場合によっては、小片を採取する代わりに、手術で腫瘍をできるだけ切除することもあります。

ときに腰椎穿刺が行われ、髄液が採取されて顕微鏡で検査されることもあります。この処置は、腫瘍細胞が髄液中まで広がっていないかどうかを確認する場合や診断がはっきりしない場合に、決まって行われます。

小児の脳および脊髄の腫瘍の治療

  • 手術による腫瘍の切除

  • 化学療法、放射線療法、分子標的療法、またはこれらの組合せ

  • 髄液の排出

がん治療の原則も参照のこと。)

通常、脳および脊髄の腫瘍の治療では手術で腫瘍が切除されます。その後、化学療法放射線療法分子標的療法、またはこれらの組合せが行われます。

小児のそのような腫瘍治療に精通した専門家の医療チームが治療計画を作成します。この医療チームには、小児がん専門医(腫瘍医)、小児神経科医、小児神経外科医、放射線腫瘍医など、乳児、小児、青年の介護や治療を専門とする医師が加わります。

可能な場合には、手術で腫瘍が切除されます。脳腫瘍は、頭蓋骨を開いて切除されます(開頭術)。一部の脳腫瘍は、脳をほとんど傷つけることなく摘出することができます。手術後にMRI検査が行われ、残っている腫瘍があるかどうか、残っていればどのくらい残っているのかが確認されます。

手術後には、放射線療法、化学療法、分子標的療法、またはこれらの治療法の組合せが必要になることがあります。5歳未満の小児の場合、腫瘍の種類によっては放射線療法が成長と脳の発達に悪影響を与えかねないため、初めに化学療法が行われることがあります。より年長の小児の場合は、必要に応じて放射線療法が追加されることがあります。化学療法では重篤な副作用が生じることがあります。

腫瘍が髄液の流れを遮っている場合には、腫瘍を手術で切除する前に、細いチューブ(カテーテル)を用いて髄液を外に排出することがあります。局所麻酔または全身麻酔を行った後、頭蓋骨に開けた小さな孔からカテーテルを通して排液を行い、頭蓋内圧を低下させます。カテーテルは頭蓋内圧測定用ゲージにつながれます。数日後、カテーテルは取り外されるか、永久的に留置できる排液チューブ(シャント)(水頭症の治療を参照)に取り替えられる場合があります。

小児ではがんは比較的まれであるため、該当する臨床試験があれば、医師は臨床試験への参加について親と話し合うことがあります。臨床試験では、一部の小児は標準的な治療を受け、それ以外の小児は試験段階の治療(実験的治療と呼ばれます)を受けることになります。実験的治療としては、新しい化学療法、既存の薬剤の新しい組合せによる治療、新しい方法での手術や放射線治療などが行われます。ただし、実験的治療が常に効果的であるとは限らず、副作用や合併症が分かっていない場合もあります。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. 米国がん協会:あなたの子どもががんと診断されたら(If Your Child Is Diagnosed With Cancer):がんになった小児の親や家族向けの情報源で、診断直後に生じる問題や疑問にどう対処するかについて情報を提供している

ここでは、脳腫瘍の団体が脳腫瘍の種類と治療法に関する情報と、以下のような支援団体に関する養育者向けの情報を提供しています。

  1. 米国脳腫瘍協会(American Brain Tumor Association

  2. 小児脳腫瘍財団(Children's Brain Tumor Foundation

  3. 米国脳腫瘍学会(National Brain Tumor Society

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