上衣腫

執筆者:Kee Kiat Yeo, MD, Harvard Medical School
レビュー/改訂 2024年 6月
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上衣腫は、脳内にある空間(脳室)または脊髄内にある空間の内面を覆っている細胞から発生する、ゆっくりと増殖する腫瘍です。上衣腫は通常、悪性の腫瘍(がん)です。

  • 上衣腫の原因は不明です。

  • 症状は腫瘍の位置によって異なり、頭痛、嘔吐、ぼんやりする、平衡障害などがみられることがあります。

  • 診断は画像検査と生検によって下されます。

  • 治療法としては、手術、放射線療法のほか、ときに化学療法などがあります。

  • 予後(経過の見通し)は、小児の年齢と、がんがどの程度除去できたかによります。

上衣腫は小児の中枢神経系腫瘍の中で発生率が3番目に高く、小児の脳腫瘍の10%を占めます。(中枢神経系は脳と脊髄で構成されています。)上衣腫と診断される小児の大多数がおよそ6歳です。しかし、約30%は3歳未満の小児に発生しています。

小児では、大半の上衣腫が、頭蓋骨底部の脳の後部(後頭蓋窩と呼ばれます)の領域、またはその近くに発生します。この領域には(協調運動や平衡感覚を制御する)小脳や、(呼吸などの生命維持に必要な体の機能を制御する)脳幹が含まれています。

上衣腫はテント上の領域と呼ばれる脳の上部にも発生します。この領域には、大脳、脳室(液体で満たされた空間)、脈絡叢、視床下部、松果体、下垂体、および視神経が含まれます。

上衣腫が脊髄に発生する場合もあります。

上衣腫の症状

上衣腫の症状は腫瘍の位置によって異なります。

テント上の領域の上衣腫の症状としては、気分またはパーソナリティの変化、集中力の低下、頭痛、けいれん発作、体の特定の領域の機能異常などがあります。

後頭蓋窩の上衣腫の場合、症状は典型的に頭蓋内部の圧力(頭蓋内圧)の上昇と関連しています。乳児では月齢相応の発達段階に到達しない場合があります。怒りっぽくなったり、頭囲が大きくなったり、食欲がなくなったりすることもあります。より年長の小児では、吐き気、嘔吐、頭痛のほか、ぼんやりしたり、平衡感覚や協調運動、歩行に障害がみられたりするようになります。

上衣腫が脊髄に生じると、背部痛、筋力低下、しびれ/ピリピリ感、尿失禁や便失禁などの症状がみられる場合があります。

上衣腫の診断

  • MRI検査と生検

上衣腫の診断はMRI検査の結果に基づいて下されます。

腫瘍がみつかった場合は、サンプルが採取され、調べるために検査室に送られます(生検)。

上衣腫の治療

  • 手術、放射線療法のほか、ときに化学療法

がん治療の原則も参照のこと。)

まず、できるだけ安全に、できるだけ多くの腫瘍を手術で切除します。

放射線療法により生存率が高まります。通常は手術後に行われます。

化学療法を行っても生存率は増加しないと考えられますが、一部の小児では手術または放射線療法の前に腫瘍を小さくするのに役立ちます。

上衣腫の予後(経過の見通し)

患児がどれだけよくなるかは、年齢、上衣腫の種類、切除できた腫瘍の量によって異なります。

手術と放射線療法の副作用のため、生き延びた小児には、脳、脊髄、神経に問題が起きるリスクがあります。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. 米国がん協会:あなたの子どもががんと診断されたら(If Your Child Is Diagnosed With Cancer):がんになった小児の親や家族向けの情報源で、診断直後に生じる問題や疑問にどう対処するかについて情報を提供している

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