髄芽腫は、小脳(協調運動や平衡感覚を制御する脳の部分)に発生する増殖の速い脳腫瘍です。
髄芽腫の原因は不明です。
頻繁な嘔吐、平衡障害、頭痛、吐き気、嗜眠、複視などがみられることがあります。
診断の際には画像検査、生検、腰椎穿刺が通常行われます。
予後(経過の見通し)は、がんが平均リスクか高リスクかで異なります。
治療法は、手術、化学療法、放射線療法です。
(小児の脳腫瘍の概要も参照のこと。)
小児の脳腫瘍と脊髄腫瘍のうち、髄芽腫は約20%を占めます。この腫瘍は、3~4歳または8~10歳の小児に発生する傾向がありますが、乳児期や幼児期、青年期を通して発生する可能性があります。
髄芽腫は、協調運動や平衡感覚を制御する脳の部分(小脳)に発生します。小脳は、脳の後部、大脳の下にあります。髄芽腫は脳の他の部分や脊髄に広がりやすい傾向にあります。体の他の部分に転移することもあります。
髄芽腫の原因は明らかではありません。ある特定の遺伝性疾患(ゴーリン症候群やターコット症候群など)の患者に髄芽腫が生じることがあります。
髄芽腫の症状
多くの場合、小児の髄芽腫の初めの症状は頻繁な嘔吐です。小児が不器用になったり、歩行が不安定になったり、平衡を保つのが難しくなったりすることがあります。頭痛、吐き気、嗜眠、複視が生じることがあります。
髄芽腫の診断
MRI検査
生検、または多くの場合に腫瘍全体を切除する手術
腰椎穿刺
髄芽腫の診断を下すには、造影剤(画像を鮮明にする物質)を使用するMRI検査を行って腫瘍を探します。次に、腫瘍から組織サンプルを採取して顕微鏡で調べます(生検)。また、腫瘍細胞の染色体の特殊な検査(細胞遺伝学的検査または分子遺伝学的検査)も行い、診断と治療に役立てます。通常、サンプルとして腫瘍の一部だけを採取するのではなく、手術で腫瘍全体を切除して検査に送ります。
腫瘍が広がっていないか確認するため、医師は脊椎のMRI検査と腰椎穿刺(腰椎穿刺)を行います。腰椎穿刺は、髄液を採取してがん細胞がないか顕微鏡で調べるために行われます。手術を行った後に、医師は再度MRI検査を行って、腫瘍が完全に取り除かれているかどうかを判断します。これらの検査の結果は、腫瘍が平均リスクか高リスクかを医師が判定するために役立ちます。
以下に当てはまれば平均リスクとされます。
手術で腫瘍がすべて、またはほとんど切除できる場合
腫瘍が脳の別の部分、脊髄、または体の別の部分に広がっていない場合
以下に当てはまれば高リスクとされます。
腫瘍の多くが手術で切除できない場合
腫瘍が脳の別の部分、脊髄、または体の別の部分に広がっている場合
髄芽腫の予後(経過の見通し)
治療後に小児がどれだけよくなるかは、一般的に腫瘍が平均リスクか高リスクのどちらに分類されるかによって異なります。
小児が4歳以上の場合、がんがない状態で5年間生存できる見込みは、平均リスクで約80%、高リスクで約50~60%です。
3歳以下の小児では、結果の予測は難しいものの、生存率はよくありません。3歳以下の小児の約40%では、診断が下された時点で腫瘍が転移しています。小児が年少であればあるほど、知能の発達に影響が出やすくなります。例えば、学習障害や記憶障害が起きたり、意思決定が難しくなったりすることがあります。
特定の種類の髄芽腫は予後が非常によく、生存率は90~100%です。
髄芽腫の治療
手術、放射線療法、化学療法
(がん治療の原則も参照のこと。)
髄芽腫の最適な治療は、手術により腫瘍を切除し、化学療法と放射線療法を行うことです。一部の年少の患児では、放射線療法を行わない治療が効果的なことがあります。
自身の細胞を用いた幹細胞移植(自家幹細胞移植)が役立つこともあります。
さらなる情報
役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
米国がん協会:あなたの子どもががんと診断されたら(If Your Child Is Diagnosed With Cancer):がんになった小児の親や家族向けの情報源で、診断直後に生じる問題や疑問にどう対処するかについて情報を提供している