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血小板減少症の概要

執筆者:David J. Kuter, MD, DPhil, Harvard Medical School
レビュー/改訂 2024年 5月
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やさしくわかる病気事典

血小板減少症とは、血液中の血小板の数が少なくなった状態で、結果として出血のリスクが高まります。

本ページのリソース

  • 血小板減少症は、骨髄で作られる血小板が少なすぎる場合や血小板が破壊されすぎたり、腫大した脾臓に蓄積されすぎたりした場合に発生します。

  • 皮下出血やあざがみられます。

  • 血液検査を行って、診断を確定するとともに、その原因を特定します。

  • ときには治療(血小板輸血、プレドニゾン[日本ではプレドニゾロン]、血小板の生産を増やす薬剤、または脾臓摘出)が必要になることがあります。

血小板の病気の概要も参照のこと。)

血小板は、骨髄で作られ、血液中を循環して血液の凝固を助ける細胞です。血液には、通常1マイクロリットル当たり14万~44万個(1リットル当たり約140~440 × 109個)の血小板が含まれています。血液中の血小板数が1マイクロリットル当たり約5万個(1リットル当たり約50 × 109個)を下回ると、比較的軽いけがでも出血する可能性があります。しかし、出血リスクが最も大きくなるのは、一般に血液中の血小板数が1マイクロリットル当たり1万~2万個(1リットル当たり10~20 × 109個)を下回ってからです。血小板数がここまで少なくなると、傷が認められなくても出血する可能性があります。

血小板減少症の原因

血小板減少症の原因となりうる病気は数多くありますが、それらの病気は主に以下の3つのカテゴリーに分類されます。

  • 血小板が十分に作られなくなるもの

  • 血小板が過剰に破壊されるもの

  • 血小板が脾臓で過剰に除去されるもの

白血病やその他の骨髄疾患では、骨髄で血小板が十分に作られなくなることで血小板減少症が起こる可能性があります。

C型肝炎ウイルスヒト免疫不全ウイルス(HIV:後天性免疫不全症候群[エイズ]を引き起こすウイルス)、エプスタイン-バーウイルス(通常は伝染性単核球症を引き起こすウイルス)など、多くのウイルスが感染により血小板減少症を引き起こすことがあります。

肝硬変骨髄線維症ゴーシェ病などの病気で脾臓が大きくなると、血小板が脾臓に補足されるようになり、血液中の血小板の数が減少することがあります。

大量の赤血球輸血によって、血液中の血小板の濃度が低下する場合もあります。

最後に、多くの病気でみられるように、血小板が過剰に消費されたり破壊されたり場合もあります。そのような病気として最も注目すべきは、免疫性血小板減少症血栓性血小板減少性紫斑病、および溶血性尿毒症症候群の3つです。

ヘパリン、特定の抗菌薬、エタノール、抗がん剤、キニーネなど、一部の薬剤や薬物によって血小板減少症が起きることもあります。薬剤性血小板減少症は以下の結果として発生します。

  • 骨髄による血小板生産の低下(骨髄毒性が原因)

  • 血小板破壊の増加(免疫性血小板減少症)

血小板減少症の症状

血小板数が低下して最初にみられる徴候は、皮膚の内出血です。しばしば下腿の皮膚に小さな赤い斑点(点状出血)が多数現れ、ちょっとした打ち身であざ(斑状出血または紫斑)が広がることがあります。歯ぐきから出血する場合や、便や尿に血液が認められる場合があります。月経の出血が多量になることもあります。また、出血が止まりにくくなります。

血小板の減少が進むと、こうした出血傾向が悪化します。血小板の数が非常に少なくなると、消化管から多量の血液が失われたり、外傷がなくても生命を脅かす脳内出血を起こしたりします。

症状が現れる速さは、血小板減少症の原因と重症度によって異なります。

皮膚の内出血
斑状出血はんじょうしゅっけつ(あざ)
斑状出血はんじょうしゅっけつ(あざ)

この写真しゃしんには、あししょうじた紫色むらさきいろおおきなあざ(斑状出血はんじょうしゅっけつ)がうつっています。

DR P.MARAZZI/SCIENCE PHOTO LIBRARY

点状出血(皮膚)
点状出血(皮膚)

点状出血は、この写真のように、皮膚では赤色、紫色、または茶色の小さな斑点として認められます。

By permission of the publisher.From Deitcher S.In Atlas of Clinical Hematology.Edited by JO Armitage.Philadelphia, Current Medicine, 2004.

点状出血てんじょうしゅっけつ(口くち)
点状出血てんじょうしゅっけつくち

点状出血てんじょうしゅっけつは、この写真しゃしんのように、くちなかではあかちいさな斑点はんてんとしてみとめられます。

DR P.MARAZZI/SCIENCE PHOTO LIBRARY

血小板減少症の診断

  • 血小板数と血液凝固を測定する血液検査

  • 血小板数の減少を引き起こす可能性のある病気がないか調べるその他の検査

異常なあざや点状出血などの出血があると、血小板減少症が疑われます。血小板減少症を起こす可能性のある病気がある場合には、定期的に血小板数を検査します。あざや出血がない場合でも、別の理由で血液検査を行ったときに血小板減少症が見つかることがあります。

血小板が減少した原因を突き止めることが、治療を行う上で重要です。特定の症状があれば、原因を確定するのに役立ちます。例えば、血小板減少症の原因が感染の場合は、発熱がみられるのが普通です。それとは対照的に、免疫性血小板減少症血栓性血小板減少性紫斑病溶血性尿毒症症候群が原因である場合は、通常発熱がみられません。

身体診察で医師が脾臓の腫大が確認できる場合は、血小板が脾臓に閉じこめられており、脾臓が腫れるような病気が原因で血小板が減少していることが考えられます。

血小板数を自動計測器で測定して、血小板減少症の程度を判定する場合や、血液サンプルを顕微鏡で検査して、原因の手がかりを得る場合があります。血小板生産についてさらに詳しく調べるために、骨髄の組織を採取して顕微鏡で観察すること(骨髄生検と骨髄穿刺)がときに必要になることがあります。

血小板減少症の治療

  • 血小板減少症の原因の治療

  • けがをしないようにして出血のリスクを最小限にする

  • 血小板が作られる量を増やす、または破壊される量を減らす薬剤

  • 場合により血小板輸血

多くの場合、原因を取り除くことによって、血小板減少症も解消されます。薬剤による血小板減少症は通常、その薬剤の使用を中止すれば、是正されます。自己免疫性の血小板破壊に起因する血小板減少症(免疫性血小板減少症など)は、プレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)(免疫機能を抑えて血小板の破壊を抑える薬剤)と骨髄を刺激して血小板の生産を増加させる薬剤のほか、ときに脾臓の切除(脾臓摘出術)によって治療します。

血小板の数が少なく、異常出血がみられる人は、血小板の機能を損なう薬剤(アスピリンや非ステロイド系抗炎症薬など)は通常服用してはいけません。

血小板数が非常に少ない場合は、しばしば入院して治療します。出血がひどい場合は、血小板を輸血しますが、ときには血小板を輸血しても、基礎疾患によって破壊されることがあります。

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