C型急性肝炎は、C型肝炎ウイルスを原因とし、持続期間が数週間から最大で6カ月の肝臓の炎症です。
C型肝炎は、違法薬物の注射を目的として滅菌していない針を共用した場合にみられるように、感染した人の血液などの体液と接触することで感染します。
C型急性肝炎では多くの場合、症状が起こりません。
C型急性肝炎の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。
利用可能なワクチンはありません。
多くの場合、C型急性肝炎に対して特別な治療は推奨されません。
(肝炎の概要、急性ウイルス性肝炎の概要、C型肝炎[慢性]も参照のこと。)
2019年の米国では、4100症例を超えるC型急性肝炎が報告されました。しかし、認識されていないか報告されてない症例が多くあるため、2019年の実際の新規感染数は57,500症例以上と推定されました。米国ではC型急性肝炎の患者数は、2013年以降増加しています。
理由は判明していませんが、アルコール性肝疾患の患者の約5人に1人にC型肝炎がみられます。そのような人では、アルコールとC型肝炎がともに肝臓の炎症と瘢痕化(肝硬変)を悪化させるよう働きます。
C型肝炎の感染
C型肝炎は、通常は感染した人の血液への接触によって広がります。C型肝炎の感染が最も多く起こるのは、違法薬物の注射を目的として滅菌していない針を共用する人の間です。刺青やボディーピアスに用いる滅菌していない針から感染することもあります。
輸血や臓器移植による感染の可能性もありますが、現在ではほとんどみられません。そのような感染は、米国では、広い範囲でC型肝炎ウイルスに関する輸血用血液のスクリーニングが始まった1992年までよくみられました。
性的接触を介した感染はまれで、C型肝炎に感染した妊婦から新生児への感染もまれです。
C型肝炎に感染した理由を特定できないこともあります。
C型急性肝炎の症状
C型急性肝炎は、最初は軽症で症状がないこともよくあります。ほとんどのC型急性肝炎患者は、自分が感染していることに気づいていません。
一部のC型急性肝炎患者では、ウイルス性肝炎の典型的な症状がみられます。具体的な症状としては以下のものがあります。
食欲不振
全身のだるさ(けん怠感)
発熱
吐き気と嘔吐
黄疸(皮膚と白眼が黄色に変色すること)
C型急性肝炎が重症(劇症)になるのは非常にまれです。
C型肝炎の約75%が慢性化します。C型慢性肝炎は通常軽度です。しかし、時間の経過とともに、C型慢性肝炎の患者の約20~30%で肝硬変が発生します。肝臓がんが発生することがありますが、通常は肝硬変が生じた後にしか起こりません。
C型急性肝炎の診断
血液検査
C型急性肝炎は以下の場合に疑われます。
急性肝炎の症状がみられる場合。
血液検査(肝臓の検査)で肝臓の炎症(肝炎)が検出される場合。
C型肝炎になる危険因子がある場合。
検査は通常、肝臓がどの程度機能しているかと肝傷害の有無を評価する血液検査(肝臓の検査)により開始します。肝臓の検査では、肝酵素や肝臓で作られるその他の物質の濃度を測定します。
検査で肝臓の異常が検出された場合は、他の血液検査を行って肝炎ウイルスに感染していないか確認します。この血液検査では、特定のウイルスの一部(抗原)や、体内でウイルスを攻撃するために作られた特定の抗体のほか、ウイルスの遺伝物質(RNAまたはDNA)を特定できます。
肝炎の他の原因がないか調べるために、血液検査が行われます。
C型肝炎に対する抗体があれば、生涯のどこかの時点でC型肝炎に感染したものの、必ずしも感染が続いているわけではないと考えられます。C型肝炎に対する抗体が見つかった場合、C型肝炎ウイルスRNAの検査を行い、感染が現時点のものか過去に起こったものかを判定します。C型肝炎に対する抗体をもっていても、C型肝炎にかかることは防げません。(対照的に、A型肝炎やB型肝炎に対する抗体をもっていれば、それらのウイルスによる将来の感染は予防されます。)
C型急性肝炎の予防
注射針の共用など、リスクの高い行為は避けるべきです。
米国では、すべての供血者は、輸血によるC型肝炎ウイルス感染を予防するためにC型肝炎の検査を受けます。さらに、輸血によって肝炎にかかる可能性は非常に低いものの、医師はほかに選択肢がない場合にしか輸血を行いません。このような対策により、輸血によって肝炎にかかる可能性は劇的に減少しています。
現在利用可能なC型肝炎ワクチンはありません。
C型急性肝炎の治療
抗ウイルス薬
C型急性肝炎と診断された人には、C型慢性肝炎の治療に使用される薬剤で速やかに治療が行われます。この薬によりC型急性肝炎が慢性化するリスクを減らせる可能性があります。
飲酒によってさらに肝臓が障害されるため、C型肝炎の患者は禁酒すべきです。特定の食べものを避けたり活動を制限したりする必要はありません。肝障害を引き起こす可能性のある薬剤(アセトアミノフェンなど)を使わないようにします。
ほとんどの場合、黄疸が消えれば安全に仕事に復帰することができます。
さらなる情報
役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
米国疾病予防管理センター:C型肝炎(Centers for Disease Control and Prevention: Hepatitis C):このウェブサイトでは、C型肝炎の概要(定義および統計を含む)へのリンクに加え、感染、症状、検査、治療、C型肝炎と雇用に関する情報、ならびに医療従事者向けの情報へのリンクが掲載されています。Accessed May 19, 2022.