伝染性単核球症

(エプスタイン-バー[EB]ウイルス感染症;キス病)

執筆者:Kenneth M. Kaye, MD, Harvard Medical School
レビュー/改訂 2021年 9月
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やさしくわかる病気事典

エプスタイン-バーウイルスは、伝染性単核球症をはじめ、いくつかの病気を引き起こします。

  • このウイルスはキスを介して広がります。

  • 症状は様々ですが、最も多いのは極度の疲労感、発熱、のどの痛み、リンパ節の腫れです。

  • 血液検査を行って診断を確定します。

  • アセトアミノフェンや非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は発熱と痛みを和らげます。

エプスタイン-バー(EB)ウイルスによる感染症は、非常によくみられる病気です。EBウイルスは、ヘルペスウイルス4型と呼ばれるヘルペスウイルスの一種です。米国では5歳児の約50%、成人の95%近くがEBウイルス感染症にかかったことがあります。

EBウイルス感染症のほとんどは無症状です。伝染性単核球症は、一般にEBウイルスに感染した青年や若年成人に発生します。伝染性単核球症という病名は、感染者の血液中に特定の種類の白血球(単核球)が多数みられることに由来します。青年や若い成人は通常、EBウイルスの感染者とのキスを介して伝染性単核球症に感染します。

最初の感染後、EBウイルスは他のヘルペスウイルスと同様に、体内、主に白血球の中にとどまります。感染者は唾液中にウイルスを周期的に排出します。この排出が続いている期間に他の人に感染させることがありますが、その間は症状がみられません。

EBウイルスはまれに、バーキットリンパ腫や、鼻やのどに発生するある種のがん(上咽頭がん)など、何種類かのがんが発生する一因になることがあります。EBウイルスの特定の遺伝子が、感染した細胞の細胞分裂周期を変化させ、細胞をがん化させると考えられています。EBウイルスは、かつて疑われたような慢性疲労症候群を起こすことはありません。

伝染性単核球症の症状

5歳未満の小児では、感染しても症状が現れないケースが大半です。青年や成人では、伝染性単核球症を発症することもあれば、発症しないこともあります。

感染してから症状が出るまでの期間は、通常は30~50日です。この期間は潜伏期間と呼ばれます。

EBウイルスによる伝染性単核球症の主な4つの症状は以下の通りです。

誰にでもこれら4つの症状がすべて出るわけではありません。たいていの場合、全身のだるさ(けん怠感)と微熱で始まり、その後のどの痛みやリンパ節の腫れがみられます。疲労感はしばしば重度で、特に症状が重いのは最初の2~3週間ですが、何カ月も続くこともあります。通常、熱は午後から夕方にかけて最も高くなり、39.5℃近くにまで達します。のどの痛みはしばしばひどくなり、のどの奥に膿のようなものがみられることがあります。リンパ節の腫れは首の部分に一番多く生じますが、どのリンパ節も腫れる可能性があります。また症状がリンパ節の腫れ(ときに誤って「リンパ腺の腫れ」と呼ばれることがあります)だけの人もいます。

伝染性単核球症の患者の50%程度に脾臓(ひぞう)の腫れがみられます。感染者の大半では、脾臓が腫れても症状はほとんど出ませんが、脾臓が破裂することがあります(特にけがをしたとき)。脾臓の破裂は生命を脅かします。肝臓にも軽い腫れがみられることがあります。ときに、眼の周囲が腫れることもあります。

発疹はまれですが、EBウイルスに感染した人がアンピシリンという抗菌薬を服用すると、より高い確率で発疹が現れます。

ほかに非常にまれな合併症として、けいれん発作、神経の損傷、行動異常、脳の炎症(脳炎)、脳や脊髄を覆う組織の炎症(髄膜炎)、貧血、腫れたリンパ節による気道の閉塞があります。

症状の持続期間は様々です。2週間程度で症状は治まり、ほとんどの人が通常の生活に戻ることができます。ただし、疲労感はさらに数週間続くことがあり、ときには数カ月以上続くこともあります。1%未満の患者が死亡し、原因の多くは脳炎や脾臓の破裂、気道の閉塞などの合併症です。

伝染性単核球症の診断

  • 血液検査

伝染性単核球症の症状は、他の多くのウイルス感染症や細菌感染症でもみられるものです。そのため、伝染性単核球症と気づかれないことがよくあります。ただし、リンパ節の腫れが(特に首に)みられる場合は、伝染性単核球症が強く疑われます。

通常は診断を確定するために、異種親和性抗体検査やモノスポットテストという名前で知られる簡単な血液検査が行われます。この検査は青年や成人では病気の初期に行うと結果が陰性になることがあるため、この感染症が強く疑われる場合は、約1週間後に再検査を行うことができます。この検査は、伝染性単核球症の幼児では信頼性がとても低く、しばしば陰性になります。診断を確定するための別の検査として、EBウイルスに対する特異抗体を調べる血液検査があります。(抗体とは、EBウイルスのような特定の異物による攻撃から体を守るために免疫系が作り出すタンパク質です。)

血算もよく行われます。特徴的な単核球(異型リンパ球)が多数見つかることが最初の手がかりになって、伝染性単核球症の診断に至る場合があります。

伝染性単核球症の治療

  • 初期の安静

  • 鎮痛薬

  • ときに特定の合併症に対してコルチコステロイド

特別な治療法はありません。

伝染性単核球症の患者は、症状が重い最初の1~2週間は安静にします。2週間ほど経過したら、活動を増やしてもかまいません。ただし脾臓が破裂するおそれがあるため、少なくとも1カ月が経過し、医師が診察や超音波検査で脾臓が正常な大きさに戻ったことを確認するまでは、重い物を持ち上げたり人と接触するスポーツに参加したりしないでください。

発熱と痛みの緩和には、アスピリンやイブプロフェンなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)やアセトアミノフェンを投与します。ただし、アスピリンには死に至ることもあるライ症候群を引き起こすリスクがわずかにあるため、小児には使用すべきではありません。

気道がひどく腫れるなどの一部の合併症は、コルチコステロイドで治療します。

現在実用化されている抗ウイルス薬は、どれも伝染性単核球症の症状にはほとんど効果がないため、使用すべきではありません。

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