筋強直性ジストロフィー

(シュタイネルト病)

執筆者:Michael Rubin, MDCM, New York Presbyterian Hospital-Cornell Medical Center
レビュー/改訂 2024年 1月
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筋強直性ジストロフィーは、2番目に多くみられる病型の筋ジストロフィーです。この病気は、意識的に筋肉を緩める能力に影響を及ぼします。

筋強直とは、筋肉が収縮した後の弛緩が遅れることを意味し、それにより筋肉の硬直が生じることがあります。筋ジストロフィーとは、正常な筋肉の構造と機能のために必要な遺伝子の1つ以上に異常があるために、様々な重症度の筋力低下と筋萎縮(ジストロフィー)を引き起こす遺伝性筋疾患の総称です。

筋強直性ジストロフィーは、2番目に多くみられる病型の筋ジストロフィーです。常染色体顕性遺伝(優性遺伝)疾患であり、片方の親がこの病気に罹患しているだけでこの形質が子孫に引き継がれます。このジストロフィーは男女どちらにもみられ、約8000人に1人の割合で発生します。

筋強直性ジストロフィーは、出生時にすでに存在している場合もあれば、青年期ないし成人期の早期に現れ始める場合もあります。

筋強直性ジストロフィーの症状

筋強直性ジストロフィーの症状は通常、青年期ないし成人期の早期に現れ始めます。

この病気は筋強直を引き起こします。筋強直とは、収縮した筋肉が弛緩するのに時間がかかる状態です。その他の主な症状は、腕や脚(特に手)と顔面の筋肉の筋力低下と萎縮です。まぶたが垂れ下がることもよくあります。下垂足(足がだらんと垂れる)が生じる患者もいます。

心筋の筋力低下もよくみられ(心筋症)、不整脈が生じることがあります。

筋強直性ジストロフィーの症状は、軽い場合から重い場合まであります。最も重いタイプでは、極度の筋力低下に加え、白内障、精巣萎縮(男性)、前頭部の頭皮の壮年性脱毛症(男性)、不整脈、糖尿病知的障害など、多様な症状が現れます。

先天性筋強直性ジストロフィー

筋強直性ジストロフィーの母親をもつ小児に、乳児期に現れる重度のタイプの筋強直がみられることがあります。この病気は先天性筋強直性ジストロフィーと呼ばれており、別の病気の先天性ミオトニーと混同すべきではありません。

先天性筋強直性ジストロフィーの患児には、筋肉の緊張が極度に低下する筋緊張低下、栄養補給と呼吸の問題、骨の変形、顔面の筋力低下がみられるほか、思考の過程と体の動きの発達が遅れます。

最大で患児の40%が死亡し、その原因は通常、呼吸困難(呼吸不全)とおそらく心筋症です。生存者のうち最大60%で知的障害がみられます。

筋強直性ジストロフィーの診断

  • 遺伝子検査

筋強直性ジストロフィーの診断は、特徴的な症状、症状が最初に現れた時点での患者の年齢、家族歴に基づいて下されます。

診断を確定するために遺伝子検査が行われます。

筋強直性ジストロフィーの治療

  • 筋肉の硬直を緩和する薬剤

筋強直性ジストロフィーに対してはメキシレチンやその他の薬剤(例えば、ラモトリギン、フェニトイン、カルバマゼピンなど)による治療で硬直が緩和されることがありますが、これらの薬剤では患者にとって最も厄介な症状である筋力低下は緩和されません。また、これらの薬剤にはそれぞれ望ましくない副作用もあります。

筋力低下に対する唯一の治療法は支持療法で、足関節装具(下垂足に対して)やその他の装置などを用いて行います。

筋強直性ジストロフィーの予後(経過の見通し)

死亡の原因として最も多いのは、呼吸と心臓の異常です。若い年齢で不整脈や重度の筋力低下が発生した人では、若年死のリスクが高まります。通常は54歳ごろまでに死亡します。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. 米国筋ジストロフィー協会(Muscular Dystrophy Association):筋強直性ジストロフィーとともに生きる人向けの研究、治療、技術、支援に関する情報

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