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無月経

執筆者:JoAnn V. Pinkerton, MD, University of Virginia Health System
レビュー/改訂 2023年 2月
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月経がないことを無月経といいます。

以下の状況では、無月経は正常です。

  • 思春期以前

  • 妊娠中

  • 授乳中

  • 閉経後

それ以外の時期の無月経は、重篤な病気の最初の症状である可能性があります。

無月経は、原因によっては他の症状を伴ったり伴わなかったりします。例えば、過剰な体毛(男性型多毛症)、声の低音化、筋肉の増加など、男性的な特徴がみられるようになる(男性化)ことがあります。頭痛、視覚障害、性欲の低下などがみられることもあります。妊娠が難しくなる場合があります。

無月経の女性のほとんどは、卵巣からの排卵がありません。このような女性は妊娠することができません。

無月経が長期間続くと、閉経に関連して生じる問題と同様の問題が起こることがあります。例えばホットフラッシュ(ほてり)、腟の乾燥、骨密度が低下(骨粗しょう症)、心臓と血管の病気のリスク上昇などです。これらの問題は、無月経の女性ではエストロゲンの濃度が低いために生じます。

無月経の種類

無月経には主に以下の2種類があります。

  • 原発性:月経が始まらない。

  • 続発性:月経が始まり、その後止まってしまう。

通常、月経が始まらなければ、女児は思春期を迎えることがないため、乳房の発達や陰毛の出現などの正常な第二次性徴がみられません。

月経があった女性で月経が停止した場合は、続発性無月経である可能性があります。続発性無月経の方が原発性無月経と比べてはるかに一般的です。

ホルモンと月経

月経は複雑なホルモンの仕組みによって調節されています。毎月、内分泌系からホルモンが然るべき順序で分泌され、全身、特に子宮における妊娠に向けた準備が整えられます。この仕組みが正常に機能していて、かつ妊娠が起きていなければ、子宮内膜が剥がれ落ちて月経が起こることで、この一連の流れは終了します。この仕組みに関連するホルモンは、以下から分泌されます。

  • 視床下部(脳の一部で下垂体をコントロールする)

  • 下垂体(黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンを分泌する)

  • 卵巣(エストロゲンプロゲステロンを分泌する)

甲状腺ホルモンやプロラクチン(下垂体で分泌される)など他のホルモンも月経周期に影響を与えることがあります。

無月経の原因

無月経を引き起こす可能性がある要因としては、内分泌疾患、先天異常、遺伝性疾患、薬剤、違法薬物などがあります。

妊娠中でも授乳中でもない女性における無月経の最も一般的な理由は以下のものです。

  • 内分泌系のいずれかの部分(視床下部、下垂体、卵巣)の機能障害

これがうまく機能していなければ、卵巣からの排卵がありません。このような種類の無月経は排卵障害と呼ばれます。

無月経は子宮、子宮頸部、または腟に影響を及ぼす病態によっても起こります。

あまり一般的でない理由として、内分泌系は正常に機能していて、別の問題が月経を妨げていることもあります。例えば、子宮に瘢痕組織がある場合(アッシャーマン症候群)、子宮頸部が狭くなっている場合(子宮頸管狭窄症)、先天異常により腟からの経血の排出が妨げられている場合、月経が起こらない場合があります。

最も一般的な原因は、無月経が原発性か続発性かによって異なります。

原発性無月経

原発性無月経の原因になる病気は、どれも比較的まれなものですが、その中で最も多くみられるのは以下のものです。

  • 遺伝性疾患

  • 経血の流れを妨げる生殖器の先天異常(処女膜閉鎖症

遺伝性疾患には以下のものがあります。

原発性無月経の原因になる遺伝性疾患や先天異常は、思春期まで気づかれないことがあります。これらの病気が原因になるのは原発性無月経だけで、続発性無月経の原因にはなりません。

ときに思春期が遅れている女児に特に病気はなく、単に年齢が高くなってから月経が正常に始まることがあります。このような思春期の遅れは一部の家系に多く現れることがあります。

続発性無月経

最も一般的な原因は以下のものです。

  • 妊娠

  • 授乳

  • 視床下部の機能不全

  • 多嚢胞性卵巣症候群

  • 早発閉経(原発性卵巣機能不全)

  • 下垂体または甲状腺の機能不全

  • 経口避妊薬、抗うつ薬、抗精神病薬など特定の薬剤の使用

妊娠可能年齢の女性では、妊娠が無月経の最も一般的な原因です。

視床下部の機能不全は、以下のようないくつかの理由で起こります。

  • ストレスや過剰な運動(競技選手、特に体重を低く維持することが必要なスポーツの女性選手における)

  • 栄養不良(摂食症の女性や著しい体重減少があった女性など)

  • 精神疾患(うつ病強迫症など)

  • 脳への放射線療法または脳損傷

下垂体の機能不全は、以下のような理由で起こります。

  • 病気(腫瘍など)や頭部外傷による損傷

  • プロラクチンの血中濃度の上昇

抗うつ薬、抗精神病薬、経口避妊薬(ときに)、およびその他の特定の薬剤も、下垂体腫瘍やその他の病気と同様にプロラクチンの血中濃度を上昇させることがあります。

甲状腺の活動が不十分になったり(甲状腺機能低下症)、過剰になったり(甲状腺機能亢進症)すると、無月経になることがあります。

続発性無月経のあまり一般的でない原因には、慢性疾患(特に肺、消化器、血液、腎臓、または肝臓のもの)、一部の自己免疫疾患、がん、HIV感染症、放射線療法、頭部損傷、胞状奇胎(胎盤組織の過剰増殖)、クッシング症候群、副腎の機能不全などがあります。子宮の瘢痕組織(通常は感染または手術による)、ポリープ、および子宮筋腫も続発性無月経の原因になります。

脆弱X症候群などの遺伝性疾患により、月経が早期に停止することがあります(早発閉経)。

無月経の評価

医師は、無月経が原発性であるのか続発性であるのかを判断します。この情報は医師が原因を特定するのに役立ちます。

警戒すべき徴候

無月経の女児と女性では、以下の症状に注意が必要です。

  • 思春期の遅れ

  • 過剰な体毛、声の低音化、筋肉の増加など男性的な特徴の発達

  • 視覚障害

  • 嗅覚障害(カルマン症候群の症状である可能性)

  • 自然に生じる乳白色の乳頭からの分泌物(乳頭をつまんだり特に刺激したりしなくても生じる)

  • 著しい体重変化

受診のタイミング

女児に以下がみられる場合、数週間以内に受診すべきです。

  • 13歳までに思春期の徴候(乳房の発達や成長スパートなど)がみられない。

  • 乳房が発達し始めてから3年が経過しても月経が始まらない。

  • 正常に成長していて第二次性徴の発達がみられる女児において、15歳までに月経が始まらない。

このような女児は原発性無月経である可能性があります。

月経のあった妊娠可能年齢の女児や女性において月経が停止した場合、以下の場合には医師の診察を受けるべきです。

  • 月経が3回なかった

  • 1年の月経回数が9回未満である

  • 月経のパターンが急に変わった

このような女性は続発性無月経である可能性があります。続発性無月経の評価の際には常に妊娠検査を行います。医師の診察を受ける前に、市販の妊娠検査薬を使用してもよいでしょう。

医師が行うこと

医師はまず、月経歴を含む病歴について質問します。次に身体診察を行います。病歴聴取と身体診察で得られた情報から、多くの場合、無月経の原因と必要になる検査を推測することができます(表「無月経の主な原因と特徴」を参照)。

月経歴の聴取では、医師は今までに月経が起こったことがあるかを女児や女性に質問することにより、無月経が原発性であるか続発性であるかを判断します。月経を経験していれば、月経が始まったときの年齢や最後の月経はいつであったかを質問します。患者はまた、月経の様子について以下を説明するよう求められます。

  • 月経日数はどれくらいだったか

  • 月経の頻度はどれくらいだったか

  • 月経が規則的にあったことはあるか

  • 過去3~12カ月間で月経はどれくらい規則的であったか

  • 月経はどれくらい重かったか

  • 月経に関連して乳房の圧痛や気分の変化はあったか

女児に1度も月経が起こっていなければ、医師は以下について質問します。

  • 乳房の発達は始まったか。その場合、何歳で始まったか

  • 成長スパートはあったか。その場合、何歳だったか

  • 陰毛とわき毛は出現したか(思春期の徴候)。その場合、何歳で出現したか

  • 家族に月経異常の人がほかにいるか

これらの情報により、いくつかの原因の可能性を否定することができます。家系内の思春期の遅れおよび遺伝性疾患の情報も、原因が遺伝性疾患であるかどうかを判断するのに役立ちます。

医師は、原因を示唆する他の症状や、薬剤の使用(処方薬、市販薬、栄養補助食品、オピオイドを含みます)、運動、食習慣、無月経を引き起こす可能性がある他lの病態について質問します。

医師は身体診察の際に、第二次性徴が発達しているかどうかを判断します。乳房の診察を行います。内診を行い、性器が正常に発達しているかどうかや、生殖器に異常がないかを調べます。

医師はまた、原因を示唆している可能性のある以下のような症状がないかも確認します。

  • 両方の乳頭からの乳白色の分泌物:考えられる原因には、下垂体の病気やプロラクチン(乳汁の分泌を刺激するホルモン)の血中濃度を上昇させる薬剤などがあります。

  • 頭痛、難聴、および部分的な視力障害または複視:考えられる原因として、下垂体または視床下部の腫瘍があります。

  • 過剰な体毛、声の低音化、筋肉の増加など男性的な特徴の発達:考えられる原因には多嚢胞性卵巣症候群、男性ホルモンを分泌する腫瘍、薬剤の使用(男性ホルモンのアンドロゲンの合成ホルモン、抗うつ薬、またはプロゲスチンと呼ばれる合成女性ホルモンの高用量での使用)などがあります。

  • ホットフラッシュ、腟の乾燥、および寝汗:考えられる原因には早発閉経、卵巣の機能不全を引き起こす病気、放射線療法、化学療法などがあります。

  • 振戦(ふるえ)と体重減少または反応の鈍化と体重増加:これらの症状は甲状腺の病気を示唆します。

  • 歯のエナメル質の溶解、頬の唾液腺(耳下腺)の腫れ、および食道の炎症:これらの症状は神経性やせ症などの摂食症を示唆します。

検査

妊娠可能年齢の女児や女性には、以下の検査を行うことがあります。

  • 妊娠検査

  • ホルモンを測定する血液検査

  • 生殖器系を調べる画像検査または侵襲的検査(超音波検査や子宮鏡検査など)

  • ときに、月経が誘発されるかどうかを確認するためのホルモン剤の投与

ときに、月経がない女児や性行為を報告しない女児に対しても、妊娠検査を行うことがあります。妊娠の可能性が否定されたら、診察の結果と疑われる原因に基づいて他の検査を行います。

女児に1度も月経が起こっておらず(原発性無月経)、正常な第二次性徴がみられる場合、検査は血中ホルモン検査、身体診察、および超音波検査から始めて、子宮からの経血の排出を妨げうる先天異常がないか調べます。先天異常がまれなものであったり、特定が難しい場合には、MRI検査を行うことがあります。

検査は通常、一定の順序で行い、その過程で原因を特定したり除外したりしていきます。症状から特定の病気が示唆されていれば、その病気の検査をまず行うこともあります。例えば女性に頭痛や視覚障害がみられれば、脳のMRI検査を行い、下垂体腫瘍がないか確認します。さらなる検査が必要かどうか、またどの検査を行うかは、前の検査の結果により異なります。一般的な検査には以下のものがあります。

  • 血液検査により、プロラクチン(月経の妨げになりうる血中濃度上昇がないか確認する)、甲状腺ホルモン(甲状腺の病気がないか確認する)、卵胞刺激ホルモン(下垂体や視床下部の機能に問題がないか確認する)、および男性ホルモン(男性的特徴の発達を引き起こす病気がないか確認する)など、特定のホルモン濃度を測定する

  • 腹部および骨盤部の画像検査(通常は超音波検査であるが、ときにCT検査またはMRI検査)により、卵巣または副腎に腫瘍がないか調べる

  • 組織のサンプル(血液検査など)の染色体検査により、遺伝性疾患がないか確認する

  • 子宮または卵管の内部を観察する侵襲的検査(子宮鏡検査または子宮卵管造影検査)により、これらの臓器に閉塞やその他の異常がないか確認する

  • ホルモン剤(エストロゲンとプロゲスチンまたはプロゲステロン)の使用により、月経の誘発を試みる

子宮鏡検査では、観察用の細い管状の機器を腟から子宮頸部へと挿入して子宮内部を観察します。この検査は診療所で行われるか、病院で外来検査として行われることもあります。

子宮卵管造影検査とは、造影剤(X線画像に写る物質)を子宮頸部から子宮と卵管に注入した後に行うX線検査です。子宮卵管造影検査は、通常は病院の放射線検査室で外来検査として行われます。

ホルモン剤(プロゲスチンまたはエストロゲン + プロゲスチン)を経口で投与して、月経の誘発を試みます。そのホルモン剤で月経が誘発されれば、原因は月経をコントロールしている内分泌系の機能障害か早発閉経である可能性があります。ホルモン剤で出血が誘発されなければ、原因は子宮の病気や経血の排出を妨げる解剖学的異常での可能性があります。

無月経の治療

無月経が特定の病気によって起きている場合は、可能であればその病気を治療します。治療により、ときに月経が再開します。例えば、甲状腺機能低下症(甲状腺の活動が不十分になった状態)などの治療可能な内分泌疾患がある場合や、経血の流れを遮断している異常があって手術による修復が可能な場合には、通常は月経が再開します。

女児において検査結果がすべて正常であるにもかかわらず月経が始まらない場合は、3~6カ月毎に医師の診察を受けて、思春期の進捗を確認する必要があります。プロゲスチンと呼ばれる薬剤やときにエストロゲンも投与して月経を開始させ、乳房の膨らみなど第二次性徴の発達を促すこともあります。

無月経に関連する問題には、以下のような治療が必要な場合があります。

  • 妊娠が困難な場合(不妊症):妊娠を希望する場合、排卵を誘発するホルモン剤の投与が必要です。

  • 骨密度の低下(骨粗しょう症)、腟の乾燥、心臓と血管の病気のリスクの増加など、エストロゲンの欠乏による症状および長期的影響:ホルモン剤の投与(閉経期ホルモン療法またはホルモン補充療法と呼ばれます)を検討することがあります。

  • 過剰な体毛:無月経の原因となっている病気を治療することが助けになる場合があり、また、過剰な体毛は脱毛法で管理することもあります。

ビタミンDを摂取したり、食事やサプリメントによってカルシウムの摂取量を増やしたり、ホルモン療法薬や骨量減少を予防する薬剤(ビスホスホネート系薬剤、デノスマブなど)を使用したりすることによって、エストロゲンの欠乏による影響を最小限に抑えることができます。

まれに、内分泌機能の異常を引き起こす遺伝性疾患がみられる女児もいます。ターナー症候群などの遺伝性疾患は根治は望めません。Y染色体をもつ女性では、卵巣胚細胞腫瘍のリスクが高くなるため、医師は手術による両側の卵巣摘出を推奨します。卵巣胚細胞腫瘍は、卵巣内の卵子を生じる細胞(胚細胞)から発生します。

要点

  • 様々な理由により月経周期を調節する複雑なホルモンの仕組みが乱され、月経が停止します。

  • 医師は原発性無月経(月経が始まらないこと)と続発性無月経(月経が始まってから、停止すること)を区別します。

  • 通常、最初に行われる検査は妊娠検査です。

  • 女性が妊娠していない限り、無月経の原因を特定するため、通常他の検査が必要です。

  • 無月経に関連する問題(エストロゲンの血中濃度が低いなど)も、骨密度の低下による骨折(骨粗しょう症)など、将来的な健康上の問題を予防するために治療が必要になることがあります。

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