Consumer edition active

体内でのカルシウムの役割の概要

執筆者:James L. Lewis III, MD, Brookwood Baptist Health and Saint Vincent’s Ascension Health, Birmingham
レビュー/改訂 2023年 9月
プロフェッショナル版を見る

カルシウムは体内に存在する電解質の1つであり、血液などの液体に溶け込むと電荷を帯びるミネラルですが、体内のほとんどのカルシウムは電荷を帯びていません。(電解質の概要も参照のこと。)

体のカルシウムの99%は骨に蓄えられていますが、細胞(特に筋肉細胞)や血液中にもあります。カルシウムは以下の働きや過程に不可欠です。

  • 骨と歯の形成

  • 筋収縮

  • 多くの酵素が正常に機能すること

  • 血液の凝固

  • 正常な心拍リズムの維持

体内では細胞内や血液中のカルシウムの量が厳密に制御されています。血液中のカルシウム濃度を一定に保つために、カルシウムは必要に応じて骨から血液中に移動します。十分なカルシウムを摂取していないと、骨のカルシウムが大量に動員されて骨が弱くなります。骨密度が低下して骨折につながる可能性のある骨粗しょう症が生じることがあります。骨を弱体化させずに正常な血中カルシウム濃度を維持するために、成人では1日に少なくとも1000~1300mgのカルシウムを摂取する必要があります。カルシウムの吸収を助けるためには、ビタミンDも必要になります。成人は1日にビタミンDを600単位(高齢者では800単位)摂取すべきです。

血液中のカルシウム濃度は、主に以下の2つのホルモンによって調整されています。

  • 副甲状腺ホルモン

  • カルシトニン

副甲状腺ホルモンは、首の甲状腺の裏にある4つの副甲状腺でつくられます。血液中のカルシウム濃度が低下すると、副甲状腺でつくられる副甲状腺ホルモンの量が増加します。反対に、血液中のカルシウム濃度が上昇すると、副甲状腺でつくられるホルモンの量は減少します。副甲状腺ホルモンには以下の働きがあります。

  • 骨を刺激して血液中にカルシウムを放出させる

  • 腎臓から尿中に排出されるカルシウムの量を減らす

  • 消化管を刺激してカルシウムの吸収量を増やす

  • 腎臓でビタミンDの活性化を促すことで、消化管でのカルシウム吸収量を増やす

カルシトニンは甲状腺の細胞でつくられます。このホルモンには骨の分解を遅らせることで血液中のカルシウム濃度を下げる働きがありますが、影響はわずかです。

血液中のカルシウムの量が少なすぎる状態を低カルシウム血症と呼びます。血液中のカルシウムが多い状態を高カルシウム血症と呼びます。

さらなる情報

以下の英語の資料に、役立つ可能性がある情報が掲載されています。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. 米国国立衛生研究所栄養補助食品局(National Institutes of Health Office of Dietary Supplements):消費者向けのカルシウムファクトシート(Calcium Fact Sheet for Consumers):体内でのカルシウムの役割や1日の栄養所要量など、カルシウムに関する一般的な概要が掲載されています。

  2. 米国国立衛生研究所栄養補助食品局(National Institutes of Health Office of Dietary Supplements):消費者向けのビタミンDファクトシート(Vitamin D Fact Sheet for Consumers):体内でのビタミンDの役割や1日の栄養所要量など、ビタミンDに関する一般的な概要が掲載されています。

quizzes_lightbulb_red
医学知識をチェックTake a Quiz!
ANDROID iOS
ANDROID iOS
ANDROID iOS