無月経

執筆者:JoAnn V. Pinkerton, MD, University of Virginia Health System
レビュー/改訂 2023年 1月
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無月経(月経がない状態)には原発性または続発性のものがある。

原発性無月経は,正常な成長と第二次性徴が認められる患者において15歳までに月経が起こらないことである。しかしながら,13歳までに初経と乳房の発達がみられない場合は,原発性無月経の評価を行うべきである。

続発性無月経は,月経周期が規則的な患者において3カ月または月経周期が不規則な患者において6カ月以上,月経がない状態である(1)。

総論の参考文献

  1. 1.Gordon CM, Ackerman KE, Berga SL, et al: Functional hypothalamic amenorrhea: An Endocrine Society clinical practice guideline.Clin Endocrinol Metab 102 (5):1413–1439, 2017.doi: 10.1210/jc.2017-00131

無月経の病態生理

正常では,視床下部がゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)を律動的に放出する。GnRHは下垂体を刺激し,ゴナドトロピン(卵胞刺激ホルモン[FSH]および黄体形成ホルモン[LH]―[正常な月経周期の図を参照])を産生させ,それらが血流に放出される。ゴナドトロピンは卵巣を刺激し,エストロゲン(主にエストラジオール),アンドロゲン(主にテストステロン)およびプロゲステロンを産生させる。これらのホルモンの働きは以下の通りである:

  • 卵胞刺激ホルモンは発達中の卵母細胞の周囲にある卵巣顆粒膜細胞のアロマターゼを活性化し,アンドロゲンをエストラジオールに変換する。

  • 黄体形成ホルモンのサージが月経周期中に起こる;このサージが主席卵胞の成熟,卵母細胞の放出,および黄体(プロゲステロンを産生する)の形成を促す。

  • エストロゲンは子宮内膜を刺激し,増殖を引き起こす。

  • プロゲステロンにより子宮内膜が分泌期に入り,卵子の着床に備える(子宮内膜の脱落膜化)。

妊娠が起こらない場合には,エストロゲンおよびプロゲステロンの産生が低下し,子宮内膜が剥離し,脱落して月経となる。月経は,典型的な周期では排卵後14日で起こる。

正常な月経周期

この図は正常な月経周期に生じる,下垂体ゴナドトロピン,エストラジオール(E2),プロゲステロン(P)および子宮内膜の理想的な周期的変化を示している。

このシステムの一部に機能障害が生じると,排卵障害が起こる;ゴナドトロピン刺激によるエストロゲン産生および子宮内膜の周期的変化が阻害されて無排卵となり,月経血の排出が起こらないことがある。排卵障害は無月経の最も一般的な原因であり,特に続発性無月経においてはこれが当てはまる。

しかしながら,性器の解剖学的異常(例,先天異常による流出路閉塞,子宮腔癒着症[アッシャーマン症候群])により正常なホルモン刺激にもかかわらず正常な月経が妨げられる場合などのように,排卵が正常でも無月経が起こりうる。

無月経の病因

無月経は以下のようにいくつかの異なる基準に基づいて分類できる:

  • 原発性または続発性

  • 性腺形成不全,解剖学的,または内分泌学的

性腺形成不全および生殖器の先天異常は原発性無月経の原因となる。

続発性無月経は,月経機能を妨げるまたは月経血流出路を閉塞する後天性の生殖器の解剖学的異常によって引き起こされることがある。

原発性または続発性無月経は内分泌疾患に起因することがある。

遺伝子異常または染色体異常に起因する性腺形成不全(原発性卵巣機能不全の原因となりうる)には以下のものがある:

無月経の解剖学的原因には以下のものがある:

  • 女性生殖器の先天異常(例,腟無形成,処女膜閉鎖症)

  • 後天性の異常(例,アッシャーマン症候群,子宮頸管狭窄症)

一般的な内分泌学的原因には以下のものがある:

  • 体質性の思春期遅発

  • 妊娠(妊娠可能年齢の女性では最も頻度の高い原因)

  • 多嚢胞性卵巣症候群

  • 高プロラクチン血症(例,下垂体腺腫,授乳中の授乳性無月経,または抗精神病薬の使用による)

  • 機能性の視床下部性無月経(例,過度の運動,摂食症,またはストレスによるもの[1])

  • 原発性卵巣機能不全(早発卵巣不全)

  • ホルモン剤(例,経口避妊薬,メドロキシプロゲステロンデポ剤)

プロゲスチン単剤の避妊薬はしばしば無月経を引き起こす。エストロゲン/プロゲスチン混合型避妊薬は,継続的に使用される場合(プラセボピルがない,または数週間毎に薬剤を使用しない期間がない),または長期的に使用される場合(子宮内膜が萎縮する場合),無月経を引き起こす可能性がある。

その他の内分泌学的原因は受容体または酵素が関係する疾患(例,完全型アンドロゲン不応症,5α還元酵素欠損症)である。

排卵障害による無月経

排卵障害による無月経は通常は続発性であるが,排卵が始まらない場合(例,遺伝性疾患による)には原発性無月経の可能性がある。排卵が始まらないと,通常は思春期遅発となり,第二次性徴の発達に異常がみられる。Y染色体を有する遺伝性疾患では,卵巣胚細胞腫瘍のリスクが上昇する。

最も頻度の高い排卵障害の原因視床下部-下垂体-卵巣系の障害に関連するものである。例として以下のものがある:

  • 視床下部機能障害(特に機能性の視床下部性無月経)

  • 下垂体機能障害

  • 原発性卵巣機能不全(早発卵巣不全)

  • アンドロゲン過剰を起こす内分泌疾患(特に,多嚢胞性卵巣症候群

視床下部機能障害によりGnRH産生が減少することがあり,それがゴナドトロピン産生の減少につながる。1つの一般的な原因は,食事制限または激しい運動によるエネルギー摂取量の不足である。視床下部機能障害による無月経の女性では,レプチン(脂肪細胞が産生する食欲抑制ホルモン)の血清中濃度が低下しており,その低値がゴナドトロピン産生減少の一因になる可能性がある(2)。

中枢神経系-視床下部-下垂体-性腺系

卵巣ホルモンは,他の組織(例,骨,皮膚,筋肉)に直接的および間接的な作用を及ぼす。

FSH = 卵胞刺激ホルモン,GnRH = ゴナドトロピン放出ホルモン,LH = 黄体形成ホルモン。

表&コラム
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生殖器の異常による無月経

患者に月経機能に影響を及ぼす異常や月経血流出路を閉塞する異常がある場合にも,無月経が生じることがある。これらの病態を有する患者の多くでは生殖内分泌機能は正常であり,排卵を伴う月経周期を有することがある。

生殖器の異常による無月経の最も一般的な原因としては以下のものがある:

  • 月経血流出路を閉塞する性器の先天性解剖学的異常

  • 女性生殖器の後天性異常(例,アッシャーマン症候群,子宮頸管狭窄症)

表&コラム
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閉塞性の異常は原発性無月経を引き起こし,ホルモン機能は通常正常である。このような閉塞により以下を起こす可能性がある:

  • 腟留血症(腟における月経血の貯留)から生じる腟の膨隆

  • 子宮留血症(子宮内への血液の貯留):骨盤内腫瘤または子宮頸部の膨隆として認識される子宮の増大を引き起こす

卵巣機能は正常であるため,外性器の発達および他の第二次性徴は正常に起こる。一部の先天性疾患(例,腟形成不全や腟中隔を伴うもの)では尿路および骨格の異常も生じる。

子宮に対する器具操作後の子宮腔癒着症(アッシャーマン症候群)など,一部の後天性の解剖学的異常は続発性排卵性無月経を引き起こす。

病因論に関する参考文献

  1. 1.Gordon CM, Ackerman KE, Berga SL, et al: Functional hypothalamic amenorrhea: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline.J Clin Endocrinol Metab 102 (5):1413–1439, 2017.doi: 10.1210/jc.2017-00131

  2. 2.Bouzoni E, Perakakis N, Mantzoros CS: Circulating profile of activin-follistatin-inhibin axis in women with hypothalamic amenorrhea in response to leptin treatment.Metabolism 113:154392, 2020.doi: 10.1016/j.metabol.2020.154392 Epub 2020 Oct 10.

無月経の評価

初経がなく,以下の基準のいずれかを満たした女児には,原発性無月経に関する評価を行う:

  • 年齢が13歳で,思春期の徴候(例,乳房の発達,成長スパート)がみられない

  • Thelarche(乳房発育の開始)から3年経過している

  • 年齢が15歳である(正常な成長と第二次性徴の発達がみられる場合)

過去に月経がみられ,以下に該当する妊娠可能年齢の女児および女性には,続発性無月経に関する評価を行うべきである:

  • 以前の月経周期が規則的であった場合には3カ月以上,または以前の月経周期が不規則であった場合には6カ月以上にわたり月経周期がみられない(1)

  • 月経の回数が年9回未満であるか,周期が38日を超えている(希発月経)

  • 月経パターン(頻度,量,期間)の持続的な変化が新たにみられた

病歴

現病歴の聴取では,以下のような月経機能に関する質問を含めるべきである(正常な月経パラメータの表を参照 [2]):

  • 最終月経の初日

  • 周期の頻度

  • 過去3~12カ月の周期の規則性および今まで月経が規則的であったことがあるか

  • 出血の期間

  • 出血量

表&コラム
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関連する症状または因子に関する質問として以下のものがある:

  • 月経に著しい不快感を伴うか。(まれに,不快感が器質的異常の徴候であることがある。)

  • 周期的な乳房圧痛や気分変化(モリミナ症状)はあるか(これらがない場合,周期的な月経ではなく,異常子宮出血の徴候である可能性がある)。

  • 患者の食習慣および運動習慣はどのようなものか。

青年および一部の若年患者については,以下のような思春期発達に関する質問を含めるべきである:

  • 初経はあったか(原発性無月経と続発性無月経の鑑別のため),あったなら初経時の年齢。

  • 成長と発達のマイルストーンは何歳でみられたか。

  • 思春期の変化(例,乳房の発達,成長スパート,腋毛および陰毛)はみられたか。

システムレビュー(review of systems)では,以下のような可能性のある原因を示唆する症状を対象に含めるべきである:

既往歴の聴取では,以下の危険因子に注意すべきである:

  • 機能性の視床下部性無月経(ストレス;慢性疾患;新規の薬剤;最近の体重,食事,運動の強度の変化;および摂食症の既往または現在の症状など)

  • 子宮腔癒着症(アッシャーマン症候群)(頸管拡張・内膜掻爬の既往がある患者[特に子宮感染症も有していた場合],子宮内膜アブレーション,子宮内膜炎,産科的損傷,子宮手術の既往がある患者で起こりうる)

薬歴には,現在または過去の薬剤についての以下のような具体的な質問を含めるべきである:

  • ドパミンに影響を与える薬剤(例,降圧薬,抗精神病薬,オピオイド,三環系抗うつ薬,抗てんかん薬)

  • がん化学療法(例,ベンダムスチン,シクロホスファミド,イホスファミドなどのアルキル化薬;ブスルファン;クロラムブシル)

  • 男性化を起こしうるホルモン(例,アンドロゲン,高用量のアンドロゲン作用のあるプロゲスチン,OTC医薬品のタンパク質同化ステロイド)

  • ホルモン避妊薬

  • コルチコステロイドの全身投与

  • OTC医薬品およびサプリメント(ウシホルモンを含むものがある)

  • オピオイド乱用を含む物質乱用(下垂体ホルモンの分泌に影響を及ぼして,希発月経または無月経につながることがある)

家族歴には,思春期遅発または遺伝性疾患(脆弱X症候群を含む)の症例を含めるべきである。

身体診察

医師はバイタルサインに注意し,BMI(body mass index)を計算すべきである。

思春期発達に異常の可能性があれば,タナー法を用いた乳房および陰毛の発達段階分類を用いて第二次性徴を評価する(性的成熟を参照)。腋毛と陰毛が存在すれば,思春期発来(アドレナーキ[adrenarche])が起こっている。

乳房診察を行い,乳汁漏出症(出産に伴う一時的なもの以外の乳汁分泌)がないか確認すべきである;低倍率の顕微鏡で液体中に脂肪小球を認めることで他のタイプの乳頭分泌物と鑑別できる。

内診を行って,子宮の増大(妊娠または腫瘍が原因である可能性がある),卵巣の増大,および陰核の増大(陰核肥大)がないか確認する。内診の所見はエストロゲンが欠乏しているかどうか判定するためにも有用である。妊娠可能年齢の女性では,牽糸性(糸を引き,伸びる性質)の頸管粘液は通常,十分なエストロゲンを示唆する;腟の粘膜が薄く蒼白で皺の喪失を伴い,6.0を超えるpHは,エストロゲン欠乏を示唆する。女児および一部の若年女性では,診察により性器の解剖学的異常(例,処女膜閉鎖症,腟中隔,腟,子宮頸部,または子宮の形成不全)が検出される可能性がある。腟留血症により処女膜が隆起することがあり,性器の流出路閉塞を示唆する。

一般診察では,男性型多毛症,側頭部の脱毛,ざ瘡,声の低音化,筋肉量の増加,および脱女性化(乳房の大きさの減少や腟萎縮など,それまで正常に発現していた第二次性徴の退行)など男性化の所見に焦点を置く。男性化は,副腎または卵巣によるアンドロゲン産生の増加に起因する。一部の家系によくみられる多毛症(四肢,頭部,背部の過剰な発毛)を,上唇上部,顎,乳房の間に生じる過度の体毛を特徴とする真の男性型多毛症と鑑別する。

黒色表皮腫による皮膚の黒い斑点は,多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)または糖尿病の徴候である可能性がある。

医師は,神経性やせ症を示唆する低体温症,徐脈,低血圧,および皮下脂肪減少がないか,また過食症を示唆する歯の酸蝕,口蓋病変,咽頭反射の減弱,結膜下出血,および手背の胼胝を伴う手の微妙な変化(頻回の嘔吐による)がないか確認すべきである。

警戒すべき事項(Red Flag)

無月経の患者では,以下の所見は特に注意が必要である:

  • 思春期の遅れ

  • 男性化

  • 視野欠損

  • 嗅覚障害(嗅覚脱失)

  • 自発性の乳白色の乳頭分泌物

  • 体重の有意な増加または減少

パール&ピットフォール

  • 正常な第二次性徴のみられる女児や妊娠可能年齢の女性が無月経である場合,さらなる評価に進む前に妊娠検査を行う。

所見の解釈

病歴および身体所見から無月経の病因が(ときに臨床検査を行う前から)示唆されることがある(無月経の原因を示唆する病歴または所見の表を参照)。

原発性無月経では,正常な第二次性徴があれば通常ホルモン機能は正常であり,無月経は通常排卵性で,典型的には性器の先天性閉塞による。異常な第二次性徴を伴う原発性無月経は,通常は排卵障害が原因である(例,遺伝性疾患による)。

続発性無月経では,臨床所見が機序を示唆することがある:

  • 乳汁漏出は高プロラクチン血症(例,下垂体機能障害,特定の薬物の使用)を示唆する;視野欠損と頭痛も存在する場合は,下垂体腫瘍を考慮すべきである。

  • エストロゲン欠乏の症状と徴候(例,ホットフラッシュ,盗汗,腟の乾燥または萎縮)は原発性卵巣機能不全(早発卵巣不全)または機能性の視床下部性無月経(例,過度の運動,低体重,または低体脂肪による)を示唆する。

  • 男性化および陰核肥大はアンドロゲン過剰(例,多嚢胞性卵巣症候群,アンドロゲン産生腫瘍,クッシング症候群,特定薬物の使用)を示唆する。BMI高値や黒色表皮腫,また両方を認める患者では,多嚢胞性卵巣症候群の可能性が高い。

表&コラム
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検査

病歴と身体診察は検査の方向付けに役立つ。

原発性無月経へのアプローチ(原発性無月経の評価のアルゴリズムを参照)については続発性無月経のもの(続発性無月経の評価のアルゴリズムを参照)とは異なるが,普遍的に受け入れられている特定の一般的なアプローチやアルゴリズムは存在しない。

原発性無月経と正常な第二次性徴のみられる患者では,検査は生殖路に先天性閉塞がないか調べる骨盤内超音波検査から始めるべきである。異常が同定されれば,MRIが必要な場合がある。

排卵が始まっている可能性がある場合は,たとえ初経前でも,妊娠検査が必要である。妊娠は性交歴または月経歴に基づいて除外すべきではない。ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニットは,高感度の尿検査または血清検査で測定すべきである。月経予定日の数日前およびしばしば受胎の数日後という早期に行われても尿検査の結果は通常正確である。市販の検査薬には感度および精度が低いものもある。

原発性無月経の評価[a]

[a]正常値

  • DHEAS:250~300ng/dL(0.7~0.8μmol/L)

  • FSH:5~20IU/L

  • LH:5~40IU/L

  • 核型(女性):46,XX

  • プロラクチン:50ng/mL(以下参照)

  • テストステロン:20~80ng/dL(0.7~2.8nmol/L)

これらは典型的な数値であるが,正常範囲は検査施設により異なる場合がある。

プロラクチン50~100ng/mLは軽度の上昇とみなされ,通常は薬剤の使用によるものである。プロラクチン > 100ng/mLは上昇とみなされ,腫瘍による可能性がより高い。

[b]FSH値を測定する際,またはFSH値が曖昧な場合にLH値を測定する医師もいる。

[c]原発性無月経と正常な第二次性徴のみられる患者では,検査は生殖路に先天性閉塞がないか調べる内診および骨盤内超音波検査から始めるべきである。

[d]体質的な発育や思春期の遅れの可能性がある。

[e]可能性のある診断として,機能性視床下部性慢性無排卵および遺伝性疾患(例,先天性ゴナドトロピン放出ホルモン欠損症,プラダー-ウィリー症候群)などがある。

[f]可能性のある診断として,クッシング症候群,外因性アンドロゲン,先天性副腎性器症候群,多嚢胞性卵巣症候群などがある。

[g]可能性のある診断として,ターナー症候群およびY染色体の存在を特徴とする疾患などがある。

[h]陰毛はまばらなことがある。

DHEAS = デヒドロエピアンドロステロン硫酸,FSH = 卵胞刺激ホルモン,LH = 黄体形成ホルモン。

続発性無月経の評価*

*正常値

  • DHEAS:250~300ng/dL(0.7~0.8μmol/L)

  • FSH:5~20IU/L

  • 核型(女性):46,XX

  • プロラクチン:50ng/mL(以下参照)

  • テストステロン:20~80ng/dL(0.7~2.8nmol/L)

これらは典型的な数値であるが,正常範囲は検査施設により異なる場合がある。

プロラクチン50~100ng/mLは軽度の上昇とみなされ,通常は薬物有害作用によるものである。プロラクチン > 100ng/mLは上昇とみなされ,腫瘍による可能性がより高い。

† FSH値とLH値を同時に測定する医師もいる。

‡ 医師は,Y染色体および脆弱X症候群の有無を調べるべきである(FMR1遺伝子の前変異)。

DHEAS = デヒドロエピアンドロステロン硫酸,FSH = 卵胞刺激ホルモン,LH = 黄体形成ホルモン,PCOS = 多嚢胞性卵巣症候群,TSH = 甲状腺刺激ホルモン。

一般的に行われる追加の血液検査(特定の病因を除外するため)としては以下のものがある:

  • 卵胞刺激ホルモン(卵巣機能不全);高値であれば毎月の測定を少なくとも2回繰り返すべきである

  • 甲状腺刺激ホルモン(甲状腺疾患)

  • プロラクチン(高値[高プロラクチン血症]の場合は,再測定すべきである)

  • 血清総テストステロンまたはデヒドロエピアンドロステロン硫酸(PCOSまたは男性型多毛症もしくは男性化のその他の原因)

卵胞刺激ホルモン(FSH)高値を伴う無月経(高ゴナドトロピン性性腺機能低下症)は卵巣機能障害を示唆する。FSH低値を伴う無月経(低ゴナドトロピン性性腺機能低下症)は視床下部または下垂体の機能障害を示唆する。

テストステロンやDHEAS値の軽度の上昇はPCOSを示唆するが,これらの値は視床下部や下垂体の機能障害がある女性で上昇することがあり,また,多毛のPCOSの女性では正常である場合もある。値が上昇する原因は,血清黄体形成ホルモン(LH)を測定することで明らかになる可能性がある。多嚢胞性卵巣症候群では,血中LH値が上昇していることが多く,LHのFSHに対する比率が高まっている。

症状や徴候が基礎疾患を示唆する場合には,特異的な検査の適応となることがある。例えば,患者に腹部の皮膚線条,満月様顔貌,野牛肩(buffalo hump),中心性肥満および細い四肢がある場合,クッシング症候群の検査を行うべきである。頭痛および視野欠損,または下垂体機能障害の所見のある患者では脳MRIが必要である。臨床的評価が慢性疾患を示唆する場合には,肝機能および腎機能の検査を行い,赤血球沈降速度(赤沈)を測定する。

プロゲスチン負荷試験

患者に続発性無月経を認め,プロラクチンとFSH値が正常で甲状腺機能も正常であり,男性化がみられない場合,エストロゲンの状態の評価を試みるためにプロゲスチンの試験的投与を行うことができる。エストロゲン値が十分であれば,1コースのプロゲスチン投与により,プロゲスチン中止後に消退出血が誘発されるはずである(プロゲスチン負荷試験;progestin withdrawal testとも呼ばれる)。

プロゲスチン負荷試験はメドロキシプロゲステロン5~10mg,経口,1日1回,または他のプロゲストーゲン7~10日間投与から始める。最終投与から:

  • 数日以内に出血が起こればエストロゲン値は十分であり,無月経はおそらく視床下部-下垂体系の機能障害,卵巣機能不全,またはエストロゲン過剰が原因である。

  • 出血が起こらなければ,エストロゲン/プロゲスチン負荷試験を行う。

エストロゲン/プロゲスチン負荷試験

エストロゲン/プロゲスチン負荷試験は,まずエストロゲン(例,結合型ウマエストロゲン1.25mg,エストラジオール2mg)を経口,1日1回,21日間で投与し,その後にメドロキシプロゲステロン10mg,経口,1日1回または他のプロゲストーゲンを7~10日間投与することにより行う。プロゲスチンの最終投与後に出血が起こらなければ,子宮内膜病変(例,アッシャーマン症候群)または流出路閉塞(例,子宮頸管狭窄症)が存在する可能性がある。

しかしながら,これらの異常がない患者でも,長期にわたるエストロゲン/プロゲスチン避妊薬の使用やまれな内分泌疾患(エストロゲン不応症候群[estrogen insensitivity syndrome],エストロゲン抵抗性)が原因で子宮のエストロゲンに対する感受性が低下しているために,出血が起こらないことがある。そのため,確認のためにエストロゲンとプロゲスチンを用いた試験を繰り返してもよい。

この試験投与は数週間を要し,結果が不正確なことがあり,重篤な疾患の診断が有意に遅れる可能性がある;このため下垂体またはその他の脳病変が疑われる場合には,試験投与前や投与中に脳MRIを考慮すべきである。

評価に関する参考文献

  1. 1.Rebar R: Evaluation of amenorrhea, anovulation, and abnormal bleeding [updated, 2018].In Endotext [Internet], edited by KR Feingold, B Anawalt, A Boyce, et al.South Dartmouth (MA), MDText.com Inc, 2000.

  2. 2.Munro MG, Critchley HOD, Fraser IS for the FIGO (International Federation of Gynecology and Obstetrics) Menstrual Disorders Committee): The two FIGO systems for normal and abnormal uterine bleeding symptoms and classification of causes of abnormal uterine bleeding in the reproductive years: 2018 revisions.Int J Gynaecol Obstet 143 (3):393–408, 2018.doi: 10.1002/ijgo.12666 Epub 2018 Oct 10.

無月経の治療

治療は基礎疾患に対して行い,治療により月経はときに再開する。性器の流出路閉塞をもたらす異常の一部は外科的修復が可能である。Y染色体が存在する場合は,卵巣胚細胞腫瘍のリスクが上昇するため両側卵巣摘出が推奨される。

無月経に関連する一般的な問題についても,以下のような治療を要する場合がある:

  • 妊娠を望む場合,排卵誘発

  • エストロゲン欠乏による症状および長期的影響(例,骨粗鬆症,心血管疾患,腟萎縮)に対する治療

  • エストロゲン過剰による症状の治療および長期的影響の管理(例,遷延性出血,持続的または著明な乳房圧痛,子宮内膜増殖症および子宮内膜がんのリスク)

  • 男性型多毛症とアンドロゲン過剰の長期的影響(例,心血管疾患,高血圧)を最小限にする

要点

  • 正常な第二次性徴のみられない原発性無月経は通常,排卵障害が原因である(例,遺伝性疾患による)。

  • 常に病歴ではなく尿または血液検査によって妊娠を除外する。

  • 原発性無月経は続発性無月経とは区別して評価する。

  • 原発性無月経と正常な第二次性徴のみられる患者では,検査は生殖路に先天性閉塞がないか調べる骨盤内超音波検査から始めるべきである。

  • 男性化徴候のみられる患者では,アンドロゲン過剰を引き起こす病態(例,多嚢胞性卵巣症候群,アンドロゲン産生腫瘍,クッシング症候群,特定の薬剤の使用)がないか調べる。

  • エストロゲン欠乏の症候(例,ホットフラッシュ,盗汗,腟の乾燥または萎縮)のみられる患者では原発性卵巣機能不全および機能性の視床下部性無月経の原因になる病態について調べる。

  • 乳汁漏出を認める患者では,高プロラクチン血症をもたらす病態(例,下垂体機能障害,特定の薬剤の使用)がないか調べる。

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