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アミロイドーシス

執筆者:John L. Berk, MD, Amyloidosis Center, Boston University Medical Center;
Vaishali Sanchorawala, MD, Boston University School of Medicine and Boston Medical Center
レビュー/改訂 2023年 5月
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アミロイドーシスは,異常凝集したタンパク質から成る不溶性線維の細胞外蓄積を特徴とする多様な疾患群である。これらのタンパク質は局所に蓄積してほとんど症状を引き起こさない場合もあるが,全身の複数の臓器に蓄積して,重度の多臓器不全をもたらすこともある。アミロイドーシスは原発性の場合と,種々の感染症,炎症,または悪性疾患に続発する場合とがある。診断は罹患組織の生検によるが,アミロイド原性タンパク質の病型の判別には種々の免疫組織学的および生化学的手法が用いられる。治療はアミロイドーシスの病型によって異なる。

本ページのリソース

アミロイド線維は,正常では可溶性であるものが凝集してオリゴマーを経て不溶性線維となったミスフォールディングタンパク質で構成される。こうしたミスフォールディングと凝集(アミロイド原性タンパク質)を起こしやすい正常(野生型)タンパク質や変異タンパク質がいくつかあり,そのため,アミロイドーシスには多様な原因と病型が存在する。

アミロイド沈着物は,X線回折で同定可能な,コンゴレッド染色で陽性となるβシート構造を形成する微小(直径約10nm)な不溶性線維で構成される。この沈着物には,線維状のアミロイドタンパク質に加えて血清アミロイドP成分およびグリコサミノグリカンも含まれる。

アミロイド沈着物は,ヘマトキシリン-エオジン染色でピンク色に染まり,また,PAS(過ヨウ素酸シッフ)染色またはアルシアンブルー染色で染まる炭水化物成分を含有するが,最大の特徴として,コンゴレッド染色後に偏光顕微鏡下でアップルグリーンの複屈折がみられる。剖検による観察では,罹患臓器は蝋様に見える場合がある。

アミロイドーシスの発生には,アミロイド原性タンパク質の産生のほかに,おそらくは,こうしたミスフォールディングタンパク質の除去機構の破綻もあると考えられる。アミロイド沈着物は,それ自体は代謝的に不活性であるが,臓器の構造および機能を物理的に妨げる。しかしながら,アミロイド原性タンパク質が線維化する前の段階のオリゴマーには,直接的な細胞毒性を有するものもあり,病態発生機序の重要な構成要素である。

アミロイドーシスの病因

全身性アミロイドーシスでは,循環血液中のアミロイド原性タンパク質が多様な臓器に沈着物を形成する。全身性アミロイドーシスの主な病型として以下のものがある:

β2ミクログロブリンの凝集により引き起こされるアミロイドーシスは,長期間血液透析を行っている患者に生じる場合があるが,発生率は最新の高流量透析膜の使用に伴って低下している。β2ミクログロブリンアミロイドーシスには,該当する遺伝子の変異に起因するまれな遺伝性の病型がある。

限局性アミロイドーシスは,循環血液中のタンパク質ではなく,罹患臓器内で局所的にアミロイド原性タンパク質(ほとんどの場合,免疫グロブリンの軽鎖)が産生されて沈着することで引き起こされると考えられる。頻度が高い発生部位は,中枢神経系(例,アルツハイマー病),皮膚,上気道,下気道,肺実質,膀胱,眼,乳房などである。

ALアミロイドーシス(原発性アミロイドーシス)

ALアミロイドーシスの原因は,単クローン性形質細胞またはその他のB細胞性リンパ増殖性疾患を有する患者において,アミロイド原性の免疫グロブリン軽鎖が過剰産生されることである。軽鎖は,非線維性組織沈着物(すなわち,軽鎖沈着症)を形成することもある。まれに,免疫グロブリンの重鎖がアミロイド線維を形成する(AHアミロイドーシスと呼ばれる)。

アミロイドの一般的な沈着部としては,皮膚,神経,心臓,消化管(舌を含む),腎臓,肝臓,脾臓,血管などがある。通常,骨髄で軽度の形質細胞増加がみられ,多発性骨髄腫に類似するが,真の多発性骨髄腫(溶骨性病変,高カルシウム血症,尿細管円柱,貧血を伴う)を有している患者はほとんどいない。しかし,多発性骨髄腫患者の約10~20%はALアミロイドーシスを発症する。

AFアミロイドーシス(家族性アミロイドーシス)

AFアミロイドーシスの原因は,凝集しやすい変異型の血清タンパク質(通常,肝臓により豊富に産生されるタンパク質)をコードする遺伝子の遺伝である。

AFアミロイドーシスの原因となりうる血清タンパク質としては,トランスサイレチン(TTR),アポリポタンパク質A-I,アポリポタンパク質A-II,リゾチーム,フィブリノーゲン,ゲルソリン,シスタチンCなどがある。家族性と推測されている病型は,血清タンパク質のLECT2(leukocyte chemotactic factor 2)が原因物質であるが,この病型に関わる特定の遺伝子変異の存在は明確には実証されていない。

AFアミロイドーシスのうち最も頻度の高い病型は,ATTRアミロイドーシス(amyloidosis caused by TTR:ATTR)である。TTR遺伝子の130を超える変異とアミロイドーシスとの関連が報告されている。最も頻度の高い変異であるV30Mは,ポルトガル,スウェーデン,ブラジル,および日本でよくみられ,V122I変異はアフリカ系アメリカ人およびカリブ系黒人の約4%にみられる。疾患浸透率と発症年齢には大きな幅がみられるが,家族内および民族集団内では一貫している(1)。

ATTRアミロイドーシスは,末梢感覚神経障害,自律神経性ニューロパチー慢性腎臓病,および心筋症を引き起こす。一般的に他の神経疾患の症候に先立って手根管症候群が発生する。網膜上皮から変異型TTRが産生されるために硝子体沈着が起きることがあり,また,脈絡叢で変異型TTRが産生されることで軟膜に沈着が起きることもある。心臓へのTTR沈着の臨床像として心筋症が前面に出ている場合は,トランスサイレチンアミロイド心筋症(ATTR-CM)と呼ばれる。

ATTRwtアミロイドーシス(老人性全身性アミロイドーシス)

ATTRwtアミロイドーシスは,基本的に心臓を標的とする野生型TTRが凝集および沈着することにより生じる。

ATTRwtアミロイドーシスは,高齢者における浸潤性心筋症の原因としての認識が高まっている。経カテーテル大動脈弁置換術を受ける大動脈弁狭窄症患者の約16%(2)と駆出率が保持された心不全(HFpEF)で入院した患者の13%がトランスサイレチンアミロイド心筋症を合併しており,その場合は,心臓に沈着しているTTRが野生型であることを明示するためにwATTR-CMと呼ばれる(3)。手根管症候群や上腕二頭筋腱断裂,肩腱板断裂,脊柱管狭窄症などのATTRwtアミロイドによる軟部組織異常が,浸潤性心筋症の臨床症状が出現する何年も前に発症することがある。

ATTRwtアミロイドーシスの発生につながる遺伝因子やエピジェネティック因子は不明である。ATTRwtおよびALアミロイドーシスはどちらも心筋症を引き起こすことがあり,また,この年齢層の患者ではアミロイド原性単クローン性免疫グロブリン血症が存在する場合もあるため,ATTRwtアミロイドーシスの患者に誤って化学療法(ALアミロイドーシスに対して使用する)を施行することがないよう,アミロイドの病型を正確に判別することが不可欠である。

AAアミロイドーシス(続発性アミロイドーシス)

この病型は,いくつかの感染症,炎症性疾患,および悪性疾患に続発し,急性期反応物質である血清アミロイドAの各アイソフォームの凝集によって引き起こされる。

一般的に原因となる感染症としては以下のものがある:

素因となる炎症性疾患としては以下のものがある:

これらの疾患で産生されるまたは腫瘍細胞により異所性に分泌される炎症性サイトカイン(例,インターロイキン1[IL-1],腫瘍壊死因子[TNF],IL-6)は,肝臓で血清アミロイドA(SAA)の合成増加を引き起こす。

AAアミロイドーシスの好発部位は,腎臓,脾臓,肝臓,副腎,およびリンパ節である。心臓または末梢および自律神経の障害が疾患経過の後期に生じる。

限局性アミロイドーシス

脳以外に生じる限局性アミロイドーシスは,クローン性免疫グロブリン軽鎖の沈着が原因である場合が最も多く,脳内では,アミロイドβタンパク質が原因である場合が最も多い。

限局性のアミロイド沈着は,典型的には,気道および肺組織,膀胱および尿管,皮膚,乳房,眼を障害する。まれに,局所的に産生されるその他のタンパク質(皮膚に局所的な沈着物を形成するケラチンの各アイソフォームなど)がアミロイドーシスを引き起こす。消化管,気道,および膀胱の粘膜関連リンパ組織で産生されるクローン性免疫グロブリン軽鎖は,これらの臓器における限局性のALアミロイドーシスを引き起こす場合がある。

アミロイドβタンパク質の脳内沈着は,アルツハイマー病または脳アミロイド血管症の一因となる。中枢神経系で産生されるその他のタンパク質が,ミスフォールディング,凝集,およびニューロンの損傷を生じる場合があり,神経変性疾患(例,パーキンソン病ハンチントン病)を引き起こす。

病因論に関する参考文献

  1. 1.Buxbaum JN, Ruberg FL: Transthyretin V122I (pV142I)* cardiac amyloidosis: an age-dependent autosomal dominant cardiomyopathy too common to be overlooked as a cause of significant heart disease in elderly African Americans. Genet Med 19(7):733-742, 2017.doi:10.1038/gim.2016.200

  2. 2.Fabbri G, Serenelli M, Cantone A, et al: Transthyretin amyloidosis in aortic stenosis: clinical and therapeutic implications. Eur Heart J Suppl 23(Suppl E):E128-E132, 2021.doi:10.1093/eurheartj/suab107

  3. 3.Magdi M, Mostafa MR, Abusnina W, et al: A systematic review and meta-analysis of the prevalence of transthyretin amyloidosis in heart failure with preserved ejection fraction. Am J Cardiovasc Dis 12(3):102-111, 2022.PMID: 35873185

アミロイドーシスの症状と徴候

全身性アミロイドーシスの症状および徴候は非特異的であり,しばしば診断の遅れにつながる。進行性の多臓器疾患がみられる患者では,アミロイドーシスを強く疑うべきである。

腎臓でのアミロイド沈着は,通常は糸球体膜に生じてタンパク尿を引き起こすが,約15%の症例では尿細管が侵され,微量のタンパク尿を伴う高窒素血症を来す。こうした経過から,顕著な低アルブミン血症,浮腫,および全身浮腫を伴うネフローゼ症候群や,末期腎不全に進展する場合がある。

肝病変は,無痛性の肝腫大を引き起こし,肝腫大は巨大になることもある。肝機能検査では通常,アルカリホスファターゼの上昇とその後ビリルビンの上昇がみられ,肝内胆汁うっ滞が示唆されるが,黄疸はまれである。ときに門脈圧亢進症が生じ,その結果食道静脈瘤および腹水を来す。

気道および喉頭病変は,呼吸困難,嗄声,喘鳴,喀血,または気道閉塞を引き起こす。

心筋への浸潤拘束型心筋症を引き起こし,これにより最終的には拡張機能障害および心不全を来す;心ブロックまたは不整脈が生じることもある。低血圧がよくみられる。

足趾および手指の錯感覚を伴う末梢神経障害は,ALおよびATTRアミロイドーシスの最初の臨床像であることが多い。自律神経性ニューロパチーにより,起立性低血圧,勃起障害,発汗異常,尿閉,および消化管蠕動障害を来すことがある。

脳アミロイド血管症は自発的な脳出血を引き起こすことが最も多いが,短い一過性の神経症状がみられる患者もいる。

消化管アミロイドは,小腸,大腸,および食道の蠕動異常を引き起こすことがある。胃アトニー,吸収不良,出血,または偽閉塞も生じることがある。巨舌症はALアミロイドーシスでよくみられる。

軟部組織のアミロイド病変は,特徴的にATTRwtアミロイドに関連する心筋症の臨床的発現に先行する。軟部組織のアミロイド病変の臨床像としては,手根管症候群,弾発指,上腕二頭筋腱断裂,脊柱管狭窄症などがある。

甲状腺アミロイドーシスでは,橋本病に似た,左右対称で圧痛のない硬い甲状腺腫が生じることがある。その他の内分泌障害も生じる可能性がある。

肺病変(大半はALアミロイドーシスでみられる)は,巣状の肺結節および肺嚢胞,気管気管支病変,胸水,またはびまん性の肺胞隔壁(間質)沈着を特徴とする。

アミロイドによる硝子体混濁と両側性の瞳孔縁不整が,いくつかの遺伝性アミロイドーシスで生じる。

その他の症状として皮下出血があり,眼窩周囲に起こることが多く(パンダの目徴候[raccoon eyes]),血管内へのアミロイド沈着が原因である。アミロイド沈着により血管が脆弱になり,くしゃみや咳などによる軽微な外傷後に破裂することがある。

アミロイドーシスの診断

  • 生検

  • アミロイドの病型の判別

  • 臓器病変の検査

生検

アミロイドーシスの診断は,罹患病変における線維性の沈着物を証明することにより行われる。腹部皮下脂肪の吸引では,ALアミロイドーシス患者の約80%でアミロイド沈着が検出されるが,ATTRwtアミロイドーシス患者では陽性となるのは25%未満である(1)。脂肪生検の結果が陰性であった場合は,臨床的に障害されている臓器の生検を行うべきである。腎生検および心生検の診断感度は,これらの臓器が臨床的に障害されている場合はほぼ100%である。組織切片をコンゴレッドで染色して,偏光顕微鏡で特徴的な複屈折を観察する。心臓または腎臓の生検検体を電子顕微鏡下で観察することで,枝分かれのない10nmの線維も確認することができる。

ALアミロイドーシスが除外されれば,骨に集積するトレーサーを用いた核医学検査により,心生検を行わずにATTRアミロイド心筋症を診断することができる。

アミロイドの病型の判別

生検によりアミロイドーシスを確認したら,種々の手法を用いてその病型を判別する。アミロイドーシスの一部の病型には,免疫組織化学法または蛍光抗体法が診断に有用なことがあるが,偽陽性が生じることもある。その他の有用な手法としては,AFアミロイドーシスに用いられる遺伝子配列決定や,アミロイド沈着物内のタンパク質の変異体を精密に同定するための質量分析法による生化学的同定(感度および特異度が最も高い方法)などがある。

ALアミロイドーシスが疑われた場合は,基礎に形質細胞疾患がないか評価すべきであり,方法としては血清遊離免疫グロブリン軽鎖の定量,免疫固定電気泳動を用いた血清中または尿中単クローン性軽鎖の定性的検出(血清タンパク質電気泳動および尿タンパク質電気泳動は,ALアミロイドーシスを有する患者では感度が低い),および骨髄生検とフローサイトメトリーまたは免疫組織化学的検査を用いて,形質細胞がクローン性に増殖していることを証明すべきである。

クローン性の形質細胞が10%を超える患者では,溶骨性病変,貧血,腎機能不全,および高カルシウム血症のスクリーニングなどを行い,多発性骨髄腫の診断基準を満たすかどうか確認すべきである。

臓器病変

まず非侵襲的検査で臓器障害のスクリーニングを行う:

  • 腎臓:尿検査,血清BUN,クレアチニン,およびアルブミンの測定,推算糸球体濾過量(eGFR),ならびに24時間蓄尿によるタンパク質電気泳動(UPEP)

  • 肝臓:肝機能検査

  • 肺:胸部X線,胸部CT,および肺機能検査

  • 心臓:心電図検査および脳(B型)ナトリウム利尿ペプチド(BNP)またはN-terminal-pro BNP(NT-pro-BNP)およびトロポニンなどのバイオマーカーの測定

心電図上で低電位(心室の肥厚により引き起こされる)および/またはリズム異常を認めれば,心障害が示唆される可能性がある。心電図所見と心筋バイオマーカーに加えて症状からも心障害が示唆される場合は,心エコー検査を行い,拡張期の弛緩と長軸方向ストレイン(global longitudinal strain)(左室収縮機能の測定尺度)を測定し,両室肥大のスクリーニングを行う。不明瞭な症例では,心臓MRIを施行し,特徴的な所見である遷延する心内膜下のガドリニウム造影効果を検出する。心臓のテクネチウムピロリン酸による核医学検査は,ATTRアミロイドに関連する心疾患の検出を改善し,血液検査でALアミロイドーシスが除外されれば,心筋生検を回避することができる(2, 3)。

診断に関する参考文献

  1. 1.Aimo A, Emdin M, Musetti V, et al: Abdominal Fat Biopsy for the Diagnosis of Cardiac Amyloidosis. JACC Case Rep 2(8):1182-1185, 2020.doi:10.1016/j.jaccas.2020.05.062

  2. 2.Gillmore JD, Maurer MS, Falk RH, et al: Nonbiopsy diagnosis of cardiac transthyretin amyloidosis.Circulation 133(24):2404–2412, 2016.

  3. 3.Maurer MS, Bokhari S, Damy T, et al: Expert consensus recommendations for the suspicion and diagnosis of transthyretin cardiac amyloidosis.Circ Heart Fail 12(9):e006075, 2019.

アミロイドーシスの治療

  • 支持療法

  • 病型特異的な治療

アミロイドーシスでは大半の病型に対して特異的治療法があるが,現在も研究段階にある治療法もある。全身性アミロイドーシスのいずれの病型に対しても,支持療法の施行が症状の緩和および生活の質の向上に役立つ可能性がある。

支持療法

支持療法は侵された器官系を対象とする:

  • 腎臓:ネフローゼ症候群と浮腫がみられる患者は,塩分・水分制限,およびループ利尿薬により治療すべきであり,持続的なタンパク質喪失があるため,タンパク質の摂取は制限すべきではない。腎移植は,基礎疾患の経過がコントロールされているときの1つの選択肢であり,他の腎疾患と比べて長期の生存期間を得ることが可能である。

  • 心臓:心筋症がみられる患者は,塩分・水分制限とループ利尿薬により治療すべきである。心不全に対するその他の薬剤(ジゴキシン,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,カルシウム拮抗薬,β遮断薬など)は,忍容性が不良であるため禁忌である。重度の心病変を有するALまたはATTRアミロイドーシス患者のうち慎重に選択された症例では,心臓移植が成功を収めている。移植された心臓での再発を予防するため,ALアミロイドーシス患者にはクローン性形質細胞疾患を標的とする積極的な化学療法を施行する必要があり,症状を伴うATTRアミロイドポリニューロパチーまたは心筋症の患者には抗TTR療法を考慮すべきである。

  • 消化管:下痢がみられる患者にはロペラミドが有益となる場合がある。早期満腹感および胃内容物貯留がみられる患者には,メトクロプラミドが有益な場合がある。

  • 神経系:末梢神経障害がみられる患者は,ガバペンチン,プレガバリン,またはデュロキセチンにより疼痛が緩和される場合がある。

は,高用量ミドドリンでしばしば改善する;この薬剤は高齢男性では尿閉を引き起こす可能性があるが,この集団で薬剤使用による合併症としての臥位高血圧が問題となることはまれである。サポートストッキングが有用な場合があり,末梢浮腫,全身浮腫,または心不全がみられない患者では,フルドロコルチゾンを使用できる。難治性の起立性低血圧がある患者では,ミドドリン,フルドロコルチゾン,またはドロキシドパを追加してもよい。

ALアミロイドーシス

ALアミロイドーシスに対しては:

  • 臓器機能を温存し,余命を延長するため,形質細胞に対する治療を速やかに開始することが不可欠である。

多発性骨髄腫に対して使用される薬剤の大半がALアミロイドーシスに対して使用されているが,臓器機能が障害されている場合は,しばしば薬剤の選択,用量,および投与スケジュールの修正が必要になる。

アルキル化薬(例,メルファラン,シクロホスファミド)とコルチコステロイドの併用による化学療法は,便益が示された最初のレジメンであった。高用量のメルファランの静脈内投与と自家造血幹細胞移植の併用は,選択された患者において非常に効果的となる場合がある(1)。

プロテアソーム阻害薬(例,ボルテゾミブ)および免疫調節薬(例,レナリドミド)も効果的となる可能性がある。新たにALアミロイドーシスと診断された患者(NYHAクラスIIIおよびIVの心不全で,N末端プロB型ナトリウム利尿タンパク質[NTproBNP]値 > 8500pg/mL[1003pmol/L]かつeGFR < 20 mL/min/m2の患者は除外)を対象としてモノクローナル抗体ダラツムマブとシクロホスファミド,ボルデゾミブ,およびデキサメタゾンを併用して評価した臨床試験では,過去にない高水準の血液学的奏効率が示された(2)。血液学的反応は,免疫固定電気泳動で測定した血清中および尿中の単クローン性タンパク質濃度とκ/λ比を用いた血清軽鎖濃度に基づいて判定される。ただし,長期生存データは十分ではない。

利用可能な治療はいずれも,ALアミロイドーシスにおけるクローン性B細胞または形質細胞を標的とするものである。ビトラミマブ(birtamimab)やCAEL-101などの抗線維抗体の研究が進められている(3)。

形質細胞は放射線に対する感受性が非常に高いため,限局性のALアミロイドーシスは低線量の外照射療法で治療することができる。

ATTRアミロイドーシス

ATTRアミロイドーシスに対しては:

  • 肝移植

  • 四量体安定化薬

  • 遺伝子サイレンシング薬

肝移植(変異タンパク質が合成されている部位を除去し,正常なTTRを産生する移植肝で置き換える)は,発症時(初期の神経障害があり心病変を伴わない)に施行された場合,特定のTTR変異に対し効果的となる場合がある。疾患経過の後期に肝移植が行われると,野生型TTRタンパク質のミスフォールディングおよび既存のアミロイド沈着部位への沈着により,しばしば進行性のアミロイド心筋症および神経障害につながる。

いくつかの薬剤は,血漿内に循環しているTTR四量体を安定化させ,TTRのミスフォールディングおよび線維形成を阻害し,生活の質を維持しつつ効果的に神経疾患の進行を抑制することが示されている。こうしたTTR安定化薬としては,広く入手可能なジェネリックの抗炎症薬であるジフルニサルや,タファミジスなどがある(4, 5)。

アンチセンスRNAまたはRNA干渉を用いてTTR mRNAの翻訳を阻害するTTR遺伝子サイレンシングは,TTRの血清中濃度を効率的に低下させ,約50%の患者で神経学的予後を改善させ,一部の患者では損傷した神経を修復できると考えられる(6, 7)。遺伝子サイレンシング薬であるパチシラン,イノテルセン(inotersen),およびブトリシランが使用可能である。

第2世代の遺伝子サイレンシング薬であるブトリシランの試験では,家族性アミロイドポリニューロパチー患者の機能的予後が改善することが実証された(8)。別の試験で得られた予備的データからは,遺伝子サイレンシング薬がATTRアミロイドーシス患者における心筋症の治療に効果的である可能性が示唆されている(9)。

ATTRwtアミロイドーシス

ATTRwtアミロイドーシスに対しては:

  • 四量体安定化薬

タファミジスを用いるTTRの安定化は,ATTRまたはATTRwtアミロイド心筋症患者において,全死亡率および心血管関連の入院を減少させることが示されている(5)。ATTRwtアミロイドーシス患者に発生する心筋症と変異型タンパク質を特徴とするATTRアミロイドーシス患者に発生する心筋症に対するTTR遺伝子サイレンシング薬の効果を検討する臨床試験が進行中である(10)。

遺伝性ATTRアミロイドーシスとは異なり,ATTRwtアミロイドーシスの患者では,アミロイド原性タンパク質が構造的に正常なTTRであるため,肝移植は効果的ではない。

AAアミロイドーシス

家族性地中海熱により引き起こされるAAアミロイドーシスでは,コルヒチンの経口投与が効果的である。

AAアミロイドーシスのその他の病型には,基礎にある感染症,炎症性疾患,または悪性腫瘍を標的とした治療を行う。

サイトカインのシグナル伝達を阻害するためにコルヒチン,IL-1阻害薬,IL-6阻害薬,またはTNF阻害薬が用いられることがあり,それにより肝臓での血清アミロイドA(SAA)の産生を促進する炎症過程を軽減することができる。

治療に関する参考文献

  1. 1.Sanchorawala V, Sun F, Quillen K, et al: Long-term outcome of patients with AL amyloidosis treated with high-dose melphalan and stem cell transplantation: 20-year experience.Blood 126: 2345–2347, 2015.doi: 10.1182/blood-2015-08-662726

  2. 2.Kastritis E, Palladini G, Minnema MC, et al: Daratumumab-Based Treatment for Immunoglobulin Light-Chain Amyloidosis. N Engl J Med 385(1):46-58, 2021.doi:10.1056/NEJMoa2028631

  3. 3.Quarta CC, Fontana M, Damy T, et al: Changing paradigm in the treatment of amyloidosis: From disease-modifying drugs to anti-fibril therapy. Front Cardiovasc Med 9:1073503, 2022.doi:10.3389/fcvm.2022.1073503

  4. 4.Berk JL, Suhr OB, Obici L, et al: Repurposing diflunisal for familial amyloid polyneuropathy: a randomized clinical trial.JAMA 310: 2658–2667, 2013.doi: 10.1001/jama.2013.283815

  5. 5.Maurer MS, Schwartz JH, Gundapaneni B, et al: Tafamidis treatment for patients with transthyretin amyloid cardiomyopathy.N Engl J Med 379:1007–1016, 2018.

  6. 6.Adams D, Gonzalez-Duarte A, O'Riordan WD, et al: Patisiran, an RNAi therapeutic, for hereditary transthyretin amyloidosis.N Engl J Med 379:11–21, 2018.

  7. 7.Benson MD, Waddington-Cruz M, Berk JL, et al: Inotersen treatment for patients with transthyretin amyloidosis.N Engl J Med 379:22–31, 2018.

  8. 8.Adams D, Tournev IL, Taylor MS, et al: Efficacy and safety of vutrisiran for patients with hereditary transthyretin-mediated amyloidosis with polyneuropathy: a randomized clinical trial. Amyloid 30(1):1-9, 2023.doi:10.1080/13506129.2022.2091985

  9. 9.Maurer MS, Fontanta MA, Berk JL, et al: Primary results from APOLLO-B, a phase 3 study of patisiran in patients with transthyretin-mediated amyloidosis with cardiomyopathy.Abstract presented at International Symposium of Amyloidosis, September 2022,Heidelberg Germany.

  10. 10.Writing Committee, Kittleson MM, Ruberg FL, et al: 2023 ACC Expert Consensus Decision Pathway on Comprehensive Multidisciplinary Care for the Patient With Cardiac Amyloidosis: A Report of the American College of Cardiology Solution Set Oversight Committee [published correction appears in J Am Coll Cardiol 81(11):1135, 2023]. J Am Coll Cardiol 81(11):1076-1126, 2023.doi:10.1016/j.jacc.2022.11.022

アミロイドーシスの予後

予後はアミロイドーシスの病型および侵された器官系により異なるが,疾患に応じた適切な治療および支持療法を行うことにより,多くの患者で非常に良好な期待余命が得られる。

重度の心筋症を合併したALアミロイドーシスは予後が最も不良であり,生存期間の中央値は1年未満である。無治療のATTRアミロイドーシスは,通常は5~15年以内に末期の心疾患または神経疾患まで進行する。ATTRwtアミロイドーシスは,かつては心臓を侵す全身性アミロイドーシスの中で最も進行が遅い病態と考えられていたが,ATTRwtアミロイドーシスの患者には生検による診断から中央値4年以内に症候性の心不全に進行して死亡する者もいる。

AAアミロイドーシスの予後は,基礎にある感染症,炎症,または悪性疾患に対する治療の有効性に大きく依存する。

要点

  • アミロイドーシスは,特定のミスフォールディングタンパク質が凝集して不溶性の線維となり,それらが臓器に沈着して機能障害を引き起こす疾患群である。

  • ミスフォールディングを起こしやすいタンパク質には多くの種類があり,それらのタンパク質は,遺伝子異常または特定の病態により産生されるタンパク質である場合もあれば,単クローン性の形質細胞やその他のB細胞性リンパ増殖性疾患により産生される免疫グロブリン軽鎖に関連するものである場合もある。

  • アミロイド原性タンパク質によりアミロイドの病型および疾患の臨床経過が決まるが,異なる病型の臨床像が重複する場合もある。

  • 多くの臓器が侵される可能性があるが,心障害は特に予後不良であり,アミロイド心筋症を発症すると,典型的には拡張機能障害,心不全,および心ブロックまたは不整脈に至る。

  • 診断には生検による;アミロイドーシスの病型は,種々の免疫学的検査,遺伝子検査,および生化学的検査により判別される。質量分析法はアミロイドの病型の判別において感度および特異度が最も高い方法である。

  • 適切な支持療法は症状の緩和と生活の質の向上に役立ち,選択された患者には臓器移植が助けになる可能性がある。

  • 基礎疾患の治療を行う;形質細胞またはリンパ球増殖性疾患によるALアミロイドーシスでは,化学療法が非常に効果的となる場合がある;続発性AAアミロイドーシスでは,抗感染症薬および抗炎症薬が役立つ可能性がある。

  • 遺伝性ATTRアミロイドーシスでは,低分子安定化薬と遺伝子サイレンシング薬により神経機能の悪化を抑制ないし改善できる可能性があり,アミロイド心筋症(ATTRまたはATTRwt)の患者では,タファミジスにより全死亡率および心血管関連の入院が減少する。

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