多発性骨髄腫

(骨髄腫症;形質細胞骨髄腫)

執筆者:James R. Berenson, MD, Institute for Myeloma and Bone Cancer Research
Reviewed ByJerry L. Spivak, MD, MACP, Johns Hopkins University School of Medicine
レビュー/改訂 修正済み 2024年 8月
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多発性骨髄腫は,形質細胞の悪性腫瘍で,単クローン性免疫グロブリンを産生し,隣接する骨組織に浸潤し,それを破壊する。一般的な臨床像としては,骨痛や骨折を引き起こす溶骨性骨病変,腎機能不全,高カルシウム血症,貧血,繰り返す感染症などがある。診断には,一般的にMタンパク質(ときに尿中にみられ,血清中に認められない場合があるが,まれに全く認められない場合もある)または軽鎖タンパク尿と骨髄中の過剰な形質細胞を確認することが必要である。最も頻用される特異的治療法としては,従来の化学療法薬の併用やコルチコステロイドのほか,プロテアソーム阻害薬(例,ボルテゾミブ,カルフィルゾミブ,イキサゾミブ)や免疫調節薬(例,レナリドミド,サリドマイド,ポマリドミド),モノクローナル抗体(例,ダラツムマブ,イサツキシマブ,エロツズマブ)などの追加の薬剤などがある。B細胞成熟抗原を標的とした抗体およびT細胞ベースの治療アプローチに効力が示されている。高用量メルファラン投与後の自家末梢血造血幹細胞移植も施行されることがある。

形質細胞疾患の概要も参照のこと。)

米国では,多発性骨髄腫に罹患する生涯リスクは132分の1(0.76%)である(1)。年齢の中央値は約70歳である。黒人の有病率は白人の2倍である。男性にわずかに多い。病因は不明であるが,染色体異常,遺伝因子,放射線,および化学物質が示唆されている。

American Cancer Societyは,2024年の米国では多発性骨髄腫の新規症例数が約35,730例となり,12,540人が死亡すると推定している(1)。生存期間は改善が続いており,最近の報告では生存期間の中央値が10年を超えている(2)。

総論の参考文献

  1. 1.American Cancer Society.Key Statistics About Multiple Myeloma.Atlanta, Ga., American Cancer Society; 2024.

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多発性骨髄腫の病態生理

悪性形質細胞が産生するMタンパク質(単クローン性の免疫グロブリンタンパク質)は,骨髄腫患者の約50~55%でIgG型,約20%でIgA型である(1)。IgG型とIgA型いずれかの産生がみられる患者のうち,40%ではベンスジョーンズタンパク尿もみられるが,これは尿中に認められるκ型またはλ型の単クローン性遊離軽鎖である。患者の15~20%では,形質細胞からベンスジョーンズタンパク質のみが分泌される。IgM型およびIgD型骨髄腫は,それぞれ全症例の約1%を占め,IgD型骨髄腫はアジア系の患者で比較的頻度が高い。IgE型骨髄腫は極めてまれである。

まれに,血中にも尿中にもMタンパク質が認められないこともある。しかしながら,過去に非分泌型多発性骨髄腫と診断されていた患者の多くでは,血清遊離軽鎖測定を行うと単クローン性軽鎖の存在が確認される。

びまん性の骨粗鬆症または孤立性の溶骨性病変がしばしば認められ,その好発部位は骨盤,脊椎,肋骨,大腿骨,上腕骨,および頭蓋である。それらの病変は,増大した形質細胞腫によって骨組織が置換されるため生じる場合と,悪性形質細胞から分泌されるサイトカインによって破骨細胞の活性化と骨芽細胞の抑制が生じて骨喪失が起きるために生じる場合がある。溶骨性病変は,通常多発性である;ときに孤立性の髄内腫瘤がみられることがある。骨量減少が亢進し,高カルシウム血症を来すこともある。

骨外性の孤立性形質細胞腫はまれであるが,いずれの組織にも発生することがあり,特に上気道に多くみられる。

多くの患者で,腎不全が診断時にみられたり,疾患経過中に発生したりする。腎不全の原因には多くのものがあり,特に多いのは,遠位尿細管における軽鎖沈着(骨髄腫関連腎疾患)または高カルシウム血症に起因するものである。

しばしば貧血がみられ,通常は腫瘍細胞による腎疾患または赤血球産生の抑制に起因する。多発性骨髄腫患者の貧血は,鉄欠乏症ビタミンB12欠乏症など,他の無関係の病態が原因である場合もある。

一部の患者では,正常な抗体の欠失やその他の免疫機能障害のために細菌感染に対する感受性が高まる。プロテアソーム阻害薬(例,ボルテゾミブ,イキサゾミブ,カルフィルゾミブ)やモノクローナル抗体(例,ダラツムマブ,エロツズマブ,イサツキシマブ)などの治療法が導入された結果として,ウイルス感染症,特に帯状疱疹も発生する可能性がある。

アミロイドーシスが骨髄腫患者の10%にみられ,最も多いのはλ型Mタンパク質の患者である(2)。

多発性骨髄腫には様々な発現形態がある(多発性骨髄腫の様々な発現形態の表を参照)。

表&コラム
表&コラム

病態生理に関する参考文献

  1. 1.Kyle RA, Gertz MA, Witzig TE, et al.Review of 1027 patients with newly diagnosed multiple myeloma. Mayo Clin Proc 2003;78(1):21-33.doi:10.4065/78.1.21

  2. 2.Ríos-Tamayo R, Krsnik I, Gómez-Bueno M, et al.AL Amyloidosis and Multiple Myeloma: A Complex Scenario in Which Cardiac Involvement Remains the Key Prognostic Factor. Life (Basel).2023;13(7):1518.Published 2023 Jul 6.doi:10.3390/life13071518

多発性骨髄腫の症状と徴候

持続性の骨痛(特に背部または胸郭),腎不全,および繰り返す細菌感染症が初診時に最もよくみられる病態であるが,多くの患者はルーチンの臨床検査で血中総タンパク質値の上昇,タンパク尿,または原因不明の貧血もしくは腎不全が認められることで同定される。

一部の患者では貧血症状が優勢であったり,それらが唯一の評価理由となったりする場合がある一方,少数の患者では過粘稠度症候群の臨床像がみられる。

病的(脆弱性)骨折(すなわち,軽微な外傷や外傷なしに発生する骨折)がよくみられ,椎体圧壊により脊髄圧迫または対麻痺を来すことがある。

末梢神経障害手根管症候群(特にアミロイドーシス患者において),異常出血,および高カルシウム血症の症状(例,多飲,脱水)がよくみられる。

リンパ節腫脹および肝脾腫はまれである。

多発性骨髄腫の診断

  • 血小板数を含めた血算,末梢血塗抹標本,および生化学検査(血中尿素窒素[BUN],クレアチニン,カルシウム,尿酸,乳酸脱水素酵素[LDH])

  • 血清および尿(24時間蓄尿)のタンパク質電気泳動後に免疫固定法;免疫グロブリン定量;血清遊離軽鎖測定

  • X線撮影(全身骨X線検査)とPET-CTまたは全身MRIのいずれか

  • 骨髄検査,従来の細胞遺伝学的検査および蛍光in situハイブリダイゼーション検査(FISH)を含む

多発性骨髄腫は,40歳以上の患者において,原因不明の持続性の骨痛(特に夜間または安静時),その他の典型的症状,または原因不明の臨床検査値異常(例:血中タンパク質または尿タンパクの上昇,高カルシウム血症,腎機能不全,貧血)もしくは病的骨折あるいは溶骨性病変のX線所見が認められた場合に疑われる。

臨床検査による評価としては,ルーチンの血液検査,LDH,血清β2ミクログロブリン,尿および血清の免疫固定およびタンパク質電気泳動,血清遊離軽鎖測定などがある。PET-CTまたは全身MRIはX線よりも骨疾患に対する感度が高いため,患者には全身骨X線検査とこれらの検査も行うべきである。従来の細胞遺伝学的検査とFISH検査とともに骨髄検査も必要である(レビューについては参考文献1および2を参照)。

ルーチンの血液検査としては,血算や生化学検査などがある。貧血は患者の80%にみられ,通常は連銭形成(3~12個の赤血球が積み重なってできた集塊)を伴う正球性正色素性貧血である(3)。白血球数および血小板数は通常正常である。BUN,血清クレアチニン,LDH,β2ミクログロブリン,および血清尿酸の値が上昇することがある。アニオンギャップ低下がときにみられる。診断時に患者の約10%で高カルシウム血症がみられる。

Mタンパク質を同定,定量,分析するため,タンパク質および免疫固定電気泳動を血清検体と24時間蓄尿から濃縮した尿検体で実施する。血清タンパク質電気泳動により,約80~90%の患者でMタンパク質が同定される。残る10~20%の大半は,遊離軽鎖測定で血中に,また尿タンパク質および免疫電気泳動で尿中に検出することができる単クローン性の遊離軽鎖(ベンスジョーンズタンパク質)のみの患者である。診断時に単クローン性タンパク質の存在が明らかでない患者も少数いるが,その一部では,疾患の経過が進むうちに単クローン性タンパク質の所見がみられるようになる。

免疫固定電気泳動では,Mタンパク質の免疫グロブリンの型(IgG,IgA,またはまれなIgD,IgM,IgE)を同定できるほか,血清免疫電気泳動が陰性の場合に軽鎖タンパク質を検出できることも多く,多発性骨髄腫が強く疑われる場合には,たとえ血清検査で陰性でも,免疫固定電気泳動が行われる。

κ/λ比またはinvolved軽鎖とuninvolved軽鎖の差を求める血清遊離軽鎖測定は,診断の確定に役立つほか,治療効果のモニタリングや予後データの収集にも利用できる。

診断が確定しているか可能性が非常に高い場合はβ2ミクログロブリンの血清中濃度を測定し,その値を血清アルブミン値と併せて,国際病期分類基準(多発性骨髄腫の国際病期分類基準改訂版の表を参照)の判定に使用する。β2ミクログロブリンは,全ての細胞の膜上にみられる小さなタンパク質である。その濃度は,腫瘍量および腎機能障害の重症度と直接相関する。

表&コラム
表&コラム

X線検査には全身骨X線検査(頭蓋,長管骨,脊椎,骨盤,および肋骨の単純X線)が含まれる。打ち抜き像を示す溶骨性骨病変またはびまん性の骨粗鬆症が約80%の症例でみられる(3)。骨シンチグラフィーは,通常は役に立たない。全身MRIでは,より詳細な情報が得られ,特定部位の疼痛または神経症状がみられる場合に実施する。PET-CTは,予後情報を得られるほか,孤立性形質細胞腫と多発性骨髄腫の鑑別に役立つ可能性がある。

骨髄穿刺と骨髄生検を施行し,シート状またはクラスター状の形質細胞を明らかにする;この種の細胞の占める割合が10%以上であれば,骨髄腫と診断される。ただし,骨髄病変は斑点状であるため,骨髄腫の患者によっては,検体の形質細胞が10%を下回ることがある。それでも,骨髄中の形質細胞の割合が正常になることはまれである。形質細胞の形態は,合成される免疫グロブリンの型と相関しない。骨髄での染色体検査(例,FISHや免疫組織化学法などの細胞遺伝学的な検査方法を用いる)により,形質細胞に特定の核型異常が明らかになることがあり,それらは治療選択に影響を及ぼす可能性があり,生存期間の差と関連している。

診断ならびに他の悪性疾患(例,転移性の癌腫,リンパ腫白血病)および意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症との鑑別では,典型的に以下のような多くの基準が必要である:

  • クローン性骨髄形質細胞または形質細胞腫

  • 血漿中および/または尿中のMタンパク質

  • 臓器障害(高カルシウム血症,腎機能不全,貧血,または骨病変)

血清Mタンパク質を認める患者では,24時間当たり200mgを超えるベンスジョーンズタンパク尿または血清遊離軽鎖値の異常,溶骨性病変(転移性の悪性腫瘍または肉芽腫性疾患の所見がない),および骨髄中のシート状またはクラスター状の形質細胞により,骨髄腫が示唆される。

診断に関する参考文献

  1. 1.Sive J, Cuthill K, Hunter H, Kazmi M, Pratt G, Smith D and on behalf of British Society of Haematology: Guidelines on the diagnosis, investigation and initial treatment of myeloma: a British Society for Haematology/UK Myeloma Forum Guideline.Brit J Haematol 193:245–268, 2021.doi:10.1111/bjh.17410

  2. 2.Rajkumar SV: Multiple myeloma: 2022 update on diagnosis, risk-stratification and management.Am J Hematol 97(8):1086-1107, 2022.doi:10.1002/ajh.26590

  3. 3.Kyle RA, Gertz MA, Witzig TE, et al.Review of 1027 patients with newly diagnosed multiple myeloma. Mayo Clin Proc.2003;78(1):21-33.doi:10.4065/78.1.21

多発性骨髄腫の治療

  • 症状のある患者に対する従来の化学療法およびコルチコステロイド

  • 免疫調節薬およびモノクローナル抗体による追加治療

  • 場合により自家造血幹細胞移植

  • 場合により,全身療法に反応しない症候性の特定領域に対する放射線療法

  • 合併症(例,貧血,高カルシウム血症,腎機能障害,感染症,および骨疾患)の治療

  • 免疫調節薬,モノクローナル抗体,プロテアソーム阻害薬,および新規の細胞治療薬による再発例または難治例の治療

治療としては,症状のある患者または骨髄腫関連臓器機能障害(貧血,腎機能障害,高カルシウム血症,または骨疾患)を認める患者での悪性細胞に対する直接的な治療が含まれる。

初発時に臓器機能障害がみられない患者において骨髄腫の迅速な治療を必要とする危険因子として,以下のものがある:

  • 骨髄中の形質細胞が60%を超えている

  • MRI画像で複数の病変が認められる

  • 血清遊離軽鎖値が100mg/Lを超えている

これらの危険因子を有する患者は活動性の骨髄腫とみなされ,そうした患者に対する早期治療に全生存期間の改善効果は認められていないものの,それでもなお,即時の治療が必要である。前述の危険因子がなく,末端臓器の機能障害もない患者では,迅速な治療が有益となる可能性は低いため,通常は症状または合併症が現れるまで治療を保留する。

悪性細胞の治療

従来の化学療法は,経口メルファランとプレドニゾンを4~6週間を1サイクルとして8~12サイクル投与し,月1回のペースで効果判定を行うものであり,かつては多発性骨髄腫の初回治療として選択されていた。しかしながら,プロテアソーム阻害薬(例,ボルテゾミブ,カルフィルゾミブ,イキサゾミブ)または免疫調節薬(レナリドミド,サリドマイド)を追加することで,成績が改善することがある。

シクロホスファミドやベンダムスチン,ドキソルビシン,ペグリポソーム化ドキソルビシンなど,その他の化学療法薬も免疫調節薬(サリドマイド,レナリドミド)やプロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブ)と併用することで,より効果的となる。ボルテゾミブとレナリドミドの両方をコルチコステロイドとともに初回治療に使用すると,生存期間が改善する。

初回治療の一部として,ボルテゾミブ + デキサメタゾン ± レナリドミドに抗CD38モノクローナル抗体(ダラツムマブまたはイサツキシマブ)を追加すると,治療成績が改善するようである(1)。

治療に対する反応(がん治療に対する反応の定義の表を参照)は以下によって示される:

  • 血清および尿中Mタンパク質の減少

  • Involved血清遊離軽鎖値の低下

  • 赤血球数の減少

  • 初診時に腎不全がみられた患者での腎機能の改善

  • 初診時にカルシウム高値がみられた患者でのカルシウム値の正常化

  • 骨痛の軽減

  • 疲労感の軽減

自家末梢血造血幹細胞移植は,心臓,肝臓,肺,および腎臓の機能が十分にあり,特に初回化学療法を数サイクル実施後に安定または奏効が得られた患者に対して考慮することができる。しかしながら,薬物療法の選択肢は効果が高く,移植が必要になる頻度が減ったり,必要性がなくなったりする場合もある。複数の臨床試験により,初回治療の一部として造血幹細胞移植を受けた患者では,無増悪生存期間は延長するが,全生存期間は改善しないことが示されている(2)。

骨髄非破壊的化学療法(例,低用量のシクロホスファミドおよびフルダラビン)または低線量の放射線療法後の同種造血幹細胞移植では,一部の患者において5~10年の骨髄腫フリー生存期間が得られている。ただし,同種造血幹細胞移植では,骨髄破壊的または骨髄非破壊的化学療法のいずれを用いても,移植片対宿主病に起因する合併症および死亡の割合が高いため,依然として探索的治療である。

再発または難治性骨髄腫の治療

再発または難治性骨髄腫の患者に効果的な多剤併用療法では,以下の薬剤が使用される:

  • コルチコステロイド

  • プロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブ,イキサゾミブ,カルフィルゾミブ)

  • 免疫調節薬(サリドマイド,レナリドミド,ポマリドミド)

  • モノクローナル抗体(ダラツムマブ,イサツキシマブ,エロツズマブ)

これらの薬剤は通常,その患者がまだ投与を受けていない他の効果的な薬剤と併用される。

長期寛解が得られた患者では,初期寛解につながった同一レジメンによる再治療で寛解が得られる可能性がある。多剤併用療法を受けて反応が認められなかった患者では,同一クラス(例,プロテアソーム阻害薬,免疫調節薬,化学療法薬)の他の薬剤へ変更することで反応が得られることがある。

骨髄腫細胞上のタンパク質を標的とするモノクローナル抗体も,再発または難治性骨髄腫に非常に効果的である。使用可能なモノクローナル抗体としては,以下のものがある:

  • CD38(ダラツムマブ,イサツキシマブ)

  • SLAMF7(signaling lymphocytic activation molecule F7)(エロツズマブ)

これらのモノクローナル抗体は,免疫調節薬のサリドマイド,レナリドミド,ポマリドミドや,プロテアソーム阻害薬のボルテゾミブ,カルフィルゾミブなど,多発性骨髄腫の治療に使用される他の薬剤の効力を向上させる(3, 4)。一方で,これらのモノクローナル抗体のいずれかとデキサメタゾンのみを併用する治療も,多くの患者,特に進行の程度が腫瘍マーカーの上昇でのみ明らかである患者において効果的である。このアプローチでは,追加しない薬剤の有害作用を避けることができる。

骨髄腫に活性のある他の治療薬,特にボルテゾミブと併用した場合,以下の薬剤が特に効果的である:

  • 選択的核外輸送阻害薬のセリネクソル(selinexor)

  • ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬のパノビノスタット

B細胞成熟抗原(BCMA)を標的とする効果的な免疫療法が利用可能になっている。具体的な治療法としては以下のものがある:

  • 骨髄腫に対する細胞療法:キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であるイデカブタゲン ビクルユーセルとシルタカブタゲン オートルユーセルを含む

  • T細胞上のCD3も標的とする二重特異性抗体(テクリスタマブおよびエルラナタマブ)(5, 6)

  • 多発性骨髄腫細胞上のGPRC5D(G protein-coupled receptor, class C, group 5, member D)とCD3を標的とする二重特異性抗体(トアルクエタマブ)(6)

これらの治療法は効果的であるが,有意な急性有害作用(サイトカイン放出症候群,神経学的問題)を引き起こす可能性があり,重症感染症および二次がんのリスクを増大させる。

経口BCL-2阻害薬であるベネトクラクスは,骨髄腫細胞に遺伝子マーカーのt(11;14)が認められる患者の治療に効果的であることが示されており,プロテアソーム阻害薬およびモノクローナル抗体と併用することができる(7)。

維持療法

インターフェロンαなどの非化学療法薬を用いた維持療法が検討されているが,寛解期間は延長するものの,生存期間は延長せず,有意な有害作用を伴う。コルチコステロイドをベースとしたレジメンで効果が得られた後では,コルチコステロイド単独が維持療法として効果的である。

サリドマイドも維持療法として効果的となる場合があり,レナリドミド単剤またはレナリドミドとコルチコステロイドの併用は維持療法として効果的である。ただし,レナリドミドによる治療を長期にわたり受けている患者では,特に自家造血幹細胞移植後の場合に,二次がんに関する懸念が生じる。そのため,二次がんの発生リスクを生存期間の延長効果と比較検討する必要がある。

経口プロテアソーム阻害薬のイキサゾミブは,維持療法として単剤で効果的である。イキサゾミブをレナリドミドと併用した方がより効果的となるかどうかは不明である。

維持療法におけるモノクローナル抗体の役割はいまだ定まっていない。

合併症の治療

悪性細胞に対する直接的な治療に加えて,以下の合併症に対する治療も実施しなければならない:

  • 貧血

  • 高カルシウム血症

  • 高尿酸血症

  • 過粘稠度症候群

  • 感染症

  • 腎機能不全

  • 骨病変

化学療法で十分に軽減されない貧血は,遺伝子組換えエリスロポエチンで治療できる。貧血により心血管系症状や重大な全身症状が生じてる場合は,濃厚赤血球を輸血する。骨髄腫と無関係の理由で鉄欠乏症を来して,鉄の静脈内投与が必要となる患者も多い。貧血の患者では,ビタミンB12値に加えて,貯蔵鉄量をモニタリングするために,血清鉄,トランスフェリン,およびフェリチンの濃度を定期的に測定すべきである。

骨髄腫患者ではまれであるが,過粘稠度症候群が発生することがあり,その場合は血漿交換の適応となる。

高カルシウム血症は,積極的な塩排泄,補液後のビスホスホネート(ゾレドロン酸が望ましい)の静注に加え,ときにカルシトニンまたはプレドニゾンにより治療する。デノスマブも特に重度の腎不全がある患者において高カルシウム血症の治療に使用できる。カルシウムを含む食事,カルシウムサプリメント,およびビタミンDは避けるべきである。

高尿酸血症は,腫瘍量が多く,基礎に代謝障害がある一部の患者で発生することがある。ただし,大半の患者でアロプリノールは必要ない。アロプリノールまたはラスブリカーゼは,尿酸の血清中濃度が高いか腫瘍量が多い患者において,治療に伴う腫瘍崩壊症候群のリスクが高い場合に適応となる。

感染症は,治療による好中球減少の発生中にみられる可能性が高くなる。さらに,新規の抗骨髄腫薬(特にプロテアソーム阻害薬のボルテゾミブ,カルフィルゾミブ,またはイキサゾミブおよびモノクローナル抗体のダラツムマブ,イサツキシマブ,またはエロツズマブ)による治療を受けている患者では,帯状疱疹ウイルスの感染が高頻度で認められている。BCMAを標的とする新しい治療法には,重症感染症の大きなリスク増大との関連が認められる。

確認されている細菌感染症は抗菌薬で治療すべきである。抗菌薬の予防的使用はルーチンには推奨されない。

プロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブ,カルフィルゾミブ,イキサゾミブ),モノクローナル抗体(ダラツムマブ,イサツキシマブ,エロツズマブ),二重特異性抗体(テクリスタマブ,エルラナタマブ,トアルクエタマブ),またはCAR-T細胞療法(イデカブタゲン ビクルユーセル,シルタカブタゲン オートルユーセル)による治療を受けている患者では,抗ウイルス薬(例,アシクロビル,バルガンシクロビル,ファムシクロビル)の予防投与が適応となる。

静注用免疫グロブリン製剤の予防投与により,感染リスクが低下する可能性があるが,これは一般にuninvolved免疫グロブリンが低値で感染症を頻回に繰り返している患者にのみ用いられる。

感染予防として肺炎球菌ワクチンおよびインフルエンザワクチンの適応があるが,疾患関連および治療関連の免疫不全のために大半の患者で効果的とならない。免疫系が障害された患者では生ワクチンの使用は推奨されない。帯状疱疹の予防には,遺伝子組換え帯状疱疹ワクチンを使用できるが,その有効性は限定的である。

腎障害は,しばしば十分な補液で改善する可能性がある。重度のベンスジョーンズタンパク尿(10~30g/日以上)が持続している患者でも,2000mL/日を超える尿量を維持していれば,腎機能に異常がみられないことがある。 ベンスジョーンズタンパク尿の患者では,高浸透の静注造影剤と合わせて,脱水を起こすと,急性の乏尿性腎不全が促進される恐れがある。一部の症例では,血漿交換が効果的な場合がある。腎毒性薬剤は避けるべきである。基礎疾患である骨髄腫を迅速かつ積極的に治療して腎毒性を有する単クローン性の免疫グロブリンを減少させることが,この状態を回復に向かわせる上で重要である。

骨病変では,多くの支持療法が必要である。疾患に関連した高カルシウム血症がない患者では,歩行運動を継続し,カルシウムとビタミンDを適応に応じて補給することが骨密度を保つのに役立つ。診断時および定期的にビタミンD濃度を測定し,それによりビタミンDの用量を調節する。鎮痛薬と緩和的な放射線療法(18~24Gy)により骨痛を軽減できる可能性がある。ただし,放射線療法は,重大な毒性を伴うことがあるほか,骨髄機能を抑制するため,細胞傷害性用量の全身化学療法を受ける患者の能力が損なわれる場合がある。

大半の患者,特に溶骨性骨病変と全身性の骨粗鬆症または骨減少症が認められる患者には,静注ビスホスホネート(パミドロン酸またはゾレドロン酸のいずれか)を月1回投与すべきである。ビスホスホネートは骨合併症を減少させ,骨痛を軽減するほか,抗腫瘍効果を示すこともある。骨髄腫に起因するが,高カルシウム血症とは無関係の腎不全が回復する可能性がある患者,ならびにビスホスホネートの投与後に輸注反応(infusion reaction)が持続している患者では,月1回のデノスマブ(皮下)投与が選択肢の1つとなるが,この薬剤はビスホスホネートと異なり,腎臓から排泄されず,輸注反応を引き起こさない。ビスホスホネートとデノスマブは,どちらも顎骨壊死を引き起こす可能性が低い。 この合併症のリスクを最小限に抑えるには,歯科衛生を良好に保つことと抜歯やインプラントを控えることが重要である。

治療に関する参考文献

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  2. 2.Richardson PG, Jacobus SJ, Weller EA, et al.Triplet Therapy, Transplantation, and Maintenance until Progression in Myeloma. N Engl J Med 2022;387(2):132-147.doi:10.1056/NEJMoa2204925

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  4. 4.Arnall JR, Maples KT, Harvey RD, et al.Daratumumab for the treatment of multiple myeloma: A review of clinical applicability and operational considerations.AnnalsPharmacother 2022;56(8):927-940.doi: 10.1177/10600280211058754

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多発性骨髄腫の予後

多発性骨髄腫は進行性で依然として治癒を望めない疾患であるが,最近の研究では選択されていない患者の全生存期間が11年以上まで改善されている(1)。

診断時点で予後不良を示唆する徴候は,進んだ病期,血清アルブミンの低値,β2ミクログロブリンの高値,LDHの高値,腫瘍細胞における特定の細胞遺伝学的異常,および血液中の悪性細胞数の高値である。初診時に腎不全がみられる患者も,治療により腎機能が改善しない限り,予後不良であるが,典型的には最新の治療選択肢で腎機能は改善する。

多発性骨髄腫は最終的に死に至るため,担当医師と適切な家族や友人が参加する終末期ケアに関する話し合いが有益となる可能性が高い。話し合いのポイントとして,事前指示書,栄養チューブの使用,および疼痛緩和を含めるとよい。

予後に関する参考文献

  1. 1.Jew S, Bujarski S, Regidor B, et al.Clinical outcomes and serum B-cell maturation antigen levels in a real-world unselected population of newly diagnosed multiple myeloma patients.Target Oncol 2023;18:735-747.doi: 10.1007/s11523-023-00990-6

要点

  • 悪性形質細胞が単クローン性免疫グロブリンを産生し,骨組織に浸潤し,それを破壊する。

  • 形質細胞腫の増大とサイトカインの分泌により,多数の不連続な溶骨性病変(通常は,骨盤,脊椎,肋骨,および頭蓋骨)とびまん性の骨粗鬆症が引き起こされ,疼痛,骨折,および高カルシウム血症がよくみられる。

  • 貧血および腎不全がよくみられる。

  • アミロイドーシスは,約10%の患者に発生し,典型的には過剰なλ型軽鎖を産生する患者にみられる。

  • 血清および尿タンパク質電気泳動を行い,その後に免疫固定法,免疫グロブリン定量,および血清遊離軽鎖の測定を行う。

  • 骨髄穿刺および骨髄生検を施行する。

  • 症状がみられる患者と臓器機能障害がある患者には薬物療法による治療を行うべきであり,具体的にはコルチコステロイド,化学療法薬,プロテアソーム阻害薬,免疫調節薬,モノクローナル抗体,選択的核外輸送阻害薬(selective inhibitor of nuclear export),ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬,B細胞成熟抗原を標的とする細胞および抗体ベースの免疫療法などがある。

  • 一部の患者では造血幹細胞移植が選択肢となるが,有効性の高い薬物療法の選択肢により,他の多くの患者で移植が不要になる可能性がある。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Bal S, Giri S, Godby KN, Costa LJ: New regimens and directions in the management of newly diagnosed multiple myeloma.Am J Hematol 96:367–378, 2021.doi:10.1002/ajh.26080

  2. Cook G, Morris CTCM: Evolution or revolution in multiple myeloma therapy and the role of the UK.Brit J Haematol 191:542–551, 2020.doi:10.1111/bjh.17148

  3. Cowan AJ, Green DJ, Kwok M, et al.Diagnosis and management of multiple myeloma: A review.JAMA 327:464-477, 2022.doi: 10.1001/jama.2022.0003

  4. Gulla A, Anderson KC: Multiple myeloma: the (r)evolution of current therapy and a glance into the future.Haematologica 105:2358–2367, 2020.doi:10.3324/haematol.2020.247015

  5. Rafae A., Rhee FV, Hadidi SA: Perspectives on the treatment of multiple myeloma.Oncologist 29:200-212, 2024.doi: 10.1093/oyad306

  6. Rajkumar SV: Multiple Myeloma: 2022 update on diagnosis, risk stratification, and management.Am J Hematol 97:1086–1107, 2022.doi: 10.1002/ajh.26590

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