腎炎症候群は，血尿および様々な程度のタンパク尿を認め，かつ尿沈渣の鏡検で通常は変形赤血球を，さらにしばしば赤血球円柱を認める場合として定義される。しばしば，浮腫，高血圧，血清クレアチニン値上昇，乏尿のうち少なくとも1つが認められる。腎炎症候群の原因には，一次的なものと二次的なものの両方が存在する。診断は，病歴，身体診察，ときには腎生検に基づく。治療および予後は原因によって異なる。
（糸球体疾患の概要も参照のこと。）
腎炎症候群は糸球体の炎症（糸球体腎炎）の臨床像であり，あらゆる年齢で起こりうる。原因は年齢によって異なり（糸球体疾患の年齢と臨床像による分類の表を参照），機序は原因によって異なる。本症候群は以下の場合がある：
急性（血清クレアチニン値が長くとも何週間の内に上昇する）
慢性（腎機能不全が何年にもわたり進行することがある）
腎炎症候群はさらに以下の場合がある：
原発性（特発性）
続発性
糸球体腎炎の原因
種類 | 例 |
|---|---|
原発性 | |
特発性 | 特発性半月体形成性糸球体腎炎 |
続発性 | |
細菌* | 内臓膿瘍（大腸菌［Escherichia coli］またはPseudomonas属，Proteus属，Klebsiella属，もしくはClostridium属細菌に起因） |
寄生虫* | マラリア（熱帯熱マラリア原虫［Plasmodium falciparum］または四日熱マラリア原虫［P. malariae］に起因） 住血吸虫症（マンソン住血吸虫［Schistosoma mansoni］に起因） |
ウイルス* | |
その他の感染性および感染後の原因 | 真菌感染症（Candida albicans［カンジダ症］またはCoccidioides immitis［コクシジオイデス症］に起因） |
全身性リウマチ性疾患 | |
薬剤性疾患 | SLE（ヒドララジンまたはプロカインアミドに起因） 溶血性尿毒症症候群（キニーネ，シスプラチン，ゲムシタビン，マイトマイシンCに起因） |
血液学的悪液質 | 血清病 |
糸球体基底膜疾患 | |
遺伝性疾患 | |
* 感染性および感染後の原因。 | |
IgA = 免疫グロブリンA；IgM = 免疫グロブリンM；SLE = 全身性エリテマトーデス。 | |
急性糸球体腎炎
感染後糸球体腎炎は，急性糸球体腎炎のプロトタイプであるが，その病態は他の糸球体症が原因で生じる場合や，全身性リウマチ性疾患や血液学的悪液質などの全身性疾患に起因する場合がある（糸球体腎炎の原因の表を参照）。
急速進行性糸球体腎炎（RPGN）は，炎症性（半月体形成性）糸球体腎炎の二次的な続発症に起因する急性糸球体腎炎であり，それには多くの原因がある。RPGNは病理診断により診断する。
慢性糸球体腎炎
慢性糸球体腎炎は，急性糸球体腎炎と類似の特徴を有するが，緩徐に発生し，軽度から中等度のタンパク尿を引き起こすことがある。具体例として以下のものがある：
