脳または脊髄の先天異常は様々な神経学的問題を引き起こしますが、ほとんど気づかれないものもあれば、死に至るものもあります。
脳や脊髄の先天異常は、胎児発育の早期または後期に発生します。
典型的な症状としては、知的障害、麻痺、失禁、体の一部の感覚消失などがあります。
診断は様々な血液検査とCTやMRIなどの画像検査の結果に基づいて下されます。
手術で修復できる異常もありますが、脳や脊髄の損傷は通常永続的です。
妊娠前と妊娠中に葉酸を摂取することで、特定の種類の異常が起きるリスクを減らすことができます。
脳と脊髄に生じる可能性がある多数の先天異常のうち、神経管閉鎖不全として知られる異常は妊娠1週目のうちに起こります。水頭症や小頭症など、その他の異常は妊娠の後期に発生します。
脳や脊髄の先天異常には、これまで知られていなかった多くの遺伝的要因を含め、多くの原因があります。
脳と脊髄の先天異常の症状
脳と脊髄に先天異常がある小児の多くでは、頭部や背中にも目に見える異常があります。
脳障害や脊髄障害の症状が現れるのは、先天異常が脳や脊髄の組織に影響を与える場合です。脳が損傷を受けると死に至る場合や、知的障害、けいれん、麻痺などの軽度または重度の障害を引き起こす場合があります。脊髄が損傷すると、麻痺や失禁、損傷部より下にある神経が支配する部位の感覚消失などが起こります(図「脊髄の損傷領域とその影響」を参照)。
脳と脊髄の先天異常の診断
出生前:羊水穿刺、出生前超音波検査または胎児MRI検査およびセルフリーDNAスクリーニング
出生後:CTまたはMRI検査
出生前では、羊水穿刺(胎児の周囲にある液体のサンプルを採取する)や出生前超音波検査、胎児MRIと呼ばれる新しい検査を行うことで、妊娠中に多くの先天異常を特定することが可能になります。異常の原因になっている可能性がある遺伝性疾患の診断に役立てるために、医師はセルフリーDNAスクリーニングを行うことがあります。医師は母親から血液のサンプルを採取して、そこから胎児のDNAを検出します。そのDNAを分析することで、胎児に特定の遺伝性疾患がないかを確認できます。
出生後に、CT検査とMRI検査を行うことで、脳と脊髄の内部構造の画像から異常を発見できます。
異常が特定された場合は、次の妊娠の子どもに同じような異常がみられるリスクが高い場合があることから、両親に対して心理的な支援や遺伝カウンセリングを行う必要があります。
脳と脊髄の先天異常の治療
手術
肉眼で見える開口部や腫れを起こすような異常は外科的に修復できます。
先天異常に起因する脳や脊髄の損傷は通常は治癒しませんが、手術を行うことが、さらなる合併症の予防と機能の改善につながります。
迅速に手術を行うことで、ほぼ正常に発育する小児もいます。
脳と脊髄の先天異常の予防
葉酸
神経管閉鎖不全の子どもを妊娠したことがない妊娠可能年齢のすべての女性は、葉酸を含んだビタミンサプリメントを摂取するべきで、これは妊娠の3カ月前から開始して、妊娠3カ月まで継続するべきです。
神経管閉鎖不全の子どもを妊娠したことがある女性は、以降の子どもにも同様の障害が起きるリスクが高いため、以降の妊娠でも高用量の葉酸サプリメントを摂取するべきで、同様に妊娠の3カ月前から開始して、妊娠3カ月間まで継続するべきです。葉酸サプリメントは、神経管閉鎖不全を完全に予防できるわけでありませんが、神経管閉鎖不全のリスクを大幅に低下させることができます。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
マーチ・オブ・ダイムズ(March of Dimes):妊婦と乳児のための団体で、母体の健康リスク、早産、ならびに母体および乳児死亡を予防する方法に関して支援と情報を提供しています。