生後最初の数日間

執筆者:Deborah M. Consolini, MD, Thomas Jefferson University Hospital
レビュー/改訂 2023年 9月
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多くの病院やその他の組織は、新生児の授乳、入浴、着替えの方法や、新生児の動きや何かを示すしぐさ、発する音をよく知る方法について両親に学びの場を提供しています。親は、臍帯(へその緒)、包皮切除、皮膚、排尿、排便、体重に関する日常的なケアも学びます。

臍帯(へその緒)

新生児では通常、臍帯にプラスチック製の臍帯クランプが留めてあります。臍帯が完全に乾いたら、クランプを取り外すことができます。

臍帯断端は1~2週間で自然に取れるため、断端を引っ張ったり取り除こうとしたりしてはなりません。臍帯断端は清潔で乾いた状態にしておく必要があります。アルコール溶液や他の消毒液で断端をふく必要はありません。

臍帯に感染が起こることがまれにあるため、医師はその部分が赤い、腫れている、あるいは分泌物が出ているなどの徴候をすべてチェックします。

包皮切除

男子の新生児での包皮切除(割礼)は、希望する場合、通常は生後数日以内に行われます。新生児の包皮切除を行うかどうかは、両親の信仰や考え方によります。

包皮切除が必要とされるような医学的問題はほとんどありません。ときに包皮が異常にきつくて(包茎)、尿の流れを妨げていることがあり、そのような閉塞を解消するために包皮切除を行う必要があります。包皮切除を受けた男性は尿路感染症にかかるリスクが低下しますが、このようなリスクは清潔にすれば最小限にとどめられます。また、包皮切除を受けた男性では陰茎がんのリスクも低下しますが、これはまれながんであり、予防する戦略として、がんを引き起こしやすく最もよくみられる種類のヒトパピローマウイルスに対するワクチン接種があります。

包皮切除は一般に、合併症は起こらない手術です。ごく一部で包皮切除の手術中に合併症が起こることがあり、通常は軽い出血や局所の感染がみられます。しかし、場合によっては重篤な合併症が発生します。

男児にまだ排尿がみられない場合や出血性の病気がある場合、陰茎に何らかの異常がある場合は包皮切除を行うべきではありません。後に形成外科的な修復が必要となった場合、包皮が必要になることもあるからです。母親が妊娠中に抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)やアスピリンなど出血のリスクを高める薬剤を服用した場合は、新生児の包皮切除は延期する必要があります。これらの薬剤が新生児の体から完全に排出されるまで、包皮切除を延期すべきです。

皮膚

生後最初の1週間、たいていの新生児には軽度の発疹がみられます。発疹は、衣類でこすられる部分、つまり腕、脚、背中などに多く現れますが、まれに顔面に出る場合もあります。この発疹は自然に治ります。ローションやパウダーを塗ったり、香料入りの石けんを使ったり、湿気が乾きにくいおむつカバーをおむつの上からはかせたりすると、発疹を悪化させる可能性が高くなり、特に暑い季節はその傾向が強くなります。数日たつと、特に手首と足首のしわの部分で、しばしば皮膚が乾燥したりむけたりすることがあります。

新生児では、生後1日を過ぎると皮膚が黄色くなることがあります(黄疸)。黄疸が起きる理由は、新生児の肝臓が子宮内での機能から子宮外での機能へと切り替わる必要があるからです。しかし、生後24時間以内に起きる黄疸は特に問題で、より重篤な病気の徴候である可能性があります。新生児に黄疸がみられた場合、通常は血液検査を行って、胆汁中の主な色素であるビリルビンの量を測定します。ビリルビンの測定値が特定の値を超えた場合は、光線療法による治療を開始します。光線療法では、裸にした新生児に特殊な光(「ビリライト」)を照射することで、ビリルビンが分解され排泄されるようになります。光線療法は2日から1週間続ける必要があります。典型的な新生児黄疸は生後2週までに消失するはずです。黄疸が生後2週以降に発生したり、生後2週以降も持続したりする場合は、医療専門職の評価を受けるべきです。

排尿と排便

新生児が生後2日間に排泄する尿は濃度が高く、しばしば「尿酸塩」と呼ばれる化学物質が含まれており、そのためにおむつがオレンジ色やピンク色になることがあります。生後24時間以内に新生児が排尿をしない場合、医学的評価が必要となる場合があります。

新生児の最初の腸からの排出物は、粘り気のある緑色がかった黒い物質で胎便といいます。すべての新生児は、生後24時間以内に胎便を排泄するはずです。生後24時間以内に胎便を排泄しない場合、医師は検査を行って病気がないか調べます。例えば、ときおり先天異常のため腸管が閉塞していることがあります。

体重

ほとんどの新生児は生後数日の間に、体重が出生時に比べ5~7%程度減少します。その理由のほとんどは、水分が尿として失われるためですが、胎便が排泄されることも理由の1つです。母乳で育っている新生児は約2週間、人工乳で育っている新生児は約10日で出生体重に戻ります。その後、生後数カ月間は、1日20~30g体重が増えなくてはなりません。一般的に生後約5カ月までには、体重が出生体重の2倍になります。

退院

米国では、病院で出産が行われ、新生児は出産後24~48時間以内に退院するのが普通です。新生児の退院が48時間以内の場合は、2~3日後に医療専門職の診察を受ける必要があります(小児の健診を参照)。退院が48時間より後の場合は生後2週目に診察を受け、何か具体的な問題(哺乳不良、便秘下痢黄疸など)があればそれまでに診察を受けます。

退院前に、どういうときに小児科医に電話するのがよいのか具体的に分かりやすく親に説明します。例えば、がある(肛門で体温を測ります)、呼吸が苦しそうである、食欲がない、胆汁を吐く(黄緑色のものを吐く)、皮膚の色が青くなる(チアノーゼ)場合は、すぐに小児科医に電話すべきです。

退院して家に戻ると、乳児を迎えることで家族全員にいろいろな生活の変化が求められます。それまで子どもがいなかった家庭の場合、乳児を迎えたことで生活は一変するでしょう。すでに子どもがいる家庭の場合、その子どもたちが乳児にやきもちをやくことがあります。子どもたちに乳児を迎える心の準備をさせると同時に、親がその子にも十分な関心を向けてあげ乳児の世話にも参加させると、子どもも新しい変化を受け入れやすくなります。ペットに関しても、乳児を受け入れられるよう注意を払ってやる必要があります。ペットを乳児から遠ざけておくことも必要でしょう。

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