白血球接着不全症は免疫不全疾患の一つで、白血球が正常に機能せず、軟部組織の感染症が頻繁に発生します。
白血球接着不全症の症状は、通常は乳児期に現れ、歯ぐき、皮膚、筋肉などの軟部組織の頻繁な感染がみられます。
診断には特殊な血液検査を行います。
治療では、感染症を予防するための抗菌薬と白血球の輸血を用いますが、効果的な治療法は幹細胞移植だけです。
(免疫不全疾患の概要も参照のこと。)
白血球接着不全症は原発性免疫不全症の一種です。常染色体劣性遺伝疾患として遺伝します。すなわち、両親から遺伝子を1つずつ、合わせて2つ受け継いで初めて発症します。
白血球接着不全症では、白血球の表面にあるいくつかのタンパク質のうちの1つで、細胞の移動と血管や外来細胞への付着(接着)に働くタンパク質が欠損しています。その結果、白血球が感染部位へ移動し、細菌などの外来異物を捕食する能力が低下します。
この病気には3つの型があり、影響を受ける免疫系の特定の生化学的部位によって区別されます。
白血球接着不全症の症状
白血球接着不全症の症状は、通常は乳児期に現れます。
重症の乳児では、歯ぐき、皮膚、筋肉などの軟部組織に感染が発生します。これらの感染は再発したり悪化したりし、侵された組織は壊死する可能性があります。感染部位には膿は生じません。次第に感染を抑えることが困難になります。
傷が十分に治りません。
多くの場合、へその緒が取れるのが遅く、生後3週間以上かかります。正常であれば、へその緒は生後1週間ないしは2週間で自然に取れます。
重症の小児は、幹細胞移植による治療が成功しない限り、ほとんどが5歳までに死亡します。
重症度が低い乳児では、重篤な感染症はほとんどみられません。治療を行わなくても成人期まで生存可能です。
ある病型の白血球接着不全症がある小児では、知能と体の発達が遅れることがよくあります。
白血球接着不全症の診断
血液検査
血算を行います。さらに、白血球の表面にあるタンパク質の分析(フローサイトメトリーと呼ばれます)など特殊な血液検査を行い、白血球接着不全症の診断を下します。
兄弟姉妹の遺伝子検査が推奨されます。
白血球接着不全症の治療
抗菌薬
顆粒球輸血
幹細胞移植
白血球接着不全症の治療では感染症を予防するための抗菌薬などを用い、しばしば継続的に投与します。顆粒球(白血球の一種)の輸血も役に立ちます。
ただし、効果的な治療法は幹細胞移植だけです。これは、特定の遺伝子変異をもつ少数の人に行われています。治癒がもたらされる可能性があります。
この病気に対する遺伝子治療の研究が行われています。
この病気の1つの病型に罹患している小児では、フコース(糖類の一種)のサプリメントが役に立つことがあります。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
免疫不全財団:白血球接着不全症(Immune Deficiency Foundation: Leukocyte adhesion deficiency):白血球接着不全症の診断、治療、患者へのアドバイスなどの情報を含む一般的な情報