動脈瘤は、動脈の壁にできる膨らみ(拡張)のことです。
動脈瘤はどの動脈にもできる可能性があります。動脈瘤が最もよくできるのは、心臓から全身に血液を送り出している太い動脈である大動脈です。大動脈は体幹部にあります。動脈瘤は体幹部以外の動脈、すなわち以下の部位の動脈にも発生することがあります。
脚(太ももの大腿動脈、膝の裏側の膝窩動脈)
脳(脳動脈)
心臓(冠動脈)
首(頸動脈)
頸動脈の動脈瘤はまれです。動脈瘤は若い人よりも高齢者に多くみられます。
原因
多くの動脈瘤は以下に起因します。
生まれたときから(つまり先天性の異常として)動脈の壁がもろい
アテローム性動脈硬化(動脈の壁の中にプラークが蓄積することが原因)
それ以外の動脈瘤は以下に起因します。
刺し傷や銃創による損傷
ヘロインなどの違法な静注薬物の使用後に生じる動脈の壁への細菌または真菌の感染
動脈壁の感染症は、通常は体内の他の部位、典型的には心臓弁から始まり、そこから動脈の壁に広がります。
症状
膝窩動脈や大腿動脈にできる動脈瘤の大半は、症状を引き起こさず、別の理由で行われた画像検査で発見されます。しかし、動脈瘤の内部に血栓ができることがあります。それらの血栓が剥がれ落ちたものは、塞栓子と呼ばれます。塞栓子は血流に乗って移動し、移動した先にある動脈をふさいでしまう可能性があります。これが下腿(膝から足首までの部分)や足の動脈をふさぐと、重度の痛みとしびれが突然起こり、足が冷たくなるほか、足が青白くなることもあります。
頸動脈瘤からの血栓が脳の動脈に詰まると、脳卒中が起こります。
心臓の動脈(冠動脈)の動脈瘤から移動してきた血栓の欠片により、心臓発作の症状(胸痛、息切れなど)が起こる可能性があります。
大動脈や脳動脈の動脈瘤とは異なり、膝窩動脈、大腿動脈、冠動脈、頸動脈の動脈瘤が破裂することはまれです。
動脈瘤に感染が起きると、発熱、痛み、および体重減少がみられることがあります。
診断
画像検査
脚や腕の動脈瘤は、動脈に拍動のあるかたまりを触診して診断することがあります。診断は超音波検査やCT検査で確定できます。
心臓の動脈瘤には、従来の血管造影検査やCT血管造影検査、MRアンギオグラフィー検査など、他の画像検査が必要になります。
感染を起こした動脈瘤は通常、画像検査で特有の特徴を示します。血液検査を行って、白血球数の増加と炎症タンパク質の増加がないか調べるとともに、培養検査を行って、動脈瘤に感染している微生物の種類を特定します。
治療
手術またはステントグラフトによる修復
下半身にある動脈瘤には、その血管の正常時の太さの2倍まで大きくなった時点か、あるいは動脈瘤の存在が知られていたものの症状はなかった人で新たに症状が現れた時点で、修復を行います。腕にできた動脈瘤は、その血管内で血栓ができる可能性がより高いため、通常は症状がなくてもすぐに修復します。
直径が約2.5センチメートル以上の膝窩動脈瘤の場合、通常は直視下手術か動脈瘤内にステントグラフトを挿入する処置が行われます。ステントグラフトは合成素材の中空のチューブで、壁面は弾力性のあるメッシュです。メッシュの壁は、折りたためるストローのように小さくたたむことができ、細長いワイヤーに沿って動脈内に挿入することができます。動脈を通してステントを進め、動脈瘤まで到達させます。そこでステントグラフトを開くと、安定した血流の通り道が作られます。ステントグラフトは冠動脈瘤にも使用できますが、冠動脈瘤に対しては、ときとして冠動脈バイパス術が必要になります。
大腿動脈瘤と頸動脈瘤は手術によっても修復することができます。
感染を起こした動脈瘤に対しては、典型的には抗菌薬または抗真菌薬による治療が必要になり、また動脈瘤の位置と大きさや感染による損傷の程度に応じて、開胸手術またはステントグラフトによる修復が必要になる場合もあります。