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鼠径ヘルニア

執筆者:Parswa Ansari, MD, Hofstra Northwell-Lenox Hill Hospital, New York
レビュー/改訂 2024年 7月
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やさしくわかる病気事典

鼠径ヘルニアとは、太ももの付け根(鼠径部)にある腹壁の開口部から、腸などの腹部臓器の一部が突出した状態のことをいいます。

本ページのリソース

  • 鼠径部や陰嚢に膨らみができますが、痛みを伴わない場合もあれば、膨らみが大きくなったときに不快感を引き起こす場合もあります。

  • 診断には超音波を利用できます。

  • 女性の場合、男性で症状がある場合、または絞扼(こうやく)や嵌頓(かんとん)がみられる場合は、手術が行われます。

腹壁ヘルニアも参照のこと。)

鼠径ヘルニアとは

鼠径ヘルニアでは、腸管や他の腹部臓器の一部が腹壁の開口部を通って鼠径管に押しこまれています。鼠径管には、精管、血管、神経などで構成される精索が通っています。腹部で形成された精巣は、出生前に鼠径管を通って下っていき陰嚢の中に収まります。

鼠径ヘルニアは広がって鼠径部に入り、陰嚢に入ることもあります。男性に多くみられます。

ヘルニアが生じている正確な場所に応じて、直接ヘルニアと間接ヘルニアの2種類があります。

鼠径そけいヘルニア
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この画像がぞうでは、腸ちょうが腹壁ふくへきの開口部かいこうぶから鼠径管そけいかんに押おし出だされており、それによって皮膚ひふの下したに膨ふくらみが生しょうじている様子ようすが写うつっています。

臍(さい)ヘルニアや大腿(だいたい)ヘルニアなど、他の種類のヘルニアは別の部位で発生します。

鼠径ヘルニアでは、腹壁の開口部は出生時から存在している(小児のヘルニアを参照)場合もあれば、後天的にできる場合もあります。

鼠径ヘルニアの症状

鼠径ヘルニアは通常、鼠径部か陰嚢に痛みのない膨らみを生じます。この膨らみは、腸管が重力で前後に移動するため、立っているときに大きくなり、横になっているときに小さくなることがあります。ヘルニアは大きくなると、せきをしたり姿勢を変えたりしたときに不快感を引き起こすことがあります。

ときには腸管の一部が陰嚢にはまりこみ戻らなくなることもあり(嵌頓)、さらに不快感や痛みが起こることもあります。この場合、腸管のその部分に血液が供給されなくなることがあります(絞扼)。血流を断たれた腸管は、数時間以内に壊死(壊疽[えそ])することがあります。

鼠径ヘルニア(右鼠径部)
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この写真には、右鼠径部に生じた鼠径ヘルニア(隆起から明らか)が写っています。
DR P.MARAZZI/SCIENCE PHOTO LIBRARY

鼠径ヘルニアの診断

  • 医師の診察

  • ときに超音波検査

鼠径ヘルニアの診断は、診察の結果に基づいて下されます。医師は、患者が立っている状態で、鼠径部を診察してせきをするように指示します。せきをすると、腹腔内の圧力が高まります。鼠径ヘルニアがある場合、せきをするとヘルニアが外側に膨らみ、検出が容易になります。さらに男性の場合は、医師は陰嚢上部のしわに指を置き、腹腔の方へ押し上げることでヘルニアを検出します。

ときに診断の補助として超音波検査が行われることもあります。

鼠径ヘルニアの治療

  • 手術による修復

女性の鼠径ヘルニアおよび男性で症状のある鼠径ヘルニアは手術で修復する必要があります。男性の鼠径ヘルニアで症状がない場合は、症状が現れないかぎり手術の必要はありません。自分に都合のよいときに手術を受けることができます。

絞扼性ヘルニアと嵌頓ヘルニアの場合は、鼠径管から腸を引き抜く緊急手術が必要です。

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