虫垂炎

執筆者:Parswa Ansari, MD, Hofstra Northwell-Lenox Hill Hospital, New York
レビュー/改訂 2021年 9月
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やさしくわかる病気事典

虫垂炎とは、虫垂に感染と炎症が起きた状態です。

  • しばしば虫垂の内部に閉塞が生じることで虫垂が炎症を起こし、感染症が生じます。

  • 腹痛、吐き気、発熱がよくみられます。

  • 試験開腹または画像検査(CT検査や超音波検査など)が行われます。

  • 治療としては、虫垂を切除する手術と感染症に対する抗菌薬の投与が行われます。

急性腹痛も参照のこと。)

虫垂は小腸との接合部近くの大腸から突き出た、指の形をした小さな管状の部分です。虫垂には若干の免疫機能がありますが、生存に欠かせない臓器ではありません。

消化器系しょうかきけい

虫垂炎は米国における突然の重度の腹痛および腹部手術の最も一般的な原因です。5%以上の人が生涯のある時点で虫垂炎を発症します。虫垂炎は、青年期と20代で起こることが最も多いのですが、どの年齢でも発生します。

虫垂炎の原因は十分に解明されているわけではありません。しかし、ほとんどの場合、虫垂の内部がふさがることで病気のプロセスが始まると考えられます。閉塞は、硬い便の小片(糞石[ふんせき])、異物、まれに寄生虫により生じることもあります。閉塞の結果、虫垂に炎症が起こり、感染症が生じます。治療しないまま炎症が続くと、虫垂が破裂することがあります。虫垂が破裂すると膿瘍(感染により膿がたまった空洞)が形成されることがあります。その結果、腹膜炎(腹腔の炎症で通常は感染症が起こり、生命を脅かす感染症が生じることもある)が発生する可能性があります。女性では、卵巣や卵管が感染して、その結果できた瘢痕(はんこん)が卵管を詰まらせ、不妊症の原因になることがあります。また、虫垂が破裂すると、細菌が血流に感染して敗血症という生命を脅かす状態に至ることがあります。

虫垂炎の症状

従来から虫垂炎の症状について、痛みが上腹部またはへそ周囲から始まり、その後吐き気と嘔吐が生じ、さらに数時間後に吐き気が消えて、痛みが腹部の右下部に移動するといわれていますが、そのような症状が出るのは、虫垂炎の患者の50%未満です。医師が右下腹部を押すと圧痛があり、その後加えた力を離したときに痛みが鋭く強まることがあります(反跳[はんちょう]痛)。38℃くらいの発熱がよくみられます。動いたり、せきをしたりすることで痛みが増します。

多くの患者(特に乳児や小児)で、痛みは右下腹部にとどまるというよりも腹部全体に広がります。高齢者や妊婦では、痛みがそれほどひどくない場合があり、圧痛も弱くなります。

虫垂が破裂すると、数時間にわたり痛みが軽減することがあります。その後、腹膜炎が起こり、痛みと発熱がひどくなる可能性があります。感染症が悪化すると、ショックが起こります。

知っていますか?

  • 米国では人口の5%以上がいずれ虫垂炎を発症します。

虫垂炎の診断

  • 医師の診察

  • 画像検査

  • 腹腔鏡検査

  • 血液検査

医師は症状と腹部の診察から虫垂炎を疑うことがあります。虫垂炎が強く疑われる場合はすぐに手術が行われるのが一般的です。

虫垂炎の診断がはっきりしない場合は、CT検査超音波検査などの画像検査が通常は行われます。将来にがんになるリスクを抑えるため、放射線曝露(ばくろ)を制限することが重要な小児では、超音波検査が特に有用です。

また、腹腔を調べる腹腔鏡検査を行って、診断の確定に役立てることもあります。

血液検査では感染のために中等度の白血球数増加がしばしば認められますが、虫垂炎を確実に診断できる血液検査はありません。

虫垂炎の予後(経過の見通し)

早期に手術をすれば、虫垂炎のために死亡する可能性は非常に低くなります。通常は1~3日で退院でき、普通は回復も早く、完治します。しかし、高齢者では回復までの時間がしばしば長くなります。

虫垂炎で手術や抗菌薬の投与を行わない場合(現代的な医療が利用できない遠隔地の患者で可能性がある)、50%以上の患者が死亡します。

虫垂が破裂した場合、予後はさらに悪くなります。数十年前は、虫垂が破裂すると死に至ることがよくありました。手術と抗菌薬によって、虫垂炎による死亡率はほとんどゼロに近づいていますが、手術を繰り返す必要があったり、回復期間が長くなったりすることもあります。

虫垂炎の治療

  • 手術による虫垂の切除

  • 抗菌薬の静脈内投与と輸液

手術が虫垂炎の主な治療法です。腹痛の原因が確定するまで手術を遅らせると死に至る可能性があります。感染を起こした虫垂は、症状が出現してから36時間以内に破裂することがあります。

虫垂炎が明らかになった場合は、輸液と抗菌薬が静脈内に投与され、虫垂が切除されます(虫垂切除術)。手術を行って虫垂炎が認められなかった場合でも、通常は将来の虫垂炎のリスクを防ぐために虫垂が切除されます。

最近では、手術を延期ないし回避できるように、抗菌薬のみで虫垂炎を治療する方針に関心が集まっています。こうした治療法は一部の人では成功する可能性がありますが、いまだ研究段階にあるため、虫垂炎に対しては依然として、手術による虫垂の切除が最も効果的で、それゆえ通常推奨すべき治療法と考えられています。

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