急性の感染性関節炎の原因となる一般的な微生物

患者群

微生物

典型的な原因

成人および青年

淋菌(生殖可能年齢の若年成人),非淋菌性の細菌(黄色ブドウ球菌β溶血性レンサ球菌肺炎球菌),まれな症例で髄膜炎菌

菌血症性の播種を伴う子宮頸部,尿道,直腸,または咽頭の感染症(淋菌);菌血症(ブドウ球菌,レンサ球菌,および肺炎球菌)

新生児

B群レンサ球菌大腸菌(およびその他のグラム陰性腸内細菌),黄色ブドウ球菌(S. aureus

母子感染

菌血症性の播種を伴う静脈穿刺またはカテーテル

3歳以下の小児

化膿レンサ球菌肺炎球菌,黄色ブドウ球菌(S. aureus),Kingella kingae

菌血症(例,中耳炎,上気道感染症,皮膚感染症,髄膜炎)

3歳から青年期

黄色ブドウ球菌(S. aureus),レンサ球菌,淋菌(Neisseria gonorrhoeae),緑膿菌Kingella kingae

菌血症または隣接部位からの進展

髄膜炎,菌血症,または触知可能な紫斑を有する小児

髄膜炎菌(まれ)

菌血症

全ての年齢層

ウイルス(例,パルボウイルスB19,B型肝炎またはC型肝炎ウイルス,風疹ウイルス[活動性感染症および予防接種後],トガウイルスチクングニアウイルス水痘ウイルスムンプスウイルス[成人],アデノウイルスコクサッキーウイルス[A9,B2,B3,B4,およびB6型],レトロウイルスHIVなど],エプスタイン-バーウイルス

ウイルス血症または免疫複合体の沈着

ダニへの曝露の可能性のある患者

Borrelia burgdorferiライム病の原因菌)

菌血症

咬傷がある患者(ヒト,イヌまたはネコ,ネズミ)

しばしば多菌性

ヒト:Eikenella corrodensB群レンサ球菌黄色ブドウ球菌口腔内の嫌気性菌(例,Fusobacterium属,Peptostreptococcus属,Bacteroides属)

イヌまたはネコ:黄色ブドウ球菌(S. aureus),Pasteurella multocidaPseudomonas属,Moraxella属,Haemophilus

ネズミ:黄色ブドウ球菌Streptobacillus moniliformisSpirillum minus

関節への直接の侵入,通常は手の小関節

手の感染した咬傷も参照のこと。)

高齢者

関節に重度の外傷があるまたは重篤な疾患を有する患者(例,免疫抑制,血液透析,全身性エリテマトーデス,関節リウマチ,糖尿病,がん)

ブドウ球菌(特に関節リウマチで),グラム陰性細菌(例,Enterobacter緑膿菌セラチア菌),Salmonella属(特に全身性エリテマトーデスで*)

尿路,皮膚

多関節の感染がある患者

レンサ球菌,黄色ブドウ球菌

咽頭炎,蜂窩織炎,心内膜炎,消化管および泌尿生殖器感染症

関節への侵入(外傷,関節穿刺,または関節切開によって起こる),隣接する感染巣,糖尿病,またはがんがある患者

レンサ球菌,黄色ブドウ球菌

嫌気性菌(例,Cutibacterium acnesPeptostreptococcus magnusFusobacterium属,Clostridium属,Bacteroides属);しばしば黄色ブドウ球菌(S. aureus),表皮ブドウ球菌大腸菌などの通性嫌気性または好気性細菌との混合感染

皮膚,腹部,性器,歯性感染症,副鼻腔,四肢の虚血,褥瘡

HIVに感染している患者

黄色ブドウ球菌,レンサ球菌,Salmonella属,抗酸菌

皮膚,粘膜,カテーテル

注射薬物使用者,血管カテーテル留置患者(例,血液透析,アフェレーシス,化学療法,または静脈栄養のため)

グラム陰性細菌,黄色ブドウ球菌(S. aureus),レンサ球菌,Candida

菌血症,真菌血症

*炎症の徴候は明確とならないことがあり,そのため,医師は穿刺吸引および培養を判断する閾値を低く設定する必要がある;重篤な病態(例,免疫抑制,血液透析全身性エリテマトーデス関節リウマチ糖尿病,がん)は,まれな感染症(例,真菌,抗酸菌)のリスクを増大させる可能性がある。

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