- グラム陰性桿菌に関する序論
- Bartonella属細菌による感染症の概要
- ネコひっかき病
- オロヤ熱およびペルー疣
- 細菌性血管腫症
- 塹壕熱
- ブルセラ症
- Campylobacter属細菌による感染症とその関連疾患
- コレラ
- コレラ以外のVibrio属細菌による感染症
- 大腸菌(Escherichia coli)感染症
- 大腸菌(Escherichia coli)O157:H7およびその他の腸管出血性大腸菌(E. coli)(EHEC)による感染症
- Haemophilus属細菌による感染症
- HACEK群による感染症
- Klebsiella,Enterobacter,およびSerratia属細菌による感染症
- Legionella属細菌による感染症
- 類鼻疽
- 百日咳
- ペストおよびYersinia属細菌によるその他の感染症
- プロテウス感染症
- Pseudomonas属細菌による感染症とその関連疾患
- Salmonella属細菌による感染症の概要
- 腸チフス
- 非チフス性サルモネラ(Salmonella)感染症
- 細菌性赤痢
- 野兎病
塹壕熱は,グラム陰性細菌であるBartonella quintanaを原因菌とするシラミ媒介性感染症であり,第1次および第2次世界大戦中に兵士の間で流行したのが最初である。症状は繰り返す急性発熱であり,ときに発疹を伴う。診断は血液培養による。治療はマクロライド系薬剤またはドキシサイクリンによる。
(Bartonella属細菌による感染症の概要も参照のこと。)
このバルトネラ(Bartonella)感染症については,ヒトが唯一の病原体保有生物である。B. quintanaは,感染したシラミの糞が皮膚の擦過傷または結膜に擦りつけられることによってヒトに伝播する。
塹壕熱はメキシコ,チュニジア,エリトリア,ポーランド,旧ソ連諸国の風土病であるが,米国でもホームレス集団において再発生がみられる。
塹壕熱の症状と徴候
塹壕熱は14~30日間の潜伏期の後に突然発症し,発熱,脱力,めまい,頭痛(目の奥の痛みを伴う),結膜充血,ならびに重度の背部痛および下肢(脛部)の疼痛がみられる。
発熱は40.5℃に達して5~6日間続くことがある。約半数の症例では,発熱が5~6日おきに1~8回再発する。
一過性の斑状または丘疹状皮疹のほか,ときに肝腫大および脾腫がみられる。心内膜炎を合併する症例もある。
再発することが多く,最初の発症から最長10年後の再発が報告されている。
塹壕熱の診断
塹壕熱の治療
ドキシサイクリンまたはマクロライド系薬剤
通常は1~2カ月で完全に回復し,死亡率は極めて低いが,臨床的な回復後も数カ月間は菌血症が存続することがあり,ドキシサイクリンまたはマクロライド系薬剤による長期(1カ月以上)の治療が必要になることもある。ドキシサイクリン100mg,経口,1日2回,4~6週間に加えて,心内膜炎が疑われる場合は最初の2週間にゲンタマイシン3mg/kg/日,静注を併用する。重篤な感染症または合併症を伴う感染症には併用療法を行う。
コロモジラミの駆除が必要である。
慢性の菌血症がある患者には,心内膜炎の徴候に対するモニタリングを行うべきある。