川崎病は全身の血管に炎症が起こる病気です。
川崎病の原因は不明ですが、感染症と関連があると考えられています。
典型的な症状は、発熱、発疹、イチゴ舌のほか、ときに心臓の合併症がみられることもあり、これによりまれに死に至ることがあります。
診断は診断基準に基づいて下されます。
迅速な治療を行えば、ほぼすべての患児が回復します。
治療では、高用量の免疫グロブリンとアスピリンを投与します。
川崎病は全身の血管の壁に炎症(血管炎)が起こる病気です。川崎病の原因は不明ですが、科学的証拠が示唆するところによると、もともと川崎病になりやすい遺伝的素因をもった小児にウイルスなどの感染性微生物が感染することで異常な免疫反応が惹起されるものと考えられています。最も深刻な問題を招くのは心臓の血管の炎症です。膵臓や腎臓など、体の他の部位にも炎症が広がることがあります。
川崎病はたいてい1~5歳の小児に発生しますが、乳児や、年長児、青年にみられることもあります。女児より男児におよそ1.5倍多くみられます。この病気は日系の小児により多くみられます。米国では毎年、数千例の発生があると推測されています。川崎病は年間を通じて発症がみられますが、最も多いのは春季または冬季です。
症状
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通常は39℃を超える発熱で始まり、1~3週間にわたって熱が上がったり下がったりします。熱を下げる薬(アセトアミノフェンやイブプロフェンなど)を投与しない限り、小児の体温は正常に戻りません。
発症から1~2日のうちに眼が赤くなりますが眼から分泌物は出ません。発症から5日以内に、体幹、おむつのあたる部分、口や腟の内側などの粘膜に、赤い発疹(斑状であることが多い)が現れるのが普通です。発疹はじんま疹のようにみえることや、麻疹(はしか)や猩紅熱(しょうこうねつ)による発疹のようにみえることがあります。のどが赤くなり、唇は赤く乾いてひび割れ、赤い舌はイチゴのようにみえます。さらに手のひらと足の裏も赤色または紫がかった赤色になり、しばしば手足が腫れます。発症から約10日後に手足の指の皮膚がむけ始めます。首のリンパ節が腫れることが多く、軽い圧痛を伴います。症状は2~12週間続きますが、もっと長引くこともあります。
川崎病の合併症
小児の場合、治療しなければ、通常は発症から1~4週間後に最大4人に1人の割合で心臓の異常が発生します。このうち少数の小児に、心臓の最も深刻な問題である冠動脈の壁の膨らみ(冠動脈瘤)が発生します。この冠動脈瘤は破裂したり、血栓の原因になったりして、心臓発作や突然死を招きます。治療により、心臓の合併症のリスクは20人に1人程度にまで低下します。
このほかに、脳を覆う組織の炎症(髄膜炎)、耳、眼、肝臓、関節、尿道、胆嚢(たんのう)の炎症などがみられることがあり、いずれも痛みを伴います。これらの症状はいずれ治癒し、永久的な障害を残すことはありません。
診断
確立された基準
心電図検査および心臓の超音波検査
臨床検査
あらかじめ定義されている5つの症状( see sidebar 川崎病の診断)のうち少なくとも4つがみられれば、川崎病と診断されます。
同様の症状を引き起こすその他の病気(麻疹[はしか]、猩紅熱、若年性特発性関節炎など)を否定するため、血液検査や血液とのどの培養検査も行われます。
しばしば、小児の心疾患の治療を専門とする医師(小児心臓専門医)または小児の感染症の治療を専門とする医師へのコンサルテーションが行われます。
いったん川崎病の診断がつけば、心電図検査と心臓超音波検査(心エコー検査)を行い、冠動脈瘤、心臓弁での逆流、心臓を取り囲む袋の炎症(心膜炎)、または心臓の筋肉の炎症(心筋炎)がないかを確認します。ときに、異常がすぐに現れないこともあるため、症状が現れてから2~3週間後、6~8週間後、そしてできれば6~12カ月後にもこれらの検査を繰り返します。 心電図検査または心エコー検査で異常が見つかれば、負荷試験を行うことがあります。 心エコー検査で動脈瘤が見つかれば、心臓カテーテル検査を行うことがあります。
予後(経過の見通し)
治療により、病気が始まって8週間以内に冠動脈に異常がみられなければ、完全に回復します。冠動脈に異常がある小児の予後は、病気の重症度によって変わります。しかし米国では、早期に治療すれば川崎病で死亡する小児はほとんどいません。
治療しなかった場合の死亡率は約1%です。死亡する小児のうち、大半は最初の6カ月の間に亡くなりますが、なかには10年も経ってから死亡する例もあります。
動脈瘤の約3分の2は1年以内に消失します。大きな動脈瘤は残る可能性が高くなります。また、たとえ動脈瘤が消失しても、成人してから心臓に異常をきたすリスクが高くなります。
治療
高用量の免疫グロブリンおよびアスピリン
川崎病の治療はできるだけ早く開始されます。症状が現れてから10日以内に治療を行えば冠動脈疾患のリスクは有意に低くなり、発熱、発疹、不快感の消失も早まります。治療では、1~4日間にわたり、高用量の免疫グロブリンを静脈内投与、高用量のアスピリンを経口投与します。4~5日間熱のない状態が続けば、すぐにアスピリンを減量しますが、発症から少なくとも8週間が経過するまでは投与します。冠動脈瘤がない症例では炎症が治まればアスピリンの投与を中止することがありますが、冠動脈に異常がみられる症例では、長期にわたってアスピリンを服用しなければなりません。
インフルエンザまたは水痘の小児にアスピリンを使用すると、ライ症候群のリスクが高まるため、アスピリンを長期的に投与している小児では、推奨されている年1回のインフルエンザの予防接種を受けるようにします。すべての小児は、適切な年齢で水痘(水ぼうそう)ワクチンの接種も受けるべきです。また、小児がインフルエンザウイルスまたは水痘ウイルスにさらされたり、インフルエンザまたは水痘にかかった場合は、ライ症候群のリスクを低下させるため、アスピリンの代わりに一時的にジピリダモールを使用することがあります。
大きな冠動脈瘤がある小児は、血栓を予防する薬(抗凝固薬)で治療することがあります。