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子宮内避妊器具(IUD)

執筆者:Frances E. Casey, MD, MPH, NYU Grossman Long Island School of Medicine
レビュー/改訂 2023年 8月 | 修正済み 2023年 10月
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子宮内避妊器具(IUD)は、プラスチック製で柔軟性のあるT字型の小さな器具で、子宮内に挿入して使用します。米国では何らかの避妊法を用いている女性の12%がIUDを使用しています。IUDは、非常に効果的で副作用が最小限であるなど、避妊法としての利点があるため、広く普及しています。またIUDは一定の間隔(3年毎、5年毎、8年毎、または10年毎)で交換するだけでよく、毎日、毎週、毎月の避妊法を使用する必要がなくなります。

IUDの挿入や抜去は医師または医療専門職が行います。2~3分もあれば挿入できます。挿入時に痛みを伴うことがあるため、IUDを挿入する前に子宮頸部に麻酔薬を注射することがあります。通常、抜去する際の不快感はほとんどありません。

IUDは以下のようにいろいろな方法で妊娠を防止します。

  • 精子を殺傷する、または精子の運動能をなくす

  • 精子と卵子の受精を阻止する

  • 子宮内で精子に有害な炎症反応を引き起こす

子宮内避妊器具しきゅうないひにんきぐ理解りかいする

子宮内避妊器具しきゅうないひにんきぐ(IUD)は、医師いしちつから子宮しきゅうなかれます。IUDは成型せいけいプラスチックでできています。2つのタイプのIUDがあり、レボノルゲストレルというプロゲスチンを放出ほうしゅつするタイプと、Tかたで、じく部分ぶぶんとTうで部分ぶぶんせんきつけられているタイプがあります。IUDにはプラスチックのいとがついています。このいとのおかげで使つかおんなひとはIUDがただしい位置いちはいっているかたしかめることができ、医師いしがIUDをしやすくなります。

米国で使用できるIUDとしては、レボノルゲストレル放出IUDや付加IUDなどがあります。

レボノルゲストレル放出IUDの使用期間は種類によって、3年、5年、8年と異なります。どのタイプでも、妊娠が起こる女性の割合は1.5%未満です。

付加IUDは10年以上効果が続きます。12年間入れたままにしておいた場合、妊娠する女性は2%未満です。

IUDを外した後の1年間では、妊娠を試みた女性の80~90%が妊娠します。

出産経験のない女性と青年期の女子を含め、ほとんどの女性がIUDを使用することができます。ただし、以下がある場合はIUDを使用すべきではありません。

性感染症、骨盤内炎症性疾患、または異所性(子宮外)妊娠の病歴がある女性でも、IUDは使用できます。

IUDは受精卵からの流産を誘発することで妊娠を防止する方法ではないため、中絶を禁じるという個人的信条によってIUDの使用が禁止されることはありません。ただし、付加IUDまたはレボノルゲストレル放出IUDが無防備な性行為後の緊急避妊に用いられた場合、IUDが受精卵の子宮への着床を妨げる可能性があります。

前回の月経から無防備な性行為を行っていなければ、その月経周期中はいつでもIUDを挿入することができます。無防備な性行為を行っていた場合は、IUDの挿入前に妊娠検査を行う必要があり、それまでは別の避妊法を使用することが勧められます。女性が無防備な性行為の後の緊急避妊としてIUDを使用することを希望している場合を除き、IUDの挿入前には女性が妊娠していないことを確認する必要があります。緊急避妊として使用する場合は、望まない妊娠を防止するために付加IUDを挿入します。無防備な性行為をしても、5日以内に付加IUDを挿入すれば、緊急避妊の方法としてほぼ100%の効果があります。この場合、希望があれば長期的な避妊手段として入れたままにしておくことができます。レボノルゲストレル放出IUDは緊急避妊法としては使用されておらず、挿入前に妊娠の可能性を否定する必要があります。

IUDを挿入する前に、医師が女性の危険因子に基づき性感染症(STI)の検査を勧めることがあります。ただし、医師はIUDの挿入前に性感染症の検査の結果を待つ必要はありません。結果が陽性であれば、その性感染症を治療し、IUDは挿入したままにします。IUDの挿入直前に医師が膿が混じったおりものを認めた場合、IUDは挿入しません。このような場合は性感染症の検査を行い、検査結果を待たずに直ちに抗菌薬の投与を開始します。感染症の治療が完了してからIUDを挿入します。

挿入前に、挿入中の痛みを和らげるために、子宮頸部に麻酔薬を注射する場合があります。

IUDは、第1または第2トリメスター【訳注:第1トリメスターは日本でいう妊娠初期に、第2トリメスターは妊娠中期にほぼ相当】の流産または中絶の直後や、帝王切開後に胎盤が娩出された直後に挿入することができます。

挿入時には、子宮内に一時的に細菌が侵入しますが、感染が起こることはまれです。IUDの糸は細菌の侵入経路にはなりません。IUDの使用開始後最初の1カ月間だけ骨盤内感染症のリスクが上昇します。感染症が生じた場合は、抗菌薬による治療が行われます。治療後も感染症が持続しない限り、IUDは挿入したままにしておくことができます。

IUD挿入後の定期的なフォローアップのための来院は必要ありません。ただし、痛み、大量出血、異常なおりもの、発熱などの問題がある場合、あるいはIUDが子宮から出た(脱出)場合やIUDに不満がある場合は、医師の診察を受ける必要があります。

起こりうる問題

女性がIUDを抜去する理由の主なものは出血と痛みであり、本来の交換時期より前に抜去する理由の半数以上を占めています。付加IUDは、経血量を増加させたり、月経痛を引き起こすことがあります。月経痛は通常、NSAIDで緩和できます。レボノルゲストレル放出IUDは、挿入後の数カ月間に不正出血を引き起こします。しかし、1年後には、女性の最大20%で月経出血が完全に止まります。

一般的に、女性の5%未満で挿入後1年以内にIUDが子宮から出てしまいますが(脱出)、最初の2~3週間で脱出することもしばしばあります。ときに使用者が脱出に気づかない場合もあります。確認をしたければ、IUDに付いている合成樹脂の糸によってIUDがきちんと入っているかどうかをときおり確かめることができます。ただし、IUDが脱出した場合や正常な位置に入っていない場合には、一般的に出血や痛みがみられます。IUDの脱出後に別のIUDを挿入した場合、再び脱出することは通常ありません。IUDの脱出が疑われる場合は、問題が解決するまで別の避妊法を使用する必要があります。

まれに、挿入時に子宮が裂けてしまうこと(穿孔)があります。穿孔が起きても、それによる症状は通常みられません。合成樹脂の糸が見つからず、超音波検査やX線検査でIUDが子宮外で発見されて初めて、穿孔を起こしたことが判明します。子宮を貫通して腹腔に出てしまったIUDは、腸を傷つけて瘢痕を残す可能性があるため、通常、腹腔鏡を用いて、外科的に取り出します。

IUDを挿入した状態で妊娠した女性は、異所性(子宮外)妊娠になる可能性が高くなります。ただし、IUDを使用している女性では妊娠そのものが効果的に阻止されるため、全体として避妊していない女性と比べて異所性妊娠が起こるリスクははるかに低くなります。

期待される利点

効果的な避妊法であることに加え、どの種類のIUDであっても子宮体がん(子宮内膜がん)および卵巣がんのリスクが低下します。

5年間有効なレボノルゲストレル放出IUDは、重い月経のある女性に対する効果的な治療にもなります。

付加IUDは、ホルモン剤による避妊法が使用できない女性にとって効果的な避妊法となります。

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