サイクロスポーラ症は、サイクロスポーラ・カエタネンシス(Cyclospora cayetanensis)という寄生虫によって引き起こされる小腸の感染症です。主な症状は、差し込むような腹痛と吐き気を伴う水様性下痢です。
人は寄生虫で汚染された輸入食品や水を摂取してサイクロスポーラ Cyclosporaに感染することがあります。
症状は様々ですが、水様性下痢、差し込むような腹痛、発熱、体重減少などがみられます。
医師は便のサンプルの中にサイクロスポーラ Cyclosporaを検出することでこの感染症の診断を下します。
サイクロスポーラ症の治療にはトリメトプリム/スルファメトキサゾール(TMP/SMX)が用いられます。
(寄生虫感染症の概要も参照のこと。)
サイクロスポーラ症は、熱帯および亜熱帯気候の衛生状態の悪い地域に最もよくみられます。流行地域の居住者やその地域への旅行者にはリスクがあります。米国では、ラズベリー、バジル、サヤエンドウ、ベビーリーフ、シラントロ(コリアンダー、パクチー、シャンツァイ)などの輸入された生鮮食品にまつわり、この感染症の集団発生が起こっています。
Image from the Centers for Disease Control and Prevention, Global Health, Division of Parasitic Diseases and Malaria.
サイクロスポーラ症の症状
サイクロスポーラ症の診断
便検査
サイクロスポーラ症の診断には、便のサンプルを顕微鏡で調べてサイクロスポーラ Cyclosporaの虫卵を探します。特殊な技術を用いると、虫卵を特定できる可能性を高めることができます。基準となる一部の検査施設では分子生物学的手法により寄生虫のDNAを特定することができます。
便検査でも長引く下痢の原因を特定できない場合、医師は内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を用いて、消化管の上部を調べ、さらに組織のサンプルを採取(生検)して、顕微鏡下に観察したり寄生虫のDNAを分析したりします。
サイクロスポーラ症の予防
集団発生が報告された場合は、汚染されている可能性のあるその地域の果物や野菜を食べないようにします。この感染症が流行している熱帯および亜熱帯地域に旅行する人は、サラダや生野菜など、加熱調理されていない食べものを避け、汚染されている可能性がある水や氷も口にしないようにします。石けんと水での手洗いが重要です。沸騰させた飲み水は安全です。0.1または0.4マイクロメートルのフィルターで水をろ過すると、サイクロスポーラ Cyclosporaやその他の寄生虫のシスト、病気を引き起こす細菌を除去することができます。
サイクロスポーラ症の治療
主な医学文献
1.Abanyie F, Harvey RR, Harris JR, et al: 2013 multistate outbreaks of Cyclospora cayetanensis infections associated with fresh produce: Focus on the Texas investigations.Epidemiol Infect 143(16):3451–3458, 2015.doi: 10.1017/S0950268815000370
2.CDC:Multi-state outbreak of cyclosporiasis linked to Del Monte fresh produce vegetable trays — United States, 2018.
3.Casillas SM, Hall RL, Herwaldt BL: Cyclosporiasis Surveillance―United States, 2011-2015. MMWR Surveill Summ 68(3):1-16, 2019.doi:10.15585/mmwr.ss6803a1