シストイソスポーラ症は、寄生虫であるシストイソスポーラ(イソスポーラ)・ベリー(Cystoisospora (Isospora) belli)によって引き起こされる感染症です。主な症状は、差し込むような腹痛と吐き気を伴う水様性下痢です。
本ページのリソース
人は寄生虫で汚染された食べものや水を摂取してシストイソスポーラ Cystoisosporaに感染することがあります。
症状は様々ですが、水様性下痢、差し込むような腹痛、発熱、体重減少などがみられます。
医師は通常、便のサンプルの中にシストイソスポーラ Cystoisosporaを検出することでこの感染症の診断を下します。
シストイソスポーラ症は、トリメトプリム/スルファメトキサゾール(TMP/SMX)で治療できます。
(寄生虫感染症の概要も参照のこと。)
シストイソスポーラ症は、熱帯や亜熱帯気候の地域に最もよくみられます。
Image from the Centers for Disease Control and Prevention Image Library.
シストイソスポーラ症の症状
シストイソスポーラ症の診断
便検査
シストイソスポーラ症を診断するには、便のサンプルを顕微鏡下に調べ、シストイソスポーラ Cystoisosporaの虫卵を探します。特殊な技術を用いると、虫卵を特定できる可能性を高めることができます。
便検査でも長引く下痢の原因を特定できない場合、医師は内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を用いて、消化管の上部を調べることがあります。その際に、検査と分析のために組織サンプルを採取することもあります(生検)。もしシストイソスポーラ Cystoisosporaがいれば、腸管から生検で採取したサンプル中に虫体が認められます。
シストイソスポーラ症の治療
トリメトプリム/スルファメトキサゾール(TMP/SMX)
症状がある感染者はTMP/SMXの内服で治療できます。
HIV感染症の人では、抗レトロウイルス薬を用いて可能な限り効果的にHIV感染症の治療を行うことが非常に重要です。そうした治療で免疫系の機能が強化され、下痢またはその他の症状の抑制につながることは少なくありません。末期のHIV感染症の人では、TMP/SMXの用量を増やし、治療期間を伸ばさなければならない場合があります。ときに、HIV感染症の人では、再発を予防するためにTMP/SMXによる長期的な維持療法が必要になることがあります。
TMP/SMXに対してアレルギーがある(または副作用に耐えられない)人では、シストイソスポーラ症をピリメタミンで治療できます。ピリメタミンの副作用である貧血と白血球数の減少を防ぐために、ロイコボリンが同時に投与されます。
シプロフロキサシンは、シストイソスポーラ症の治療に使用されていますが、TMP/SMXほど効果的ではありません。
シストイソスポーラ症の予防
予防は、手洗いと食品および水に関する注意事項の遵守によります。
この感染症が流行している熱帯および亜熱帯地域に旅行する人は、サラダや生野菜など、加熱調理されていない食べものを避け、汚染されている可能性がある水や氷も口にしないようにします。石けんと水での手洗いが重要です。沸騰させた飲み水は安全です。0.1または0.4マイクロメートルのフィルターで水をろ過すると、シストイソスポーラやその他の寄生虫のシスト、病気を引き起こす細菌を除去できます。国際旅行者向けの詳しい情報は、米国では米国疾病予防管理センター(CDC)イエローブック:食品および水に関する注意事項(Centers for Disease Control and Prevention (CDC) Yellow Book: Food & Water Precautions)に掲載されています。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
米国疾病予防管理センター(CDC)イエローブック:食品および水に関する注意事項(Centers for Disease Control and Prevention (CDC) Yellow Book: Food & Water Precautions)
CDC:寄生虫:シストイソスポーラ症(CDC: Parasites: Cystoisosporiasis)