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脆弱X関連振戦/失調症候群

(FXTAS)

執筆者:Alex Rajput, MD, University of Saskatchewan;
Eric Noyes, MD, University of Saskatchewan
レビュー/改訂 修正済み 2024年 2月
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脆弱X関連振戦/失調症候群は、主に男性に発生する遺伝性疾患で、振戦(ふるえ)と協調運動障害がみられ、やがて認知症を引き起こします。

  • 脆弱X関連振戦/失調症候群の原因は遺伝子変異です。

  • 一般に、まず手に振戦が起こり、次に協調運動障害、動作の緩慢化、表情の減少が生じ、最終的に認知症が生じます。

  • 遺伝子検査で診断を確定できます。

  • プリミドン、プロプラノロール、またはパーキンソン病の治療薬によって、しばしば振戦を緩和できます。

運動障害の概要も参照のこと。)

脆弱X関連振戦/失調症候群は、50歳以上の男性の3,000人に1人の割合で起こります。

脆弱X関連振戦/失調症候群の原因は、X染色体上(性染色体の1つ)の遺伝子にみられる前変異(premutation)と呼ばれる異常です。前変異(premutation)とは、脆弱X症候群を引き起こす通常の変異より小さな遺伝子変化で、小児に知的能力障害を引き起こします。男性はX染色体とY染色体を1本ずつもち、女性は2本のX染色体をもっています。男性は母親からX染色体を、父親からY染色体を受け継ぎます。母親から受け継いだX染色体に、脆弱X関連振戦/失調症候群を引き起こす異常な遺伝子が含まれている場合、X連鎖疾患に分類されるこの病気を発症します。X連鎖疾患では、女性より男性で症状が重くなるのが通常です。女性では、X染色体を2つもっていることが防御的に働いている可能性があります。

前変異(premutation)をもつ人はキャリア(ある異常遺伝子をもっているものの、その病気の症状が出ていない人)とみなされます。しかし、前変異をもつ男性の約30%、前変異をもつ女性の約5%未満が成人期に脆弱X関連振戦/失調症候群を発生します。発生リスクは加齢とともに増加します。

前変異(premutation)は、それをもつ男性から、娘には引き継がれますが、息子には引き継がれません。前変異をもつ女性の多くはこの症候群を発症せず、したがって本人も知らずに、息子(はじめに前変異をもっていた男性の孫)にこの変異遺伝子を伝えることがあります。この女性から子どもに前変異が遺伝する確率は50%です。前変異は、母親から子どもに引き継がれるときに完全な変異に転じることがあり、すると子どもは脆弱X症候群を発症します。

脆弱X関連振戦/失調症候群の症状

通常、脆弱X関連振戦/失調症候群の症状は成人期に現れます。

多くの場合、最初の症状は以下のものです。

  • 手の振戦(典型的には何か作業をしようとしたときに起こる)

ほかに、安静時振戦、協調運動障害(運動失調)、動作の緩慢化、こわばり、表情の減少(パーキンソン症状)などの症状がみられます。病状が進行すると、協調運動障害が悪化します。

最近の出来事を思い出したり、問題を解いたりするのが難しくなることがあります。思考が鈍くなることもあります。精神機能が進行性に低下することもあります。人格の変化や、抑うつ、不安、短気、敵意、気分の変動などがみられることがあります。

足の感覚障害や内臓の機能不全なども生じます。立ち上がったときに、正常なら起こる血圧上昇が起こらないため、立ちくらみを感じることもあります(起立性低血圧)。最終的に尿失禁や便失禁を起こすようになることもあります。

発症後の生存期間は約5~25年です。

前変異をもつ女性では症状は比較的軽いのが普通です。これは、女性にはX染色体がもう1本あり、それが前変異をもつX染色体の影響を防ぐためと考えられています。前変異をもつ女性は、前変異をもっていない女性より閉経が早くなり、不妊症になりやすい傾向があります。

脆弱X関連振戦/失調症候群の診断

  • 医師による評価

  • 遺伝子検査

  • ときにMRI検査

脆弱X関連振戦/失調症候群はときに見逃されたり、パーキンソン病アルツハイマー病など同様の症状を引き起こす病気と誤診されたりすることがあります。振戦は、本態性振戦(その他の症状を伴うことはめったにない一般的な振戦)と誤認されることがあります。

脆弱X関連振戦/失調症候群が疑われる場合、医師は患者の家族の症状について質問し、特に孫に知的障害がないか、娘に早期の閉経や不妊症がなかったかを尋ねます。

医師が脆弱X症候群の小児を診察する際は、その祖父に脆弱X関連振戦/失調症候群を疑わせる症状がないかを質問するはずです。

脳内の特徴的な異常を調べるためにMRI検査が行われることもあります。

遺伝子検査で診断を確定できます。

また、脆弱X関連振戦/失調症候群がある男性の娘と孫息子は遺伝カウンセリングを受けた方がよいでしょう。患者の娘は、子どもを作るかどうか、そして妊娠した場合に出生前検査を受けるかどうかについて決断できるように、前変異の有無を調べる検査を受けることができます。

脆弱X関連振戦/失調症候群の治療

  • 振戦をコントロールする薬剤

プリミドン(抗てんかん薬)、プロプラノロール(ベータ遮断薬)、またはパーキンソン病による振戦をコントロールする薬剤の多くで、振戦がしばしば緩和されます。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. ジェネティクス・ホーム・リファレンス:脆弱X症候群(Genetics Home Reference: Fragile X syndrome):このウェブサイトには、脆弱X症候群の説明や、その原因や遺伝形式に関する考察のほか、診断と治療に関するリンクも掲載されています。

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