終末期のケアに対する希望について患者と医師の間で正直かつ率直に話し合うことは、死に至る病気を患っている間の生活の質を最大限高める上で役立ちます。医師は終末期治療に期待できるメリットと、それが生活の質に及ぼす影響などのデメリットを率直に説明します。一方、患者は自分が受けたいケアとそうでないケアを表明します。この機会に、患者は治療に関する要望やその治療に対する制限を伝え、死を迎える場所や終末期にやっておきたいことの希望を表明し、死後の臓器提供の意思を決定します。
重篤または末期の病気をもつ人は、通常はかかりつけ医のケアを長期間受けていて、その医師と長年にわたる信頼関係を築いていることがあります。ただし、そうでない場合もあります。例えば、終末期ケアとしての鎮静や痛みの管理のための高用量のオピオイドの使用に反対する医師もいます。これらの治療はどちらも死期にある患者の苦痛を軽減しますが、わずかに死を早める可能性があります(ただし、ときに余命を延ばすことにつながる場合もあります)。こうした治療を希望しているにもかかわらず、担当医がそれを行えない場合には、その人は別の医師から医学的ケアを受けることを選択できます。
ホスピスチームが死期を迎えた人のかかりつけ医と連携して、このようなケアを提供できる場合もあります。ホスピスとは、数カ月以内に亡くなる可能性が非常に高い人を対象とするケアおよびサポートのプログラムです。ホスピスケアでは、治癒にではなく、快適さと生きることの意味に焦点が置かれます。ホスピスサービスは、自宅でも医療施設でも受けることができます。
終末期ケアの医療チームの選択
死に至る可能性がある状態にある人(非常に高齢の人を含みます)が医師(またはケアチーム全体)を選ぶ際には、終末期のケアに関していくつかの質問をするべきです。
その医師は終末期の症状に対して最大限のケア(緩和ケア)を勧めていて、痛みを最大限に管理するために強力なオピオイドを処方しているか?
その医師は死期を迎えた人に対するケアについて十分な経験を有しているか?
その医師は病院、介護施設、自宅のすべての状況で、患者が死を迎えるまでケアを提供しているか?
その医師は終末期ケアの治療選択肢を患者の希望に合わせて調整できる柔軟さを備えているか?
その医師は、その地域の在宅医療サービス、支援サービス、治療サービスに精通しているか?つまり、これらのサービスの資格を有する関係者、費用の支払方法、より集中的なサービスが必要になった場合に患者や家族を手助けする方法を把握しているか?
医師に終末期ケアの経験が不足していても、医師と患者・家族との間に長年の信頼関係が築かれていて、他の専門家に積極的に相談する意思がその医師にあれば、その不足を補うことができます。
ケアのシステムには、医師、病院、介護施設、在宅医療業者で構成されるケア提供プログラムが含まれます。ケアのシステムによって、費用、保険による補償額、患者の受診時負担および免責額が様々です。患者は医師、看護師、他の患者や家族、ソーシャルワーカー、ケアマネジャーなどに次のような質問をすることで、ケアのシステムを構成する最良の医療チームやチームのネットワークを見つけられる可能性があります。
ほかのネットワークでより容易に受けられる治療には何があるか?
可能性のある治療のメリットに関する情報は通常どのように提供されているか?
そこでケアを受けた他の患者やその家族に話を聞くにはどうすればよいか?
受けることのできる試験段階の治療はないか?
そのチームは終末期を通して定期的に患者と家族の往診を行ってくれるか?
そのチームは確実な安らぎと尊厳を確保し、患者と家族の希望に沿ったケアを提供することを誇りに思っているか?
死後の臓器提供の選択
死期を迎えた人は、死後の臓器提供を希望することがあります。このような決断は、亡くなる前に本人が行い、それに家族が同意するという形が理想的です。
一般に慢性疾患で亡くなる患者が提供できるのは、角膜、皮膚、骨だけです。慢性疾患がなく、突然亡くなった人の場合は通常、腎臓、肝臓、心臓、肺など、より多くの臓器を提供できます。通常、臓器ドナーになるために必要なことは、標準のドナーカードに署名することと、その意思を医師と家族に伝えることだけです。
臓器ドナーになることに抵抗を感じる人も、実状を知れば懸念が小さくなる場合があります。例えば、臓器を提供しても、葬儀のときの見た目に影響はありませんし、家族に費用が請求されることもありません。また、亡くなる前に臓器が摘出されることは決してありません。医師は臓器提供を手配する方法を、患者が自宅や介護施設で亡くなる場合も含めて、知っておく必要があります。