筋力低下の主な原因

筋力低下の主な原因

原因

示唆する所見

診断アプローチ*,†

脳の上位運動ニューロン病変

脳腫瘍

多発性硬化症

脳卒中

筋緊張亢進,反射亢進,伸展性足底反応(バビンスキー反射)

筋力低下(握力)よりも筋硬直と巧緻運動制御の喪失(手指の器用さ)の方が強いことがある

CTまたはMRIによる脳画像検査

多発性硬化症の場合:脳ならびに頸髄および胸髄のMRI(CTではない);ときに腰椎穿刺

脊髄症(上位下位運動ニューロン,下位運動ニューロン,またはその両方の障害)

自己免疫疾患(例,多発性硬化症,視神経脊髄炎血管炎

馬尾症候群

銅欠乏症

感染症(例,HTLV-1HIV感染症梅毒ヒトヘルペスウイルス6型EBV感染症水痘帯状疱疹

脊髄圧迫(例,脊椎症,硬膜外腫瘍,血腫,または膿瘍によるもの)

脊髄虚血または梗塞

脊髄小脳失調症

亜急性連合性脊髄変性症

横断性脊髄炎

上位運動ニューロン,下位運動ニューロン,またはその両方の機能障害

しばしば勃起障害,便失禁および尿失禁,尿閉および便秘,括約筋反射の消失(例,肛門括約筋反射,球海綿体反射)

進行性の四肢筋力低下および易疲労性,巧緻運動障害,痙性(下肢に始まり,脊髄圧迫が徐々に進行するにつれて腕に及ぶ)

古典的には皮膚知覚帯のレベル

脊髄MRI,脊髄造影CT,またはその両方

体性感覚誘発電位

原因の同定に必要なその他の検査:髄液検査(例,タンパク質,VDRL,IgG index,オリゴクローナルバンド,ウイルス価,PCR),ビタミンB12値,HIV検査,ANA,RPR,視神経脊髄炎に対する自己抗体MOG-IgGおよびNMO-IgG(抗アクアポリン4抗体),HTLV-1またはVDRL,遺伝子検査,血清銅,セルロプラスミンなどが考えられる

運動ニューロン疾患(上位,下位,または両方)

筋萎縮性側索硬化症

遺伝性の運動ニューロン疾患(例,脊髄性筋萎縮症または脊髄小脳萎縮症,Kennedy病を含む)

ポリオ後症候群

進行性球麻痺

ウイルス性のポリオ様疾患

進行性の筋力低下および易疲労性,巧緻運動障害,痙性(上位運動ニューロン)

反射低下または筋弛緩(下位運動ニューロン)

筋萎縮(下位運動ニューロン)

線維束性収縮(下位運動ニューロン)

女性化乳房,糖尿病,および精巣萎縮(Kennedy病)

筋電図検査と脳および脊髄MRI,脊髄造影CT,またはその両方

原因の同定に必要なその他の検査:鉛神経障害を除外するための24時間尿中重金属スクリーニング,抗GM1抗体価(多巣性運動ニューロパチーに対して),遺伝子検査(例,Kennedy病に対して)などがありうる

多発神経障害(大半は末梢性多発神経障害)†,‡

アルコール性神経障害

重症疾患多発ニューロパチー

脱髄性神経障害(例,CIDPギラン-バレー症候群

糖尿病性神経障害

薬剤性神経障害(例,ビンクリスチン,シスプラチン,またはスタチン系薬剤)

遺伝性ニューロパチー

感染性の神経障害(例,ジフテリアC型肝炎HIV/AIDSライム病梅毒

多巣性運動ニューロパチー

サルコイドーシス

中毒性神経障害(例,重金属)

ビタミン欠乏症(例,チアミンビタミンB6ビタミンB12

反射低下,ときに線維束性収縮

慢性であれば,筋萎縮

末梢性の多発神経障害では,多くの遠位筋の不釣り合いな筋力低下および同部位に分布する(手袋靴下型)感覚障害(例外として頻度が高いのはCIDPであり,この疾患では近位と遠位の神経および筋が同等に侵される)

神経障害の有無を確定するための検査:電気診断検査

原因の同定に必要なその他の検査:血漿血糖値,経口ブドウ糖負荷試験2時間値,ヘモグロビンA1C,RPR,HIV検査,葉酸,ビタミンB12,血清タンパク質の免疫固定電気泳動,胸部CTおよび血清ACE値(サルコイドーシスに対して),24時間尿中重金属スクリーニング,抗MAG抗体(一部の脱髄性神経障害でみられる),抗GM1抗体価(多巣性運動ニューロパチー),遺伝子検査(遺伝性ニューロパチー)などが考えられる

ときに髄液検査

神経筋接合部疾患

ボツリヌス症

イートン-ランバート症候群

重症筋無力症

ダニ麻痺症

重症度が変動する筋力低下(例,重症筋無力症またはイートン-ランバート症候群)

しばしば,著明な球症状の所見(例,重症筋無力症,ボツリヌス症,または有機リン中毒)

ときに反射低下(例,イートン-ランバート症候群,ダニ麻痺症,または有機リン中毒)

機序を確定するための検査:電気診断検査

原因の同定に必要なその他の検査:毒性物質および抗アセチルコリン受容体抗体の測定やアイスパック試験(重症筋無力症)などが考えられる

有機リンまたはカルバメート中毒

流涙,霧視,唾液分泌の増加,発汗,咳嗽,嘔吐,排便および排尿回数の増加,線維束性収縮

しばしば診察のみ

ときに毒性物質を同定するための血液検査

ミオパチー

アルコール性ミオパチー

チャネル病

ステロイドミオパチー

クッシング症候群

遺伝性筋疾患(例,筋ジストロフィー)

低カルシウム血症

低カリウム血症

低マグネシウム血症

低リン血症

甲状腺機能低下性ミオパチー

代謝性ミオパチー

多発性筋炎または皮膚筋炎

横紋筋融解症

スタチン誘発性ミオパチー

甲状腺中毒性ミオパチー

ウイルス性筋炎

近位筋の不釣り合いな筋力低下(四肢間では均等)

慢性であれば,筋萎縮

一部の型では,筋の圧痛

機序を確定するための検査:電気診断検査および筋酵素(例,CK,アルドラーゼ),ときにMRIを用いて筋萎縮,筋肥大,または仮性肥大を確認する。

原因の同定に必要なその他の検査:特殊染色を用いた筋生検と特定の遺伝性疾患に対する遺伝子検査,血清電解質(特にカルシウムカリウムマグネシウム,およびリン),血清TSH,帯状疱疹ウイルス抗体価などが考えられる

疾患および廃用による全身の筋萎縮

熱傷

がん

長期臥床

敗血症

飢餓

びまん性筋萎縮,感覚および反射は正常,線維束性収縮はない

臨床的に明らかな危険因子

病歴聴取と身体診察のみ

* 診察は常に行うものであるが,それが診断の唯一の手段となる可能性がある場合に限り,この列で言及している。

†検査には変更を加えてよく,臨床的に疑われる疾患に応じて追加検査が適応となる場合もある。

‡多発性単神経障害(多発性単神経炎)が広域に及べば,多発神経障害に臨床的に類似した異常を引き起こしうる。

ACE = アンジオテンシン変換酵素;ANA = 抗核抗体;抗GM1= 抗モノシアル酸ガングリオシド;抗MAG = 抗ミエリン関連糖タンパク質;CIDP = 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー;CK = クレアチンキナーゼ;EBV = エプスタイン-バーウイルス;HTLV = ヒトTリンパ球向性ウイルス;MOG = ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質;NMO-IgG = 視神経脊髄炎の自己抗体;RPR = 迅速血漿レアギン試験;TSH = 甲状腺刺激ホルモン;VDRL = Venereal Disease Research Laboratory。

* 診察は常に行うものであるが,それが診断の唯一の手段となる可能性がある場合に限り,この列で言及している。

†検査には変更を加えてよく,臨床的に疑われる疾患に応じて追加検査が適応となる場合もある。

‡多発性単神経障害(多発性単神経炎)が広域に及べば,多発神経障害に臨床的に類似した異常を引き起こしうる。

ACE = アンジオテンシン変換酵素;ANA = 抗核抗体;抗GM1= 抗モノシアル酸ガングリオシド;抗MAG = 抗ミエリン関連糖タンパク質;CIDP = 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー;CK = クレアチンキナーゼ;EBV = エプスタイン-バーウイルス;HTLV = ヒトTリンパ球向性ウイルス;MOG = ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質;NMO-IgG = 視神経脊髄炎の自己抗体;RPR = 迅速血漿レアギン試験;TSH = 甲状腺刺激ホルモン;VDRL = Venereal Disease Research Laboratory。

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