脊髄梗塞

脊髄梗塞の初発症状として，通常は緊張を伴う突発的な背部痛が周囲に放散し，その後数分以内に両側性かつ髄節性の弛緩性筋力低下と感覚消失が起こる。温痛覚が他の感覚より強く障害される。典型的には前脊髄動脈が障害され，前脊髄症候群が生じる（脊髄症候群の表を参照）。脊髄の後索を通って伝導する位置覚および振動覚のほか，しばしば軽い触覚も比較的障害を免れる。

梗塞が小さく，閉塞した動脈から最も離れた組織（脊髄中心部方向）が主に障害された場合は，中心性脊髄損傷の可能性もある（脊髄症候群の表を参照）。

神経脱落症状は発症数日後で部分的に消失することもある。

• MRI

重度の背部痛と特徴的な障害が突然出現した場合は，梗塞が疑われる。

脊髄梗塞の診断はMRIによる。MRIが利用できない場合は，脊髄造影CTを施行してもよい。

急性横断性脊髄炎，脊髄圧迫，および脱髄疾患も類似の所見を引き起こすが，通常は発症がより緩徐でありMRIおよび髄液検査により除外される。

• 支持療法

ときに梗塞の原因（例，大動脈解離，結節性多発動脈炎）が治療可能なことがあるが，多くの場合，可能な治療は支持療法のみである。

• 脊髄梗塞は，内因性の前後脊髄動脈の疾患よりも，脊柱管外部の栄養動脈または大動脈への損傷（例，動脈硬化，解離，または手術中の結紮による）に起因することの方が多い。

• 緊張を伴い，周囲に放散する突発的な背部痛をもたらし，その後数分以内に両側性かつ髄節性の弛緩性筋力低下と感覚消失が起こる；温痛覚が他の感覚より強く障害される。

• 中心性脊髄損傷が起こることもある。

• MRIにより診断する。

• 可能であれば原因を治療し，そうでなければ，支持療法で対処する。