血管確保

執筆者:Cherisse Berry, MD, New York University School of Medicine
レビュー/改訂 2022年 12月
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血管確保のためにいくつかの手技が用いられている。

末梢静脈カテーテル法

大半の患者では,輸液および薬剤投与は経皮的な末梢静脈カテーテルで対応できる。ブラインドでの経皮的留置が困難な場合,超音波ガイド下に留置を行うことで通常はうまくいく。経皮的カテーテル挿入ができないまれな症例では静脈切開を行える。典型的な静脈切開部位は,前腕の橈側皮静脈および足関節の伏在静脈である。しかしながら,成人でも小児でも末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC:peripherally inserted central catheter)ラインまたは骨髄ラインが一般的になったため,静脈切開が必要になることはまれである。

末梢静脈カテーテル留置のステップ-バイ-ステップの手順については,末梢静脈カテーテル挿入および超音波ガイド下末梢静脈カテーテル挿入を参照のこと。

一般的な合併症(例,局所感染,静脈血栓症,血栓性静脈炎,輸液の血管外漏出)は,挿入時の入念な無菌操作をすること,およびカテーテルを72時間以内に交換または抜去することによって減らすことができる。

中心静脈カテーテル法

長期的または確実な血管確保が必要な患者(例,抗菌薬,化学療法,または完全静脈栄養のため),および末梢静脈確保が難しい患者は,中心静脈カテーテル(CVC)を必要とする。CVCにより,末梢静脈には濃すぎるまたは刺激が強すぎる輸液の注入,および中心静脈圧(CVP)のモニタリングが可能になる。

CVCは頸静脈,鎖骨下静脈,大腿静脈から,または上腕の末梢静脈を経由して(PICCライン)挿入できる。カテーテルの種類および挿入部位の選択は,しばしば個々の医師および患者の背景によって変わるが,通常,頸静脈CVCまたはPICCラインが,鎖骨下CVC(出血および気胸のリスク上昇と関連)または大腿CVC(感染リスク上昇と関連)より好まれる。心停止の間は,心肺蘇生(CPR)によって胸腔内圧が上昇しているため,大腿静脈のCVCを介して注入される輸液および薬物は横隔膜より上方に循環できないことがしばしばある。この場合,鎖骨下または内頸静脈からの挿入が好まれる。

超音波ガイド下での内頸静脈ラインおよびPICCライン留置は今や標準的管理であり,これにより合併症のリスクを減少できる。可能であればCVC挿入前に凝固障害は是正すべきであり,鎖骨下アプローチは,静脈穿刺部位のモニタリングが不可能で圧迫もできないため,凝固障害が是正されていない患者で使用すべきではない。

中心静脈カテーテルの挿入手順については,以下を参照のこと:

超音波ガイド下経皮的カテーテル挿入の動画
超音波ガイド下大腿静脈カテーテル挿入
超音波ガイド下大腿静脈カテーテル挿入
クロルヘキシジン綿棒を使用して右鼠径部の皮膚を消毒する。中心静脈カテーテル挿入の準備では,我々は広範囲の消毒を行っている。消毒液が乾いたら,無菌の広いバリアを設置する。滅菌ドレープは,下半身全体と術者の間をベッドを含めて覆うようにかけるべ... さらに読む

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超音波ガイド下鎖骨下静脈カテーテル挿入
超音波ガイド下鎖骨下静脈カテーテル挿入
患者にトレンデレンブルグ体位[ph 00:15]をとらせた後,クロルヘキシジン綿棒を用いて左前胸壁全体を消毒し,更に頸部も半分の高さまで,続いて左肩も広範囲に消毒する。良好な消毒効果を得るには,クロルヘキシジンが完全に乾燥するまで少なくと... さらに読む

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経皮的鎖骨下静脈カテーテル挿入
経皮的鎖骨下静脈カテーテル挿入
クロルヘキシジン綿棒を用いて右前胸壁の無菌的前処置を行う。綿棒を前後に動かして,前胸壁と右肩の広範囲を消毒する。 ここでは,対象の領域に滅菌ドレープをかけている。この滅菌ドレープでベッド全体を覆っている。 ここでは,滅菌生理食塩水でトリプ... さらに読む

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経皮的大腿静脈カテーテル挿入
経皮的大腿静脈カテーテル挿入

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経皮的内頸静脈カテーテル挿入
経皮的内頸静脈カテーテル挿入

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超音波ガイドを用いた経皮的内頸静脈カテーテル挿入
超音波ガイドを用いた経皮的内頸静脈カテーテル挿入

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鎖骨下静脈穿刺

この図には鎖骨下静脈穿刺中の手の位置(鎖骨下アプローチ)が示されている。

中心静脈カテーテル法の合併症

CVCは多くの合併症を引き起こしうる(中心静脈カテーテル関連の合併症の表を参照)。CVC挿入後,患者の1%に気胸が生じる。カテーテル挿入手技の最中に心房性または心室性不整脈がしばしば起こるが,一般に自然軽快し,ガイドワイヤーまたはカテーテルを心臓内部から引き抜くと治まる。全身感染を伴わないカテーテルの細菌コロニー形成の発生率は最大35%に及ぶことがあるが,真の敗血症発生率は2~8%である。カテーテルに関連した静脈血栓症が合併症として認識されることが増えてきており,特に上肢でその傾向がみられる。まれに,誤って動脈にカテーテルが入り外科的な動脈修復を必要とすることがある。カテーテルが血管外に置かれた場合,胸水または縦隔水腫が生じることがある。カテーテルによる三尖弁損傷,細菌性心内膜炎,ならびに空気塞栓症およびカテーテル塞栓症がまれに生じる。

静脈血栓症およびカテーテル敗血症のリスクを減らすため,CVCは可能な限り早期に抜去すべきである。挿入部位の皮膚は清潔にし,局所感染がないか毎日点検すべきである;局所または全身性感染が生じた場合は,カテーテルを交換しなければならない。発熱の続く敗血症の患者では,CVCカテーテルを定期的(例,5~7日毎)に交換するのが有益だと感じている医師もおり,このアプローチによってカテーテルの細菌コロニー形成のリスクを減少できる可能性がある。

(CDCウェブサイトのGuidelines for Prevention of Intravascular Catheter-Related Infectionsも参照のこと。)

表&コラム
表&コラム

末梢ミッドラインカテーテル留置

ミッドラインカテーテル(MC)とは,長さ8~20cmのシングルルーメンまたはダブルルーメンの末梢カテーテルであり,利き手ではない方の肘窩の上または下1.5cmの箇所で尺側皮静脈,橈側皮静脈,または上腕静脈に留置される。MCの留置にはmodified Seldinger法および超音波ガイドを用いる必要があるが,先端が腋窩静脈以下に位置するため,MCは中心静脈カテーテルとはみなされない。したがって,MCの先端が正しく留置されていることをX線で確認する必要はない。

MCの使用基準:

  • 中~長期の静注療法が必要と予想される患者

  • 静脈アクセスが不良で,かつ複数回の穿刺または採血を必要とする患者

  • 状態をモニタリングするために頻回の採血を必要とする可能性が高い患者

MCは末梢静脈カテーテルよりも静脈炎の発生率が低く,中心静脈カテーテルよりも感染率が低いことが明らかにされている(1)。

動脈カテーテル法

非侵襲的自動血圧計の使用により,血圧モニタリングのみを目的とした動脈ラインの使用は減少している。しかしながら,分刻みの血圧測定が必要な不安定な患者,および動脈血ガス採血を頻繁に必要とする患者では,こういったカテーテルが有益である。適応として,難治性ショックおよび呼吸不全などがあげられる。血圧は,血圧計よりも動脈カテーテルで測定する方がいくらか高く出ることがしばしばある。測定点が末梢にいくにつれて,初期の立ち上がり,最高収縮期血圧,および脈圧は上昇するが,拡張期血圧および平均動脈圧は低下する。血管のカルシウム沈着,粥状動脈硬化症,近位部閉塞,および四肢の位置は全て,動脈カテーテルによる測定値に影響を与えうる。

動脈カテーテル留置のステップ-バイ-ステップの手順については,橈骨動脈カテーテル挿入および超音波ガイド下橈骨動脈カテーテル挿入を参照のこと。

動脈カテーテル法
橈骨動脈への動脈カテーテル挿入
橈骨動脈への動脈カテーテル挿入

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橈骨動脈への超音波ガイド下カテーテル挿入
橈骨動脈への超音波ガイド下カテーテル挿入
ここでは,消毒はクロルヘキシジン綿棒で行い,滅菌ドレープを使用している。中心静脈ラインの場合と同じように,滅菌ドレープを広くかけているのに注目すること。ここでは,超音波プローブを滅菌されたカバーで覆っている。プローブには無菌ではないゲルが... さらに読む

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大腿動脈への超音波ガイド下カテーテル挿入
大腿動脈への超音波ガイド下カテーテル挿入

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動脈カテーテル法の合併症

どの部位からの挿入でも,合併症として出血,感染,血栓症,内膜解離,および遠位部の塞栓などがある。もし局所または全身性の感染徴候があるならば,カテーテルを抜去すべきである。

橈骨動脈カテーテルの合併症には,カテーテル挿入部位の血栓もしくは塞栓,内膜解離,または血管攣縮による,手および前腕の虚血などがある。動脈血栓症のリスクは,細い動脈でより高く(これにより女性でより発生率が高いことを説明できる),カテーテル留置期間が長くなるにつれ上昇する。閉塞した動脈は,カテーテル抜去後に,ほとんどの場合再開通する。

大腿動脈カテーテルの合併症には,ガイドワイヤー挿入に伴うアテローム塞栓症などがある。血栓症および遠位部虚血の発生率は,橈骨動脈カテーテルに比べはるかに低い。

腋窩動脈カテーテルの合併症には,頻度は低いものの血腫形成があり,これは腕神経叢を圧迫して永続的な末梢神経障害を来す恐れがあるため,その際には緊急処置が必要となりうる。腋窩動脈カテーテルをフラッシュすると,空気または凝血塊が入り込む場合がある。これらの塞栓子による神経学的後遺症を避けるため,カテーテル挿入には左腋窩動脈を選択すべきである(左腋窩動脈は右腋窩動脈に比べて頸動脈からより遠位で分岐する)。

カテーテル法に関する参考文献

  1. Alexandrou E, Ramjan L, Spencer T, et al: The use of midline catheters in the adult acute care setting – clinical implications and recommendations for practice.JAVA 16:35–41, 2011.

骨髄内輸液

静脈内にルーチンで投与される輸液または薬物(血液製剤を含む)はどれも,特定の長管骨の髄腔に挿入した頑丈な針を介して投与できる。輸液は,静注の場合と同程度の速さで中心循環に達する。この方法は乳幼児で用いられることがより多く,このような患者では骨皮質が薄く簡単に貫通できるうえ,特にショックまたは心停止のときに,末梢静脈および中心静脈の確保が極めて困難になりうる。しかしながら,より年長の患者でも,現在では特殊なデバイス(例,圧負荷をかける穿刺装置,穿刺ドリル)がより簡単に入手でき,様々な部位(例,胸骨,脛骨近位部,上腕骨)でこの手技を行うことができる。このため,骨髄内輸液は成人でもより一般的になりつつある。

骨髄路確保のステップ-バイ-ステップの手順については,骨髄路確保(用手的手技および電動ドリルを用いる手技)を参照のこと。

骨髄針の挿入

脛骨近位部を4本の指と母指で覆い,固定する;(自己穿刺を避けるため)挿入部位のすぐ後ろに手を置くべきではない。そのかわり,膝を支えるため,タオルをその裏側に置くことはある。針を他方の手掌でしっかりと把持し,関節腔と成長板からやや離れた点を目指す。適度な圧力と回転運動により針を挿入し,皮質を貫通した抜ける感じがしたら止める。プラスチックスリーブ付きの針もあり,スリーブを調整することで骨に深く入りすぎたり反対側まで貫通したりするのを回避できる。

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