内頸静脈への経皮的カテーテル挿入では,解剖学的ランドマークを目印に静脈穿刺を行い,Seldinger法を用いて内頸静脈から上大静脈へと中心静脈カテーテルを挿入する。3つのアプローチ(セントラル,前方,後方)が用いられるが,ここではセントラルアプローチについて述べる。
内頸静脈からの中心静脈カテーテル(CVC)または末梢挿入式中心静脈カテーテル(PICC)は,通常,鎖骨下からのCVC(出血および気胸のリスクが高い)または大腿からのCVC(感染リスクが高い)より望ましい。
超音波ガイド下に内頸静脈ラインの留置を行うことにより,カテーテル挿入の成功率を高め,合併症のリスクを軽減できる。超音波ガイドが利用可能で熟練したスタッフがいる場合は,この方法による留置が望ましい。
(血管確保,中心静脈カテーテル法,および超音波ガイド下内頸静脈カテーテル挿入も参照のこと。)
内頸静脈カテーテル挿入の適応
確実な,または長期にわたる静脈路の確保が他の部位では行えない
心停止患者における輸液および薬剤の静注
高濃度または刺激性の液体の静注
末梢静脈カテーテルで可能な範囲を超える高速または大量の輸液の静注
中心静脈圧(CVP)のモニタリング
血液透析またはプラズマフェレーシス(血漿交換)
経静脈心臓ペーシング(動画「経静脈ペースメーカーの挿入」を参照)または肺動脈モニタリング(スワン-ガンツカテーテル)*
下大静脈フィルターの留置
*経静脈的心臓ペーシングまたは肺動脈モニタリングには,一般的に右内頸静脈からのカテーテル挿入または左鎖骨下静脈からのカテーテル挿入が望ましい。
内頸静脈カテーテル挿入の禁忌
絶対的禁忌
内頸静脈の血栓
穿刺部位の局所感染
アレルギー患者における抗菌薬含浸カテーテル(antibiotic-impregnated catheter)
相対的禁忌
凝固障害(抗凝固療法を含む)*
局所の解剖学的変形(外傷性または先天性),または高度の肥満
上大静脈症候群
重度の心肺機能不全または頭蓋内圧亢進もしくは眼圧上昇(患者はトレンデレンブルグ[頭を下げる]体位による悪影響を受ける)
使用する予定の静脈へのカテーテル挿入歴
非協力的な患者(必要であれば鎮静を行うべきである)
左脚ブロック(右室内にガイドワイヤーまたはカテーテルが入ると,完全房室ブロックを誘発する可能性がある)
*抗凝固療法(例,肺塞栓症に対するもの)は内頸静脈カテーテル挿入に伴う出血リスクを高めるが,このリスクを,抗凝固療法を解除した場合の血栓(例,脳卒中)発生リスクの増大と勘案する必要がある。解除を検討している場合は,患者の抗凝固療法を管理している医師と話し合い,続いて患者と話し合う。大腿静脈ラインの方が望ましい場合もある。
内頸静脈カテーテル挿入の合併症
(中心静脈カテーテル法の合併症も参照のこと。)
合併症としては以下のものがある:
動脈穿刺
血腫
気胸
静脈損傷
血胸
空気塞栓
カテーテルの誤留置*
不整脈または心房穿孔(典型的にはガイドワイヤーまたはカテーテルによる)
神経損傷
感染症
血栓
*カテーテルの誤留置によるまれな合併症には,動脈カテーテル留置,胸水,縦隔水腫,および三尖弁損傷などがある。
ガイドワイヤーまたはカテーテルによる塞栓もまれに起こることがある。
静脈内血栓およびカテーテル敗血症のリスクを軽減するため,CVCは必要がなくなれば直ちに抜去すべきである。
内頸静脈カテーテル挿入で使用する器具
無菌操作,バリアによる防護
消毒液(例,クロルヘキシジン-アルコール,クロルヘキシジン,ポビドンヨード,アルコール)
滅菌済みの大きなドレープ,タオル
滅菌キャップ,マスク,ガウン,手袋
フェイスシールド
Seldinger法(catheter-over-guidewire法)
心電図モニター
局所麻酔薬(例,アドレナリン無添加の1%リドカイン,約5mL)
細い麻酔針(例,25~27G,長さ約3cm)
太い麻酔薬/試験穿刺用の針*(finder needle)(22G,長さ約4cm)
イントロデューサー針(例,壁が薄いもの,18または16G,内側に傾斜したハブ付き,長さ約6cm)
3mLおよび5mLシリンジ(試験穿刺用の針およびイントロデューサー針にはルアースリップシリンジを使用する)
ガイドワイヤー(先端がJ型のもの)
メス(11番の刃)
ダイレーター
中心静脈カテーテル(成人:8Fr以上,内頸静脈カテーテルの最短の長さは右側で15cm,左側で20cm)
滅菌ガーゼ(例,10cm四方)
カテーテルのポートまたはハブをフラッシュするための滅菌生理食塩水
非吸収性のナイロン糸または絹糸(例,3-0または4-0)
クロルヘキシジンパッチ,透明の閉鎖性ドレッシング
*試験穿刺用の針(finder needle)とは,イントロデューサー針を挿入する前に静脈の位置を確認するために使用する細い針のことを指す。一般に,超音波ガイドを用いない内頸静脈カテーテル挿入に推奨される。
助手が1人か2人いると助けとなる。
その他の留意事項
カテーテル挿入の試みはときに失敗する。試行回数は2回または3回を超えないようにし(さもないと合併症のリスクを高める),再試行の度に新しい器具を使用する(すなわち,針,カテーテル,その他の器具に組織または血液が詰まっている可能性があるため,再使用しない)。
心肺停止中,あるいは低血圧や低酸素血症がある状態では,動脈血が暗く非拍動性のことがあり,静脈血と見誤ることがある。
ダイレーターまたはCVCのいずれかが誤って内頸動脈に挿入された場合は,ダイレーターまたはカテーテルはそのままにしておき,外科的除去の必要性について外科医のコンサルテーションを受ける。
内頸静脈カテーテル挿入における重要な解剖
下方では鎖骨に接し,内側および外側では胸鎖乳突筋の胸骨頭および鎖骨頭に接する三角を用いる。
頸動脈は通常,胸鎖乳突筋の胸骨頭の外側付近で触知され,内頸静脈は通常,頸動脈の外側(多くの場合,ごくわずかに外側)でより浅い位置にある。しかしながら,これらの血管の配置には一定の頻度で異同がみられる(患者の9~19%)。頭位が変わると,頸動脈と内頸静脈の位置が入れ替わることもある。
内頸静脈へはセントラルアプローチが用いられることが最も多く,このアプローチでは胸膜または頸動脈穿刺の発生率が低くなる可能性がある。イントロデューサー針を,この三角の頂角(一番上の角)の皮膚に,同側の乳頭へ向けて約30~40°の角度で挿入する。
カテーテル挿入は通常,左より右内頸静脈の方が望ましいが,これは右の方が径が大きく上大静脈により直線的に合流するためである。
内頸静脈カテーテル挿入での体位
術者にとって快適な(すなわち,処置の間まっすぐ立っていられる)高さにベッドを挙上する。
内頸静脈を拡張させ,空気塞栓を予防するため,患者を仰臥位またはトレンデレンブルグ体位(頭部が下になるよう15~20°ベッドを傾斜させる)にする。
患者の頭部を対側にごくわずかに回転させ,あるいは全く回転させず,内頸静脈を露出するが,このとき頸動脈と重ならないようにする。
ベッドの頭側に立つ。
ステップ-バイ-ステップの手順
穿刺の目印となる三角を同定するための視診を(非清潔操作で)行い,頸動脈拍動を触診し,(任意ではあるが)頸動脈の外側縁に印を付ける。
心電図モニターを装着して電源を入れる。
器具を準備する
滅菌された器具を滅菌カバーをかけたトレイに置く。
滅菌された術着を着用し,バリアによる防護を行う。
局所麻酔薬をシリンジに吸引する。
滅菌生理食塩水1~2mLを入れた5mLシリンジに試験穿刺用の針を装着する。
滅菌生理食塩水1~2mLを入れた5mLシリンジにイントロデューサー針を装着する。針先のベベル型の刃面をシリンジの容量目盛りと同じ向きに合わせる。
CVCの全てのラインを滅菌生理食塩水3~5mLであらかじめフラッシュした後,キャップまたはシリンジでハブを閉鎖する。
中心静脈ラインをフラッシュするときは,10mLシリンジ(またはそれ以上の口径のシリンジ)を用い,ラインの破裂を防ぐためシリンジは強く押しすぎないこと。
清潔野を確保する
頸部側面,鎖骨,および前胸部から同側の乳頭の下までを含む広範囲の皮膚を消毒液で消毒する。このように広い清潔野を形成しておくことにより,内頸静脈へのカテーテル挿入が不成功に終わった場合でも,鎖骨下静脈へのカテーテル挿入に直ちに切り替えることができる。
少なくとも1分間置いて消毒液を乾燥させる。
滅菌タオルを処置部位の周囲にかけ,同側の乳頭は露出させておく。
大きな滅菌ドレープ(例,全身用ドレープ)を敷いて,広い清潔野を確保する。
針の挿入経路を確立する(内頸静脈,セントラルアプローチ)
頸動脈拍動を3本の指で愛護的に触診し,動脈の走行を評価する。隣接する内頸静脈を,圧迫しないよう愛護的に触診する(静脈内腔が圧迫されているとカテーテル挿入は困難である)。
針の挿入経路:処置用の針(局所麻酔薬針,試験穿刺用の針,およびイントロデューサー針)を,頸動脈拍動のすぐ外側で,穿刺の目印となる三角の頂角(一番上の角)領域に,同側の乳頭へ向けて30~40°の角度で皮膚に挿入する。
針の挿入中も頸動脈の触診を続け,動脈を穿刺しないように針を常に動脈の外側に保っておく。
カテーテル挿入部位を麻酔する
針の刺入部に麻酔薬の膨疹を作り,予想される針の挿入経路に沿って皮膚および軟部組織に麻酔薬を注射する。針が血管内へ入ったことを確認するため,また血管内への注射を防ぐため,針を進めるときはシリンジのプランジャーを軽く陰圧に保っておく。
血液がシリンジ内に戻ってきたら,針を進めるのを止めてシリンジをそのままの位置に保持し,今後この針を試験穿刺用の針とみなす。下記の「逆血を評価する」に進む。
試験穿刺用の針を挿入する
試験穿刺用の針を針の挿入経路に沿って挿入する。
針を進める間,シリンジのプランジャーは軽く陰圧に保っておく。
シリンジの外筒に逆血が現れたら,針を進めるのを止める(針が内腔に入るときにプチッという感覚を感じることがある)。この位置でシリンジが動かないように保持する。わずかに動いただけでも針の先端が静脈から出てしまうことがある。
約3~5cm挿入しても外筒に逆血が現れない場合,ゆっくりと針を引き抜く。針が静脈の反対側まで貫通してしまっている場合,針の先端を内腔に引き戻す際に逆血がみられることがある。それでも逆血がない場合は,針を皮膚表面の近くまで引き抜き,方向を(通常はわずかに内側に)変えて,再び静脈内への挿入を試みる。針を完全に挿入した状態で針の向きを変えないこと。
逆血を評価する
シリンジをそのまま動かないように保持し続ける。
針のハブをしっかりつかみ,動かないように保持する。
シリンジを針のハブから外し,血液を短時間流出させて,その血液が静脈血である(すなわち,暗赤色の血液が流れ出すが拍動性ではない)ことを確認する。空気塞栓を予防するため,その後直ちにハブを母指で覆い,血流を止める。
ただし,血液が鮮紅色で拍動性(動脈血)であれば,手技を中止する。針を抜去し,10cm × 10cmのガーゼで同部位を外部から10分間圧迫し,出血および血腫を予防する。
試験穿刺用の針を用いてイントロデューサー針の挿入を誘導する
針先のベベル型の刃面を上に向けて,イントロデューサー針を付けたシリンジを保持する。
2つの挿入方法のいずれかを用いる:試験穿刺用の針を抜去し,直ちにイントロデューサー針を同じ経路に沿って挿入するか,または試験穿刺用の針をその場所に留めたまま,イントロデューサー針をその下にほぼ平行に(皮膚に対して試験穿刺用の針よりやや浅い角度で)挿入する。
シリンジの外筒に逆血が現れたら,イントロデューサー針を進めるのを止める。この位置でシリンジが動かないように保持する。
試験穿刺用の針をまだ抜去していない場合は,この時点で抜去する。
上記「逆血を評価する」に記載の通り,イントロデューサー針から戻ってきた血流を評価する。
ガイドワイヤーを挿入する
針先のベベル型の刃面が内側に(すなわち,鎖骨下静脈側ではなく心臓に)向くよう,イントロデューサーを慎重に回転させる。
ガイドワイヤーのJ字型の先端を内向きにして(すなわち,針先のベベル型の刃面と同じ向きにして)イントロデューサー針に挿入する。
ガイドワイヤーを針に通して静脈内に進める。ワイヤーを無理に通そうとしないこと;ワイヤーは滑らかにスライドするはずである。右内頸静脈への挿入では10~15cm,左内頸静脈への挿入では15~20cm,または異所性心拍が起こるまでワイヤーを進める(異所性拍動が起こった場合,異所性拍動が停止するところまで引き抜く)。
ガイドワイヤーを進める際に抵抗を感じた場合は,進めるのを止める。ワイヤーを愛護的にわずかに引き出し,わずかに回転させてから再び進めるようにするか,またはワイヤー全体を愛護的に抜去してから針の先端を静脈内に戻し(静脈血が戻ることで確認する),再びワイヤーを挿入するようにする。
ただし,ワイヤーを引き抜く際に抵抗を感じた場合は,手技を終了して針とガイドワイヤーを1つのユニットとして引き抜く(患者の体内で針の先端がガイドワイヤーを切断するのを防ぐため)。その後,10cm × 10cmのガーゼで同部位を外部から10分間圧迫し,出血および血腫を予防する。
ガイドワイヤーを挿入した後は片手でしっかりと保持し,これ以降の処置の間,常にガイドワイヤーを制御できるようにしておく。
イントロデューサー針を抜去する(ガイドワイヤー挿入に成功した後)
まず,ガイドワイヤーを針の遠位側でしっかりと保持し,針を皮膚から引き抜く。
続いて,ガイドワイヤーを皮膚表面でしっかりと保持し,ガイドワイヤーの残りの部分に沿って針をスライドさせて抜去する。
挿入路を拡張する
皮膚の刺入部を拡張する:ガイドワイヤーに触れないようにしてメスで皮膚の刺入部に小さな切開(約4mmのstab incision[刺切])を入れ,より径の太いダイレーターやカテーテルが入るように刺入部を拡張する。
ガイドワイヤー上をスライドさせてダイレーターを進める:まず,皮膚表面でガイドワイヤーをつまみ,ダイレーターをワイヤーに沿って皮膚表面までスライドさせる。次にダイレーターのすぐ遠位部に出ているワイヤーをつまみ,ダイレーターを皮膚表面付近に保持し,必要に応じて捻るような動きを取り入れてダイレーター全体を段階的に挿入する。挿入中は常にワイヤーを把持しておく。
ダイレーターを抜去する:まず,ダイレーターの遠位部でガイドワイヤーをしっかりと保持し,ダイレーターを皮膚から引き抜く。ガイドワイヤーが皮膚表面に見えたら,ガイドワイヤーの残りの部分に沿ってダイレーターをスライドさせて完全に取り外す。
ガイドワイヤーは皮膚表面で常に把持しておく。
カテーテルを留置する
カテーテルをガイドワイヤーの上を通して皮膚表面まで進める:ガイドワイヤーを皮膚表面に固定したまま,カテーテルの先端をガイドワイヤーの遠位端に被せ,カテーテルを皮膚表面までスライドさせる。この時点で,ガイドワイヤーの遠位端がカテーテルのハブから出ているはずである。
ガイドワイヤーの遠位端がカテーテルのハブから出ていない場合は,カテーテル先端を皮膚の表面付近に保持したまま,ガイドワイヤーの末端がハブから出てくるまでガイドワイヤーを皮膚表面から少しずつ外に出す。
引き続きカテーテルを静脈内に進める:ガイドワイヤーがハブから出ているところを把持してガイドワイヤーをコントロールする。カテーテルの先端付近を持ち,先端を皮膚に潜らせて挿入する。続いて,必要に応じて捻るような動きを取り入れつつ,内頸静脈カテーテルの全長にわたり数cmずつ段階的に進める。異所性拍動が生じた場合は,異所性拍動が止まるまでカテーテルをゆっくり引き抜く。
ガイドワイヤーとカテーテルの両方をしっかりとつかんでおく。
ガイドワイヤーを抜去する:カテーテルを皮膚表面にしっかりと固定したまま,ガイドワイヤーを引き抜く。
カテーテルの各ハブを生理食塩水でフラッシュする:まずラインに空気が残っていれば全て吸引し,ハブに静脈血が流れ込むことを確認する。続いて,10mLシリンジ(またはそれ以上の口径のシリンジ)で,20mLの生理食塩水をラインに注入し(この時あまり強い力を加えすぎない),洗浄する。
穿刺部位をドレッシングする
患者が覚醒しているか,最小限の鎮静しか受けていない場合,予定縫合部位の皮膚を1%リドカインで麻酔する。
カテーテル挿入部位の皮膚にクロルヘキシジン含浸スポンジドレッシングを置く。
皮膚をカテーテルの固定用クリップに縫い付ける。
穿刺部位の牽引を防ぐため,カテーテルをさらに別の場所に縫合し,2つの縫合部位の間でカテーテルがカーブまたはループを描くようにする。
滅菌された閉鎖性ドレッシングを貼付する。一般に透明のフィルムドレッシングが用いられる。
内頸静脈カテーテル挿入のアフターケア
胸部X線検査を行い,内頸静脈(または鎖骨下静脈)から挿入したCVCの先端が右房との接合部付近の上大静脈内にあること(適切な位置にない場合,カテーテルを前進または後退させることができる),および気胸が生じていないことを確認する。
注意点とよくあるエラー
右房は壁が薄く穿孔しやすいため,CVCの先端を決して右房内に留置してはならない。
ガイドワイヤーまたはカテーテルが右房または右室に入ると異所性心拍動が誘発されることがある。
ガイドワイヤーをつかんでいる手を決して離さないこと。
心肺停止中,あるいは低血圧や低酸素血症がある状態では,動脈血が暗く非拍動性のことがあり,静脈血と見誤ることがある。
空気塞栓症を予防するため,CVCの挿入(および抜去)は,血管カテーテル挿入部位を心臓より低い位置に置いた状態で行うべきである。
内頸静脈カテーテル挿入のアドバイスとこつ
(太いイントロデューサー針を挿入する前に)まず細い針(試験穿刺用の針,scout針)を用いて内頸静脈を見つけることで,誤って頸動脈を穿刺してしまった場合の出血や血腫を減らすことができる。(超音波ガイド下では試験穿刺用の針は不要である。)
患者の頭位が変わると,頸動脈と内頸静脈の位置が入れ替わる可能性があるため,動脈穿刺を避ける上で,本手技に含まれる針の挿入時には頸動脈拍動を愛護的に触診すべきである。
内頸静脈の太さは呼吸によって変化し(挿管されていない患者では吸気の直前に最大となり,挿管されている患者では呼気の直前に最大となる),またトレンデレンブルグ体位,バルサルバ法,ハミング,および外部からの腹部圧迫によって太くなる。内頸静脈カテーテル挿入の成功率を高めるこつは,内頸静脈の直径が増大した瞬間にイントロデューサーを前進させることである。