高齢者の評価は通常,標準的な医学的評価とは異なる。高齢患者,特に非常に高齢またはフレイルな患者では,患者が疲労するため,病歴聴取と身体診察を別の時間に実施しなければならず,身体診察を2回に分けなければならない場合もある。(高齢者におけるスクリーニングの推奨については,高齢者における疾患予防を参照のこと。)
また高齢者は,多重疾患など多様でしばしばより複雑な医療上の問題を抱えており,それにより多くの薬剤使用を必要とすることがあり(ときにポリファーマシーと呼ばれる),ハイリスク薬が処方される可能性が高い(高齢者において潜在的に不適切な薬剤の表を参照)。
問題の早期発見は早期介入につながる可能性があり,しばしば比較的小さく,安価な介入(例,生活習慣の改善)によって,悪化予防および生活の質の向上が可能になる。したがって,一部の高齢患者,特にフレイルまたは慢性疾患の患者の評価は,機能および生活の質の評価を含む高齢者総合的機能評価を用いて,集学的チームによって管理するのが最善である。
多重疾患
平均して,高齢患者は6つの診断可能な疾患を有している。ある器官系の疾患は別の器官系を弱め,両者の増悪を激化させ,身体の障害や依存をもたらし,介入を行わなければ死に至る。多重疾患は診断および治療を複雑にし,疾患の影響は社会的不利(例,孤立),貧困(長生きすることで経済的資源および支え合う仲間を失う)ならびに機能的および経済的問題によって増長される。
頻度の高い特定の老年症状(例,せん妄,めまい,失神,転倒,移動性の問題,体重減少または食欲減退,尿失禁)は複数の器官系の疾患に由来する可能性があり,医師はこれらにも特に注意すべきである。
患者が多重疾患を有する場合,十分に統合された治療(例,床上安静,手術,薬物)を行わなければならず,関連疾患を治療せず1つの疾患のみを治療すると,衰えが加速する可能性がある。さらに,医原性の問題を避けるために注意深いモニタリングが必要である。例えば,完全な床上安静によって,高齢患者は1日で1~3%の筋肉量および筋力を失い(サルコペニアおよび急激な移動性の低下を引き起こす),臥床安静の影響だけで最終的に死に至りうる。
診断の遅れや見逃し
ポリファーマシー
患者の処方薬,OTC医薬品,およびレクリエーショナルドラッグ(マリファナを含む)の使用について,頻回に確認を行うべきであり,特に薬物相互作用や高齢患者には不適切と考えられる薬剤使用が起きていないか検索すべきである。この確認は,薬の重複,漏れ,および用量のエラーを排除し,もはや必要でない可能性のある薬剤を特定するために薬剤の照合が必要となるケアの移行期に特に重要となる。
介護者の問題
ときに,高齢患者の問題は介護者によるネグレクトまたは虐待に関連している。状況または所見により示唆される場合,医師は介護者による患者虐待および薬物乱用の可能性を考慮すべきである。以下に示す損傷パターンまたは患者の行動は,特に示唆的である:
頻繁な挫傷,特に手の届かない部位(例,背部中央)
つかんだ跡のような上腕の皮下出血
性器の挫傷
奇妙な熱傷
介護者に対する患者の原因不明の恐怖