点頭てんかんは,両上肢の突然の屈曲,体幹の前屈,下肢の伸展,および脳波上のヒプスアリスミアを特徴とするてんかん発作である。治療は副腎皮質刺激ホルモン,経口コルチコステロイド,またはビガバトリンである。
点頭てんかんの発作は数秒間続き,1日に何回も繰り返すことがある。通常は1歳未満の小児に発生する。発作は約5歳までに自然に消失するが,しばしば他の発作型に置き換わる。
病態生理は不明であるが,点頭てんかんは皮質と脳幹の異常な相互作用を反映している可能性がある。
点頭てんかんの原因
点頭てんかんは通常,既知であることが多い重篤な脳疾患および発達異常を有する乳児に発生する。そのような疾患としては以下のものが考えられる:
結節性硬化症(tuberous sclerosis complex)は頻度の高い原因の1つであり,この疾患が原因である場合は,他の同定可能な原因によるものの場合と比べて,ときに予後良好である。
ときに点頭てんかんの原因を同定できないこともある。
点頭てんかんの症状と徴候
発作は体幹および四肢の急速な強直性収縮で突然始まり,ときに数秒間持続する。発作は軽微な点頭から全身の収縮に及ぶことがある。屈曲,伸展,またはその両方(混合型)がみられ,混合型の頻度が高い。発作は通常群発し,しばしば数十回にわたって立て続けに発生し,典型的には睡眠からの覚醒後に起きるが,ときに入眠時にも発生する。ときに最初は驚愕と間違われる。
点頭てんかんの発症前に発達遅滞(小児の発達を参照)がみられることがある。正常な発達がみられている乳児では,発達の退行が起きる可能性がある(例,笑わなくなる,座位や寝返りができなくなる)。
若年死亡率は5~31%であり(1),点頭てんかんの病因が関連している。
症状と徴候に関する参考文献
1.Riikonen R: Long-term outcome of West syndrome: A study of adults with a history of infantile spasms. Epilepsia 37(4):367–372, 1996.doi: 10.1111/j.1528-1157.1996.tb00573.x
点頭てんかんの診断
脳波検査(覚醒時および睡眠時の評価)
神経画像検査,MRIが望ましい
神経系に有意な基礎疾患が同定されていない場合は,原因を同定するための検査
一部の患児では,既往歴(例,新生児低酸素性虚血性脳症)や症候から点頭てんかんが示唆されることもある。身体診察および神経学的診察を行うが,結節性硬化症を除いて,特徴的な所見は同定されないことが多い。
診断を確定して特異的な異常の有無を調べるため,脳波検査を行う。典型的には,発作間のパターンはヒプスアリスミア(混沌とした高電位かつ多相性のδ波およびθ波に多巣性の棘波が重なったもの)を示す。複数のバリエーション(例,焦点性または非対称性ヒプスアリスミア)もある。発作時のパターンは通常,電気活動の突然かつ著明なびまん性減衰である。
神経画像検査(MRIが望ましい)は,最近行われていなければ施行する。
原因を特定する検査
神経画像検査または既往歴から明らかでない場合,原因特定のために以下の検査が行われることがある:
代謝性疾患が疑われる場合,臨床検査(例,血算と白血球分画;血清血糖値,電解質,血中尿素窒素,クレアチニン,ナトリウム,カルシウム,マグネシウム,リン,血清アミノ酸,尿中有機酸の測定;肝機能検査)
遺伝子検査(てんかん遺伝子パネルが利用可能である)
髄液検査により代謝性疾患の有無を確認する
(遺伝性代謝疾患が疑われる患者へのアプローチも参照のこと。)
点頭てんかんの治療
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の筋肉内投与
コルチコステロイドの経口投与
ビガバトリン(特に結節性硬化症に対して)
点頭てんかんは典型的な抗てんかん薬に反応しない。
点頭てんかんに対する標準治療としては,以下のいずれかである:
ACTHは,高用量(150U/m2)ACTHまたは低用量(20U/m2)ACTHのいずれかとして,筋注による連日投与が可能である。Pediatric Epilepsy Research Consortium(PERC)は高用量を推奨しており,具体的には,まず2週間投与してから,3日毎に漸減しながら29日間の治療を完了する。低用量での治療を試みて2週間以内に発作が止まらない場合は,高用量を用いる。
コルチコステロイド(例,経口プレドニゾン)は,4~7週間にわたり投与する。PERCが推奨するレジメンでは,経口プレドニゾロンを以下のように使用する:
1~14日目:10mg,1日4回
15~19日目:10mg,1日3回
20~24日目:10mg,1日2回
25~29日目:10mg,1日1回
発作が結節性硬化症によるものである場合は,ビガバトリンが選択すべき薬剤となる。これはまた,重篤な脳損傷または脳形成異常の存在があることがわかっている患児,およびACTHに耐えられないまたは反応しない患児にもしばしば使用される。経口ビガバトリンの用法・用量は25mg/kg,1日2回であり,必要に応じて約1週間かけて75mg/kg,1日2回まで漸増する。他の抗てんかん薬やケトン食療法が効果的であることを示すエビデンスは不十分である。
発作が治療抵抗性であるか,限局性皮質形成異常がある患者の一部では,てんかん手術によって全く発作が起きないようにすることが可能である。
効果的な治療の開始時期が早いほど,特に原因が同定されない場合,神経発達面の予後が良好になるというエビデンスがある。
治療に関する参考文献
Knupp KG, Coryell J, Nickels KC, et al: Response to treatment in a prospective national infantile spasms cohort.Ann Neurol 79(3):475–484, 2016. doi: 10.1002/ana.24594
要点
点頭てんかんは数秒間持続し,1日に何度も繰り返される;発作は約5歳までに自然に消失するが,しばしば他の発作型に置き換わる。
点頭てんかんは通常,重篤な脳疾患および発達異常を有する乳児に発生し,これらの病態は既知であることが多い;結節性硬化症は一般的な原因である。
診断を確定するために脳波検査を,点頭てんかんの原因を評価するためにその他の検査(例,脳MRI,代謝および遺伝子検査)を施行する。
点頭てんかんは,副腎皮質刺激ホルモン(ACTH),ビガバトリン(結節性硬化症による発作に対して選択すべき薬剤),または経口コルチコステロイドで治療することができる。