先天性の脳形成異常は一連の神経脱落症状を引き起こし,ほとんど気づかれないものもあれば,死に至るものもある。
最も重篤な神経系形成異常の一部(例,無脳症,脳瘤,二分脊椎)は,胎生2カ月目までに発生し,神経管形成の異常(癒合不全)を反映する。一方,滑脳症などその他の神経系形成異常は,ニューロンの遊走障害(大脳半球の形成異常を参照)が原因であり,胎生9~24週に発生する。水無脳症と孔脳症は,脳の基本的な構造の形成が完了した後に生じる破壊プロセスに続発するものである。一部に比較的良性の形成異常(例,髄膜瘤)がみられることがある。
先天性脳形成異常の原因となるものは数多くあり,これまで知られていなかった多くの遺伝因子もこれに含まれる。遺伝子パネルや全エクソーム配列決定などの次世代シークエンシング技術によって,先天性脳形成異常の遺伝的原因が多数明らかにされている。
超音波検査では,多くの形成異常を子宮内で正確にスクリーニングすることができる。新しい胎児MRIの手法が有用性を高めており,それらは主に注意を要する超音波所見が認められる場合に用いられる。羊水穿刺は,染色体の比較的大きな再配列や切断を発見する目的で利用できるが,先天異常の微妙な遺伝学的原因に対しては,しばしば見逃しが生じる。
形成異常が検出された場合は,しばしば親に対する心理的支援が必要になるほか,その後も同様の形成異常をもつ児を出産するリスクが高い場合があるため,遺伝カウンセリングも必要である。
神経系の先天異常の予防
神経管閉鎖不全の胎児または乳児を妊娠・出産した経験がある女性は高リスクであるため,妊娠の3カ月前から第1トリメスターにかけて,葉酸サプリメントを4mg(4000μg),経口,1日1回で投与すべきである。葉酸補充は以降の妊娠での神経管閉鎖不全のリスクを75%低下させる。
神経管閉鎖不全の胎児または乳児を妊娠・出産した経験がなくとも,妊娠可能年齢の全ての女性は最低400μg/日の葉酸を食事または補助食品により摂取すべきであり(さらにリスクを軽減するため800μg/日を推奨する専門家もいる),第1トリメスターもこれを継続すべきである。葉酸補充は児に神経管閉鎖不全が発生するリスクを軽減するものの,罹患した胎児または乳児を妊娠・出産した経験がある女性においては,そのリスクの低下幅は小さい(リスク低減は75%未満)。