中枢神経系腫瘍は,15歳未満の小児で最も多くみられる固形がんであり,がんによる小児期死亡の最大の原因となっている。診断は典型的には,画像検査(通常MRI)と生検による。治療としては外科的切除,化学療法,放射線療法などが行われる。
中枢神経系腫瘍は,小児におけるがん死因の第1位であり,死亡の30%を占めている(1)。小児の中枢神経系腫瘍の原因は大半が不明であるが,2つの確立された危険因子として電離放射線(例,高線量全脳照射)と特定の遺伝性症候群(例,神経線維腫症)がある。
小児に最も一般的な中枢神経系腫瘍は以下の通りである(多い順):
参考文献
1.Curtin SC, Minino AM, Anderson RN: Declines in cancer death rates among children and adolescents in the United States, 1999–2014. NCHS Data Brief (257):1–8, 2016.
小児における中枢神経系腫瘍の症状と徴候
頭蓋内圧亢進が最も一般的な症状の原因であり,それらの症状としては以下のものがある:
頭痛
悪心および嘔吐
易刺激性
嗜眠
行動の変化
歩行障害および平衡障害
ほかによくみられる症状は腫瘍の位置と関連するものであり,視力障害や痙攣発作などがある。
小児における中枢神経系腫瘍の診断
MRI
生検
MRIは実質性腫瘍をより精細に描出でき,後頭蓋窩内,くも膜下腔,くも膜,および軟膜の腫瘍を検出できることから,MRIが選択すべき画像検査である。CTも施行されることがあるが,感度および特異度が劣る。
画像検査で脳腫瘍の存在を確認したら,診断の確定と組織型および悪性度の判定のために大半の症例で生検が必要になる。分子生物学的および組織学的情報を盛り込んで中枢神経系腫瘍をより詳細に分類するシステム(2021)が世界保健機関(World Health Organization:WHO)によって策定され,一般的に用いられるようになっている。
診断を下したら,腫瘍の組織型を判定し,その後に病期診断とリスク評価を行う。病期診断(腫瘍が進展しているかどうかを判定する)では,脊椎全体のMRI,髄液細胞診のための腰椎穿刺,および腫瘍の残存がないか評価するための術後MRIを施行する。リスク評価は年齢,残存腫瘍の程度,分子生物学的所見,および病変進展の所見に基づいて行う。
小児における中枢神経系腫瘍の治療
外科的切除
放射線療法,化学療法,またはこれらの組合せ
治療アプローチは診断,悪性度,病期,およびリスク評価に依存する。一般に最初の手術に続いて,放射線療法,化学療法,またはその両方が必要になることがある。
中枢神経系腫瘍の小児患者は,可能であれば全例で臨床試験への登録を考慮すべきである。至適な治療には,小児の中枢神経系腫瘍の治療経験を有する小児腫瘍医,小児脳神経腫瘍医,小児脳神経外科医,脳神経病理医,脳神経放射線科医,および放射線腫瘍医から成る集学的チームが必要である。中枢神経系腫瘍の放射線療法には専門的な技術が必要になるため,可能であれば,その領域の経験を豊富にもつセンターで治療を受けさせるべきである。
より詳細な情報
有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
World Health Organization (WHO): WHO Grading of Tumours of the Central Nervous System (2021)
WHO: The 2021 WHO Classification of Tumors of the Central Nervous System: A summary